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美山有機農業推進協議会 村田正夫
コラムの反応がぼちぼちと

間断かん水中の田んぼ。カメムシ対策に畦の草もしっかり刈る
間断かん水中の田んぼ。カメムシ対策に畦の草もしっかり刈る
明けない梅雨空を眺めながら、中干しが終わり、間断かん水(水を入れたり抜いたりすること)の田を見に回っています。雨が多く、ほとんど水を入れる必要がありません。 この天候では、イモチ病の心配があります。また、あと20日もすれば出穂を迎えますので、穂肥をやるなら今ですし、カメムシ対策の畦の草刈りも必要です。天候をにらみながらの、作業の段取りに苦労する今年の7月です。

そんな中、コラム読者からの反応が、立て続きにあるという嬉しいことが起きました。まずは、ハガキです。「貴会と美山のことを分かりやすく情報発信されていて、とても素晴らしい仕上がりです」と褒めていただき、チェーン除草の助言までいただきました。

数日前には、横浜から夫婦で来られた方がいました。その前日「明日行きます」と突然連絡があり、びっくりしました。ご主人は、定年間近とのことで、第2の人生の柱に有機農業を据えようとしているようでした。思い立ったら吉日、新幹線とレンタカーで飛んでこられる行動力には感心しました。しかも、夫婦揃ってというのが大事なところで、来年の今ごろは2人で、自然農法の畑と田んぼで汗を流されるのかなと期待しています。

もう1件は、私たちと同じく有機農業モデルタウンになっているところから、市役所の中島さんに連絡が入りました。コラムを読んで相通じるところがあるようで、8月末に10人ほどで視察に行きたいとのことでした。

技術も組織も未熟な私たちに、視察の申し入れがあったり、激励のハガキをいただいたりするのは何にも代えがたい励ましで、思わず「頑張らねば!」と気合が入ってきます。

多くの人が行き交うまち

今回は有機農業を推進していくために欠かせない、消費者との交流について紹介します。協議会オブザーバーの京都環境アクションネットワークの袖岡信明さんは、美山町の都市交流コーディネーターの中心人物です。袖岡さんは、第3セクターの美山ふるさと株式会社と協力して、美山の農産物の販路を都市へ繋いでくれています。金ラベルなどの美山認証野菜が定着したのは、袖岡さんのお蔭と言っても過言ではありません。

「美山認証野菜生産者の会」会員は約50人ですが、中心メンバーの文字美代子さんは周辺農家10人グループで、京都市内の御室や伏見の消費者グループと産直を行い、互いの視察や交流を続けています。文字さんは持ち前の明るさと面倒見の良さで、実母を含めたメンバーがイキイキ活動できるようにサポートしています。会うとこちらが元気をもらえるという方です。何か事をなすにはこういったリーダーの存在が不可欠だと感じています。

別名「コンテナ産直」と呼ばれる販売会
別名「コンテナ産直」と呼ばれる販売会
さて、京都市中心部の御室地域では、月2回の販売会「ふれあい野菜市」が、会員の自宅前3か所で行われています。多少の人の入れ替わりはありますが、60〜70人が量り売りや袋詰めされた金ラベル野菜を買って行かれます。当初、年配の女性が多かったのですが、最近は「子どもたちにいいものを食べさせたい」と、若いお母さん方が増えてきました。 その販売会とともに行われる活動として、消費者会員100世帯と一緒になっての堆肥づくりがあります。消費者会員は野菜の残さや食べ残しを、会員の自宅3か所にある堆肥ボックスに持って行き、一次発酵させます。販売会の帰りにその生ごみ堆肥を、美山ふるさと株式会社の社員がトラックで美山町に持ち帰り、認証野菜農家が共同でつくっている改良畜糞堆肥と混ぜて完成させ、自分たちの畑に返します。できた野菜は再び販売会で消費者のもとへ届くという、農村と都会、生産者と消費者の間で「食の循環」が行われています。

