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美山有機農業推進協議会 村田正夫
「えっ、来年も申請!?」
思わず聞き直したのは、昨年12月のことです。近畿農政局が召集した各府県や有機農業モデルタウンの担当者の会議で、「平成21年度の地域有機農業推進事業(有機農業モデルタウン)は、すでに認められたところも、新たに認定を求めるところも同じ様式で申請してもらうことになる」との説明があったという報告を聞いたからです。

それからこの3月までの3か月は、まさにてんやわんや。その1つが、農水省からの補助金が下りてきたのが遅かったことです。昨年4月からモデルタウンの活動を本格化しているのに、補助金をいただいたのが12月という状況でした。その間の必要経費は立替、立替であちこちつぎはぎだらけです。年末ぎりぎりだったこともあり、提出した事業実施計画書と照らし合わせながらの調整がまたまた厄介なことでした。それに加え、今回の新たな申請の手続き業務ということが、まったくの予定外でしたので、携わってもらった皆さんには頭の下がる思いです。

農水省にぜひお願いしたいことは、補助金の執行をできるだけ早めてほしいです。あわせて、都道府県や市町村を通らずに直接私たちモデルタウンの協議会に補助金が入ってくるため、それらとの連携が弱い点の解消が必要ではないかと感じています。

お互いに田んぼを見合う「互見会」を定期的に開催している
美山有機農業推進協議会メンバーでモデルタウン申請のため何度も話し合いの場の持った
昨年に引き続き、今回も申請書類の取りまとめは、南丹市役所の美山支所・産業建設課主事の中島さん、京都府南丹農業改良普及センターの大八木さん、近畿中国四国農業研究センター(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構)の尾島さんを中心に、NPO法人伏水サポートネットワークの袖岡さんの協力を得て進めました。また、美山自然農法の会の米づくりと、美山認証野菜生産者の会の野菜づくりという2本柱の「美山有機農業推進協議会」ですので、それぞれの生産者と流通担当者を交えた検討会議も重ねました。

成果と広がり

新たに申請するにあたって苦労したと言うか、戸惑いながら進めたところは、昨年認めてもらった事業実施計画書は5年間で達成するものとしての内容であり、2年目である今年の計画書は昨年申請したものと基本的には何も変わらないという点です。やっと一歩を踏み出した組織を、たった1年の評価で認めたり落としたりするとは考えられませんので、とにかく、この1年間の目を見張る成果をしっかりアピールし、今後大いに期待できる広がりの動きを的確にまとめようということに落ち着きました。

野菜栽培講習会などもモデルタウンの活動として行った
野菜栽培講習会などもモデルタウンの活動として行った
ひたすら前を向いて全力で走ってきた1年を振り返ってみると、キラリと光るいくつかの成果が見えてきます。
1.本来であれば接点が少ない米づくりと野菜づくりの交流が進み、両団体の会員増と連携強化が果たされ、有機農業のはっきりした明るい展望が見えてきました。
2.農水省からの認定という「お墨付き」を得て、国から認められたという自信とともに誇りを持って農作業と学習活動、普及活動に打ち込めました。
3.NPO法人民間稲作研究所理事長の稲葉光國先生の講演会や互見会、堆肥・育土研究所代表の橋本力男先生の堆肥講習会、(財)自然農法国際研究開発センター京都農場の技術講習会、高島市への先進地視察などを行いましたが、動員なしであふれる参加者に、有機農業への強い関心とニーズを感じました。
4.「あの人も、やってはったのか」という有機農業、自然農法実践者の仲間を、この1年間の活動の中で何人見つけたことか。すぐ近くに、同じ目標を共有できる仲間とライバルがいることは、大きな励みでありエネルギーにもなります。
5.年間70万人もの人が訪れる美山町。利き鮎大会準グランプリの美山鮎・ジビエ料理で人気急上昇中の鹿肉・西のサバ街道で注目を浴びるサバ寿司などの名産物、国交省の「日本風景街道」に登録された「美山かやぶき由良里(ゆらり)街道」、これら美山の財産と言えるものと有機農産物をどう絡めていくか思案しています。
これらの成果や展望をより具体化、実現化させて、美山町を日本一の有機の里にしたいと、強く思うこの頃です。

