今回から、有機農業モデルタウンに選ばれた「美山有機農業推進協議会」の各構成団体について紹介していきます。まずは私が所属する「美山自然農法の会」についてです。
私が平成14年からたった1人で始めた自然農法稲作も徐々に広がり、その実践者も2年間で4人が加わり、耕作面積も1haを超えました。そこで、「仲間をつくろう。助け合おう。良きライバルとして競い合おう」を合い言葉に、平成16年4月「「美山自然農法の会」(市原秀一会長)を立ち上げました。
会の設立趣旨は、
様々な出会いがあった6年間
当時から、私は「JAや普及所の言うがままになり、稲を観察したりその対策を打ったりすることを忘れてしまった受身の農業者を目覚めさせ、条件不利地で耕作放棄地が拡大するのを防ぐには、自然と共生する循環型の有機農業を定着させ所得向上を図ること」と思っており、自然農法センターの方たちに、地域での自然農法の普及・定着に力を貸してほしいと切に訴えていました。
自然農法センターの方からは「美山町で自然農法稲作を定着、普及させるには、まず村田さんが成功するしかない」と、大きなプレッシャーをかけられましたが、そのお陰で今があると思っています。
2つ目は、「美山自然農法の会」の市原秀一会長の存在です。会立ち上げ初期のある夏の夜、突然、市原会長が「おるこーっ」と家に来られました。すでに9時を回っていたので、こんな遅くにどこに行かれていたのか尋ねると、「今、田んぼを見に行って、イモチ病にかかりかけている稲に、『わしも気張って世話をするのでおまえも頑張れ』と励ましてきた」と、わが子と話した後のような満足げな顔で話すのです。そのせいでしょうか、不思議なことにイモチ病は広がることなく収まったものですから、”生き物との心の交わりが大切なのだ”と痛感しました。そんな純粋で熱い思いを持つ市原会長からは、いつも教えられることばかりです。
3つ目は、美山町の水稲実施面積約260haのうち、約1/4で米づくりをする南條農産の加入です。会の立ち上げ時からの仲間で、大規模農家の南條さんは、まさにプロ中のプロ。その知識と技術の蓄積を伝授してもらえるのはありがたい限りです。
4つ目は、私の住む25戸(農家21戸)の地元集落「栃原」で、8戸も会員になったことです。こだわりの農業者はだいたい点在するものですが、これにより、自然農法は我が集落に限り、マイナーからメジャーになったのです。
普及はまじめに取り組む人から
私たちの田んぼの上にはツバメが飛び交い、トンボの数の多いこと多いこと。カエルやヘビ、イナゴ、クモなど、実に多様な生き物たちが見られるようになり、水中にはミジンコがわき、ユスリカやイトミミズが元気いっぱい活動しています。
会員1人ひとりがそれらの事実を目の当たりにして、年々自信を深めています。また、今年も新たに4人が自然農法稲作に挑戦し、会員は24人となり、自然農法での耕作面積も4haを超えました。
会では定期的にミニ講習会を開催。参加した人でやる気のある人、いわば一歩足を踏み出した人だけを新会員とし、その代わり「1年間みっちりケアして絶対成功させる!」を基本方針としています。
少ない人数でも、まじめに取り組む人だけを万全の体制で教え込む。それにより技術力と組織力が強固なものになるはずです。そして将来、ある人数に達した時、一気に会員を増やすことができると考えています。
大規模専業農家が少なく、条件不利地の多い美山町での有機農業モデルタウン事業では、より多くの人たちに有機農業を実践してもらうことを骨太の方針とし、推進法が5年先にめざす有機農業の認知度50%を、私たちの地域内では100%にすることを願って、皆で楽しみながら取り組んでいます。
むらた・まさお 1951年生まれ。1992年家庭菜園に自然農法を取り入れ、2002年からは約50アールで稲作実施。2004年には仲間とともに美山自然農法の会を設立。自然農法の会は、2006年成立した「有機農業推進法」のもと、農水省が打ち出した地域有機農業推進事業(モデルタウン)に採択された「美山町有機農業推進協議会」の構成団体でもある。2008年には同協議会の技術指導副担当に就任。現在、地域での有機農業推進に尽力。南丹市市議会議員を務めながら、市内で小売業を営んでいる。
第12回有機農業が持つ大きな可能性
第11回米づくりの流儀
第10回新規就農者が地域にカツを
第9回有機農業実施者が続々来町
第8回未来担う子どもたちとの関わり
第7回生産者支える都市交流
第6回ようこそ!美山町へ
第5回行政機関のバックアップ
第4回独自の認証制度で野菜づくり
第3回速報!モデルタウンは毎年申請
第2回米づくりにかける情熱
第1回かやぶきの里・京都美山町