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美山有機農業推進協議会 村田正夫
中干しの準備で溝切りに励む美山自然農法の会の市原会長
中干しの準備で溝切りに励む美山自然農法の会の市原会長
田植えから約1か月が過ぎました。
自然農法での米づくり最大の課題は、除草対策と言っても過言ではありません。その対策は、田植えから1か月半が勝負です。まずは稲の活着を早め、初期生育を進めながら雑草が生えないように、EM資材を投入したり、動力除草機を使って対策をします。稲はしっかり育て、雑草は生えさせないという、一見矛盾しているような技術に四苦八苦するのが、この時期です。

私が苦労していることは仲間も苦労しているだろうと、空いた時間を利用して、仲間の田を見に回ることを日課にしています。違う田んぼの見学は勉強になりますし、日ごろあまり交流のない農家との出会いは、新たな発見と喜びを与えてくれます。ここ数年、仲間が増えたこともあって見に回る範囲がかなり広がりました。そのような中、美山町に訪れる人が多く、頻繁にイベントや交流会などが行われていることに気づきました。

老若男女が集う町

冒頭の写真は、5月17日に行われた北かやぶきの里での放水銃の一斉放水の様子です。これは、春と秋に2回行われる、火災に弱いかやぶきを守る防火訓練です。地元住民と消防団が62基の放水銃を一斉に放水する光景は、見応えがあります。年2回しかないチャンスだと教えてくれたのは、年々増える観光客と写真愛好家でした。決してイベントとして始めたわけではなかったところが、美山らしいと思います。

県外の若者と地元の住民がハーブ摘みを通して交流
県外の若者と地元の住民がハーブ摘みを通して交流
5月中ごろ、いつもの通り、田んぼの点検に向かう最中のことです。「西の鯖街道」の旅籠として有名な「きぐすりや旅館」の前を通りかかるとたくさんの人が畑で何かを収穫しています。止まってみると、ハーブの「カモミールの花」を摘んでいました。

旅館のご主人の神田和行さんは、「あの人たちは資生堂の商品に使う材料として、わざわざ大阪からうちへ泊まって摘みに来られました。東京からハーブを摘む体験だけのために来られた若い人たちもいます」と教えてくれました。わざわざ新幹線に乗って、泊まって、カモミールを摘む…。それだけかと思いますが、嬉々として、目を輝かせて、実に満足そうに摘む若者たちを見ていると、お金や時間には変えられない価値があるのかなと、改めて考えさせられました。

5月20日過ぎのこと。隣の集落ですが、周りの田んぼが見渡せる小高い山の裾にかやぶきのお堂があります。そのかやぶきの葺き替えが、都会の若者を募り行われたのです。このお堂は、テレビの撮影や映画のロケなどでよく使われています。昨年も、仲間由紀恵さんと十朱幸代さんが一緒の撮影の時は、厳重なかん口令がしかれ、地元住民の私たちにも教えてもらえませんでした。

かやぶき葺き替え初体験の若者たち
かやぶき葺き替え初体験の若者たち
かやぶき職人の塩沢さんが、インターネットでボランティアを募り、応募した男女12人の若者は、3日間、近くの集会所で雑魚寝をし、会費として1万5千円を払ってまで手伝ってくれたのです。「美山町へ行きたい。かやぶきを体験したい。温かい人情に触れたい…」と求めてきた若者たち。お堂のある地元集落の砂木区の人たちは、このイベントを温かく支え、足らない費用を援助したり、地元食材を使った料理を差し入れしたりして、やってきた若者やイベント開催を歓迎したのです。

また、数日前には、京都の有名なお土産である「井筒八ッ橋」さんが、社員旅行に来られました。南丹市の新光悦村に企業進出されたのを機会に、近くの田舎である美山町に行ってみようということになったそうです。「井筒八ッ橋」の津田社長は、「豊富な農産物と、豊富な地域資源を活かしたい」と意気込んでいます。