また、昨年夏には、消費者交流会と都会の子どもが生き物調査をやるのを同時に行う、初めての試みを行いました。観光バスで到着後、すぐさま農家手づくりのよく冷えた「シソジュース」を振る舞うと、あまりの美味しさに歓声が上がったほど。お寺の縁で食べていただいた「美山・自然農法産コシヒカリ」のおにぎりも大人気でした。その後、子どもたちは田んぼの回りで生き物調査、大人たちは畦道の散歩。うまい具合に雷と夕立もあって、美山の自然を満喫した交流会になりました。

互いが理解しあって友達へ

定期的に行われる消費者の圃場見学会
定期的に行われる消費者の圃場見学会
袖岡さんは、「野菜の物流だけのやりとりではなく、美山との繋がりを深めていき、美山ファンづくりをしたいです。そのために、生産者と消費者の出会いの場をもっとつくりたいです。美山の郷土食、行事食、西の鯖街道の鯖寿司なども紹介していきたいです」と、今後の夢を語ってくれます。

消費者が美山町に来て、素晴らしい自然に触れ、素朴でまじめな生産者を知り、丹精込めて栽培された安全で美味しい農産物を自分の目で確かめることは、大きな意義があります。参加者はそれ以降、細かいクレームをつけなくなったと聞いています。

また、生産者が消費者の元へ行き、ガレージなどで直接農産物を販売することで、安全で美味しい農産物を待ってくれている消費者がいることを知り、より責任を持って栽培しなくてはいけないと自覚を持つことになります。

印象的なエピソードがあります。昨年のこと、持ち帰った消費者の堆肥から、カボチャの芽が出たのですが、文字さんはそれを大事に育て、立派にできたカボチャを消費者にプレゼントしたのです。こんな関係の中から、お互いが強い絆で結ばれた友達になっていくのではないでしょうか。

生産者と消費者の互いの理解が深まれば、新しい取り組みも生まれます。今まで生産者が捨てていたサツマイモのつるや農道の端に生えているススキを、消費者が求めていることを知ったり、消費者の家族状態まで分かるため、小さい坊ちゃんカボチャをつくり始めたりしています。

都会の若者と田舎の生産者が交流する貴重な体験(前列右が袖岡さん)
都会の若者と田舎の生産者が交流する貴重な体験(前列右が袖岡さん)
最後に大学との連携を報告します。今年2月、文字さんたちのグループは、美山に演習林がある京都府立大学の学生と交流しました。テーマは、「大野村の自然共生的生活を学ぶ、体験する」です。地域の歴史を学んでもらうとともに、味噌・わらつと納豆(ワラに包まれた納豆)・ぼた餅づくり体験の指導役を務めました。これも、袖岡さんのコーディネイトです。「大学の教室では出会えない、味わえない感動と体験をさせていただき、ありがとうございます。来年も伺いたいです」と、33人の参加者は感激の様子でした。

美山町は京都大学と佛教大学、そして京都府立大学の3校との縁があります。農官学連携もモデルタウンのめざすところです。

掲載日:2009年7月29日

村田正夫 プロフィール

むらた・まさお
1951年生まれ。1992年家庭菜園に自然農法を取り入れ、2002年からは約50アールで稲作実施。2004年には仲間とともに美山自然農法の会を設立。自然農法の会は、2006年成立した「有機農業推進法」のもと、農水省が打ち出した地域有機農業推進事業(モデルタウン)に採択された「美山町有機農業推進協議会」の構成団体でもある。2008年には同協議会の技術指導副担当に就任。現在、地域での有機農業推進に尽力。南丹市市議会議員を務めながら、市内で小売業を営んでいる。

 

第12回
有機農業が持つ大きな可能性

 

第11回
米づくりの流儀

 

第10回
新規就農者が地域にカツを

 

第9回
有機農業実施者が続々来町

 

第8回
未来担う子どもたちとの関わり

 

第7回
生産者支える都市交流

 

第6回
ようこそ!美山町へ

 

第5回
行政機関のバックアップ

 

第4回
独自の認証制度で野菜づくり

 

第3回
速報!モデルタウンは毎年申請

 

第2回
米づくりにかける情熱

 

第1回
かやぶきの里・京都美山町


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