それからこの3月までの3か月は、まさにてんやわんや。その1つが、農水省からの補助金が下りてきたのが遅かったことです。昨年4月からモデルタウンの活動を本格化しているのに、補助金をいただいたのが12月という状況でした。その間の必要経費は立替、立替であちこちつぎはぎだらけです。年末ぎりぎりだったこともあり、提出した事業実施計画書と照らし合わせながらの調整がまたまた厄介なことでした。それに加え、今回の新たな申請の手続き業務ということが、まったくの予定外でしたので、携わってもらった皆さんには頭の下がる思いです。
農水省にぜひお願いしたいことは、補助金の執行をできるだけ早めてほしいです。あわせて、都道府県や市町村を通らずに直接私たちモデルタウンの協議会に補助金が入ってくるため、それらとの連携が弱い点の解消が必要ではないかと感じています。
成果と広がり
新たに申請するにあたって苦労したと言うか、戸惑いながら進めたところは、昨年認めてもらった事業実施計画書は5年間で達成するものとしての内容であり、2年目である今年の計画書は昨年申請したものと基本的には何も変わらないという点です。やっと一歩を踏み出した組織を、たった1年の評価で認めたり落としたりするとは考えられませんので、とにかく、この1年間の目を見張る成果をしっかりアピールし、今後大いに期待できる広がりの動きを的確にまとめようということに落ち着きました。
8年間の着実な歩み
平成14年から始めた自然農法稲作。最初は自信もなく、“人に迷惑をかけたくない”との思いで、山奥の田んぼで内緒でやっていたのがウソのようです。何もかもが初めての体験で、田植え後にまいたEM発酵油粕ペレットで田んぼの水が赤茶色になった時は、それが様々な微生物を活性化させ雑草抑制につながるということを体験したことがなかったので、「稲が腐ってしまうのではないか」とびっくりしました。
1人から始めた美山町の自然農法稲作が全国区となったのは、昨年2月、京都での第13回自然農法・EM技術交流会での発表でした。ずっと断り続けていた発表でしたが、発表したことによって一気にモデルタウンの申請へと発展し、このコラムを書かせてもらえるようにまでになりました。縁とかタイミング、何か目に見えないものを感じますが、それはまったく自然とともに営む自然農法稲作と同じようにも感じます。
昨年のモデルタウンの申請も、数々の条件が整ったことで実現できたことだと思っています。市などの行政機関と米・野菜の生産者、流通支援機関、さらには消費者団体のNPOが「自然環境豊かな美山から有機農業の取り組みを推進する」を共通の目標に、がっちりスクラムが組めました。
「どこかで誰かが見ていてくれたんだ」と私は、昨年5月の美山有機農業推進協議会設立総会の閉会挨拶でお礼を述べました。天か神か分かりませんが、一連のことには何か見えざる力が働いていると思わざるを得ません。
今回のモデルタウンの申請結果は、4月頭に出ると聞いています。再び認定されることと信じていますが、またこの連載で皆様に結果をご報告させていただきます。
むらた・まさお 1951年生まれ。1992年家庭菜園に自然農法を取り入れ、2002年からは約50アールで稲作実施。2004年には仲間とともに美山自然農法の会を設立。自然農法の会は、2006年成立した「有機農業推進法」のもと、農水省が打ち出した地域有機農業推進事業(モデルタウン)に採択された「美山町有機農業推進協議会」の構成団体でもある。2008年には同協議会の技術指導副担当に就任。現在、地域での有機農業推進に尽力。南丹市市議会議員を務めながら、市内で小売業を営んでいる。
第12回有機農業が持つ大きな可能性
第11回米づくりの流儀
第10回新規就農者が地域にカツを
第9回有機農業実施者が続々来町
第8回未来担う子どもたちとの関わり
第7回生産者支える都市交流
第6回ようこそ!美山町へ
第5回行政機関のバックアップ
第4回独自の認証制度で野菜づくり
第3回速報!モデルタウンは毎年申請
第2回米づくりにかける情熱
第1回かやぶきの里・京都美山町