やっと梅雨が明けたと思ったら、台風が来たり大陸の冷たい空気が流れてきたりで、不順な8月です。ほとんど夏らしい日がありません。日中はそこそこ晴れても、夜になると寒いくらいで、網戸を閉める有様です。
梅雨から一気に秋が来たようで、「今年は夏が飛んだのう…」が最近のあいさつ代わりです。米の日照不足や低温障害が心配され、早稲の酒米「五百万石」は、穂の入りが悪いと言われています。
ところが皆さん、私たちの「美山・自然農法産コシヒカリ」は、少しイモチ病にやられた程度で茎や穂の数も順調に増え、悪天候への抵抗力や力強さが発揮されたようです。
地元小学校との連携
今回は、モデルタウン活動の中心の1つ「消費者との交流活動」の中の、子どもたちとの関わりについて報告します。
それから4年間、鶴小農園での自然農法による米づくりが続けられています。子どもたちは、授業の一環として手植えや手除草を経験し、秋には収穫して稲木干しをした米の脱穀もやりました。これらの指導やお手伝いは、農園近くの旅館ご主人の神田和行さんをはじめ、「美山自然農法の会」のメンバーが行っています。
鶴小の子どもたちが手塩にかけて育てた「自然農法産のモチ米」は、旧JA跡地で地元住民が運営する直売所「タナセン」の秋祭りで、毎年販売しています。いつも売れ行きが良く、その売上はPTAや学校交流イベントに使われ、残ったモチ米で餅つきをしてみんなで食べるなど、この取り組みは食育の可能性も秘めています。
最近の子どもは、案外田んぼなどの農作業をやっていないなというのが、これらの活動を通しての率直な感想です。農村の子どもが、農村で育った子どもになってほしいと強く思います。モデルタウンの活動がその一助になればと考えています。
都市の子どもに農業・自然体験を
前回紹介した消費者交流を進める中で、都会の子どもたちとの交流も始まっています。認証野菜の販売や、堆肥の還元を通じて年2〜3回消費者が美山町に来られますが、最近は子どもたちの参加が増えてきました。
コンビニに行けば、ジュースやコーラ、アイスやスナック菓子など、子どもたちが喜ぶ飲み物やおやつが一杯です。しかし、そこに人間の優しさや温かさ、自然の恵みや大きさを感じることができるでしょうか。
スローフードや食育が話題に上る昨今ですが、農業は自然とのふれ合いを通して、生命や食、文化、伝統を総合的に学べる素晴らしい可能性を持った分野だと言えます。子どもの教育に、家庭や地域、学校などでの農業体験・自然体験をもっと取り入れるべきだと感じています。
田んぼから川に移動した子どもたちは、橋の上からは魚しか見えなかった川の中に、これだけ多くの生き物がいるのかと、まるで宝探しをするかのように目新しい生き物をどんどん見つけてきました。
すっかり美山ファンになった子どもたちは、今年10月にまたまた美山町にやって来ます。「秋の田んぼや水路で生き物探しをしたい」「神社での奉納相撲の土俵づくりなどを体験したい」と今から楽しみにしているとのことです。私たちも、新米の自然農法産コシヒカリのおにぎりを腹いっぱい食べさせてやりたいと、収穫の準備に励んでいます。
むらた・まさお 1951年生まれ。1992年家庭菜園に自然農法を取り入れ、2002年からは約50アールで稲作実施。2004年には仲間とともに美山自然農法の会を設立。自然農法の会は、2006年成立した「有機農業推進法」のもと、農水省が打ち出した地域有機農業推進事業(モデルタウン)に採択された「美山町有機農業推進協議会」の構成団体でもある。2008年には同協議会の技術指導副担当に就任。現在、地域での有機農業推進に尽力。南丹市市議会議員を務めながら、市内で小売業を営んでいる。
第12回有機農業が持つ大きな可能性
第11回米づくりの流儀
第10回新規就農者が地域にカツを
第9回有機農業実施者が続々来町
第8回未来担う子どもたちとの関わり
第7回生産者支える都市交流
第6回ようこそ!美山町へ
第5回行政機関のバックアップ
第4回独自の認証制度で野菜づくり
第3回速報!モデルタウンは毎年申請
第2回米づくりにかける情熱
第1回かやぶきの里・京都美山町