今も残る農村の原風景

毎年7月に行われる美山の伝統行事「奴振り」
毎年7月に行われる美山の伝統行事「奴振り」
「なぜ美山町には年間70万人もの来訪者があるのですか?」
よく聞かれます。私は、「癒し型・体験型・滞在型が来訪者をリピーターにしているのだと思います」と答えています。

美山町のどこに行ってもその良さを味わうことができます。美しい自然と美味しい水、温かい人情は、美山町の宝です。地域のお祭りや共同作業が地域の結束を守り、全員参加型の地域の運営が、他人への思いやりや自立の精神を培ったのです。

どこの田んぼを見に回っても、畦や法面(のり)は小まめに草刈がされ、水路や農道はしっかり管理されています。先週の夕方遅くにある仲間のところへ行った時は、1人は刈り取った草を畑に入れる作業を、もう1人は畑の管理をされていました。こういった地道な作業の積み重ねが、景観の美しい美山町を保っているのです。

ここで、知られざる美山の紹介をしてみたいと思います。
最近特に、有名になっているのが、古くから若狭文化と京文化を結んでいる鯖街道、その一番西側のルート「西の鯖街道」の通る町であるということです。今年4月に近隣市町村のメンバーで「西の鯖街道協議会」が結成されたこともあり、海産物とともに人や情報、文化が行き交う「西の鯖街道」は、これから府県を越えて注目されそうです。

「野々村仁清の生家」は、美山の観光名所の1つなっている
「野々村仁清の生家」は、美山の観光名所の1つなっている
また、国宝「色絵藤花文茶壺」(MOA美術館蔵)の作者として有名な野々村仁清の生誕の地が、美山町大野であることはあまり知られていません。今も野々村の姓は数軒残っており、寺の過去帳でその事実は確認されているようです。生家を見学することもできますので、是非お越しください。

さらに、美山の豊かな自然を求めて、多くの芸術家が移り住んでいます。画家・書家・陶芸家・音楽家・藍染作家など数知れません。最も大物は、日本画家・故秋野不矩さんです。平成11年に文化勲章を受けられた時は、日ごろからよく見かけていた身近な人だっただけに、私も含めた周りの人は、とにかくビックリ。慌てて町役場の職員がお祝いに駆けつけると「そんな時間があるなら、すぐ戻って今の仕事に頑張りなさい」とたしなめられたという逸話が残っています。

先人たちが大切にしてきた地域固有の財産を守りながら、個性ある山村の再構築を図り、「日本一の田舎づくり」をめざす美山町。修学旅行生の来る町、視察の多い町、エコツーリズムに力を入れている町、ほたる保護条例のある町、国からの数々の表彰を受けている町、人の数より鹿の数のほうが多い町…。

こんな個性的な町だからこそ、こだわりを持った有機農業のトップランナーである「自然農法」が似合うのではないかと思っています。

掲載日:2009年6月24日

村田正夫 プロフィール

むらた・まさお
1951年生まれ。1992年家庭菜園に自然農法を取り入れ、2002年からは約50アールで稲作実施。2004年には仲間とともに美山自然農法の会を設立。自然農法の会は、2006年成立した「有機農業推進法」のもと、農水省が打ち出した地域有機農業推進事業(モデルタウン)に採択された「美山町有機農業推進協議会」の構成団体でもある。2008年には同協議会の技術指導副担当に就任。現在、地域での有機農業推進に尽力。南丹市市議会議員を務めながら、市内で小売業を営んでいる。

 

第12回
有機農業が持つ大きな可能性

 

第11回
米づくりの流儀

 

第10回
新規就農者が地域にカツを

 

第9回
有機農業実施者が続々来町

 

第8回
未来担う子どもたちとの関わり

 

第7回
生産者支える都市交流

 

第6回
ようこそ!美山町へ

 

第5回
行政機関のバックアップ

 

第4回
独自の認証制度で野菜づくり

 

第3回
速報!モデルタウンは毎年申請

 

第2回
米づくりにかける情熱

 

第1回
かやぶきの里・京都美山町


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