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美山有機農業推進協議会 村田正夫
秋作業で差がつく来年の米づくり


収穫後の稲ワラ処理が秋作業のポイント
春から奮闘をし続けていた田んぼは、今ひっそりと来年に向けてのエネルギーを蓄えています。

収穫が終わったこの時期は、来年に向けて秋処理を行います。ある人は、「今年は少しイモチ病にやられたので…」と稲ワラを燃やします。イモチ菌には2年程度続けると効果があります。またある人は、稲ワラ処理のため、有機物として米ヌカを散布します。温度の高いうちにと10月初めに耕起する人もいます。それらの効果を高めるため、トラクターですき込む前にEM活性液を散布することを勧めています。

基本的にトラクターの動かし方は「粗く、浅く、速く」が大切です。牛糞堆肥を使う人もいれば、有機資材を散布する人もいるなど、今年からは各自の判断を尊重しています。というより1年間自分の田んぼと稲の生育をつぶさに観察してきた結果を、秋以降の作業に活かしてもらおうというのが本音です。

「観察する、考える、工夫して実践する」の3原則は、自然を相手にするすべての活動に共通する「コツ」だと言えます。まず基本を身に着け、次はスピードアップや仕上がりの良さなどの精度を上げ、最後に個性の付加です。慣れて上手になれば、個別対応が必要です。自然や生き物と接するのは、一律でないから楽しいのです。

来年の米づくりは、すでに秋からがスタートです。ここでもう差がつくのです。

地域農業活性化の起爆剤に


「美山自然農法の会」では定期的に勉強会を開催し、新規就農者へのフォローもしっかり行っている。写真は「チェーン除草機」の実演会
今回は、美山町における新規就農者の状況と、今後の展望について紹介します。さかのぼって調べてみると、公的支援制度を活用して、美山町にIターンで新規就農した人は10人いました。驚いたことに、そのうち美山町を離れた人はたったの1人で、9人は定住しています。しかも、8人が生業として農業や畜産に従事しています。稲作・野菜・畜産・養鶏農家などです。

トマトのハウス周年栽培に取り組む中川さんは、平成14年の新規就農者です。担い手養成実践農場事業で就農支援資金を受けながら、種々の野菜栽培と稲作の研修後、トマト栽培に行き着きました。今では中川さんのトマトは、直売所の人気商品となっています。栽培にこだわり、完熟にこだわるトマトは、ずっしり重くて格別の甘さです。ジュースやケチャップにも挑戦中で、今後が楽しみな1人です。

野崎さんは「美山自然農法の会」のメンバーで、野菜農家ですが3年前から稲作にも取り組んでいます。昨年からの入会でメキメキ腕を上げ、今年の出来栄えは見事でした。勉強会によく出席して、学ぼうとする姿勢や素直なところが今年の結果に現れたと思っています。やはり、勉強好きで素直なことが伸びるポイントだと思います。

ところで、今年に入ってAさんという新規就農希望者が現れました。現在農業の研修中ということですが、年齢も20歳代で結婚間じかの様子でもあり、住まいを探そうかというところまできました。有機農業をやりたいと希望しており、仲間になってくれることを願っています。

美山町の場合、条件不利地であるがゆえ、美山の魅力にぞっこんの人でないと続きません。せっかくのモデルタウンに選ばれているのですから、元気な新規就農者を迎え、地域農業にカツを入れたいと思っています。

女性の力で新しい魅力を


村田さんは、お嫁さんも将来の大切な担い手の1人として期待している
農家というと男性というイメージが強いですが、女性の力は必要不可欠です。変化対応力は男性より女性が優れています。新しいものへの感性やセンスもやっぱり女性にはかないません。

「有機農業推進法」という新しい考え方や枠組みは、固い頭の男性より女性に任せた方がうまくいくはずです。そのためには、女性という新規就農者をトラクターや田植え機に乗せて、まず農業の魅力を教えなくてはいけません。「自然農法の会」のメンバーの奥さんに、すでにトラクターを運転できる人がいます。若々しいファッションでさっそうとトラクターを操れば、見ている周りの男性農業者も変わってくるでしょう。今年「自然農法の会」に若いTターン者が2人加わりました。その奥さんをはじめ、女性の力を借りることにより、有機農業とともに農業そのものの新しい魅力をつくり出していきたいと考えています。

先週には、京都市の醍醐地区から消費者と子どもを迎え、交流会を行いました。主に奥さん方の発想だったのですが、稲木干しした稲を足でこぐ昔の脱穀機で脱穀し、唐箕(とうみ)で選別するということをやりましたが、その手作業が都会の人たちに意外とうけました。


消費者交流会では、移動式「おくどさん」が大活躍
また、昔農家の土間にあった「おくどさん」(かまど)を移動式にして復活させ、薪で米を炊き、自分の手でおにぎりをつくり食べました。その横ではたき火をして、焼きイモをやりました。今までただ食べるだけだった人が、その前段階である「生産・加工・調理」などの違ったアングルに触れることは、農業の魅力を発見することになり、食育に繋がります。

このようないろいろな発想をして農業のことを人に伝えていくということが、どうも男性は苦手なようで、女性の感性豊かな発想はありがたいです。違った価値観を持った人を農業に引き込み、お互いが成長しあうシステムづくりこそが有機農業の推進と普及に不可欠ではないかと思っています。

掲載日:2009年10月31日

村田正夫 プロフィール

むらた・まさお
1951年生まれ。1992年家庭菜園に自然農法を取り入れ、2002年からは約50アールで稲作実施。2004年には仲間とともに美山自然農法の会を設立。自然農法の会は、2006年成立した「有機農業推進法」のもと、農水省が打ち出した地域有機農業推進事業(モデルタウン)に採択された「美山町有機農業推進協議会」の構成団体でもある。2008年には同協議会の技術指導副担当に就任。現在、地域での有機農業推進に尽力。南丹市市議会議員を務めながら、市内で小売業を営んでいる。

 

第12回
有機農業が持つ大きな可能性

 

第11回
米づくりの流儀

 

第10回
新規就農者が地域にカツを

 

第9回
有機農業実施者が続々来町

 

第8回
未来担う子どもたちとの関わり

 

第7回
生産者支える都市交流

 

第6回
ようこそ!美山町へ

 

第5回
行政機関のバックアップ

 

第4回
独自の認証制度で野菜づくり

 

第3回
速報!モデルタウンは毎年申請

 

第2回
米づくりにかける情熱

 

第1回
かやぶきの里・京都美山町


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