8年間の着実な歩み

平成14年から始めた自然農法稲作。最初は自信もなく、“人に迷惑をかけたくない”との思いで、山奥の田んぼで内緒でやっていたのがウソのようです。何もかもが初めての体験で、田植え後にまいたEM発酵油粕ペレットで田んぼの水が赤茶色になった時は、それが様々な微生物を活性化させ雑草抑制につながるということを体験したことがなかったので、「稲が腐ってしまうのではないか」とびっくりしました。

1人から始めた美山町の自然農法稲作が全国区となったのは、昨年2月、京都での第13回自然農法・EM技術交流会での発表でした。ずっと断り続けていた発表でしたが、発表したことによって一気にモデルタウンの申請へと発展し、このコラムを書かせてもらえるようにまでになりました。縁とかタイミング、何か目に見えないものを感じますが、それはまったく自然とともに営む自然農法稲作と同じようにも感じます。

事例発表を行った「自然農法・EM技術交流会」の懇親会で、EMの開発者・比嘉照夫琉球大学名誉教授と記念写真
事例発表を行った「自然農法・EM技術交流会」の懇親会で、EMの開発者・比嘉照夫琉球大学名誉教授と記念写真
私はいつも「条件が整う時はゴーサイン」と決めています。
技術交流会での発表も、(財)自然農法国際研究開発センター京都農場の方々が熱心に勧めていただきましたし、会場も近くの京都で行われるとのことで日程の調整もしやすく、自然農法稲作もそこそこの成功を収めており、一定の公開できる技術も確立していました。当時20人の会員も、研修会参加への意欲も強くなっていて、実際に役場の職員2人を含め11人が応援にかけつけてくれました。

昨年のモデルタウンの申請も、数々の条件が整ったことで実現できたことだと思っています。市などの行政機関と米・野菜の生産者、流通支援機関、さらには消費者団体のNPOが「自然環境豊かな美山から有機農業の取り組みを推進する」を共通の目標に、がっちりスクラムが組めました。

「どこかで誰かが見ていてくれたんだ」と私は、昨年5月の美山有機農業推進協議会設立総会の閉会挨拶でお礼を述べました。天か神か分かりませんが、一連のことには何か見えざる力が働いていると思わざるを得ません。

今回のモデルタウンの申請結果は、4月頭に出ると聞いています。再び認定されることと信じていますが、またこの連載で皆様に結果をご報告させていただきます。

掲載日:2009年3月25日

村田正夫 プロフィール

むらた・まさお
1951年生まれ。1992年家庭菜園に自然農法を取り入れ、2002年からは約50アールで稲作実施。2004年には仲間とともに美山自然農法の会を設立。自然農法の会は、2006年成立した「有機農業推進法」のもと、農水省が打ち出した地域有機農業推進事業(モデルタウン)に採択された「美山町有機農業推進協議会」の構成団体でもある。2008年には同協議会の技術指導副担当に就任。現在、地域での有機農業推進に尽力。南丹市市議会議員を務めながら、市内で小売業を営んでいる。

 

第12回
有機農業が持つ大きな可能性

 

第11回
米づくりの流儀

 

第10回
新規就農者が地域にカツを

 

第9回
有機農業実施者が続々来町

 

第8回
未来担う子どもたちとの関わり

 

第7回
生産者支える都市交流

 

第6回
ようこそ!美山町へ

 

第5回
行政機関のバックアップ

 

第4回
独自の認証制度で野菜づくり

 

第3回
速報!モデルタウンは毎年申請

 

第2回
米づくりにかける情熱

 

第1回
かやぶきの里・京都美山町


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