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(社)やはた福祉会 大宝保育園 山内清視
自立できる子ども
思いやりがある子ども
協調性がある子ども
健やかで、たくましい子ども
感謝できる子ども
人を信じられる子ども
主体性のある子ども

大宝保育園が保育を通してめざしている子ども像です。たくさんあるように見えますが、私たちにとってはすべてが大切なテーマです。自分の力で人生を幸せに生きられる力を持てる子どもに育てること。一言で言い換えるならば、“自立”。これが私たちの保育の目的です。

安易に手を出さず見守る

野性味溢れる遊びが大好きな子どもたち。規格外の世界で子どもたちは適応への自己判断を養う
野性味溢れる遊びが大好きな子どもたち。規格外の世界で子どもたちは適応への自己判断を養う
近年、少子社会で、家庭では子どもに目が届き、手をかけられるようになりました。しかし、これは一見やさしさの表れのように思えますが、困る前に手を出し、口を出してしまうため、子どもたちの周りから危険なものは取り払われてしまうことになるのです。安全が確保され、失敗する経験もなくて済みますが、その結果困った時に問題を解決しようとする能力も失われかねません。つまり、“自立”が遅れがちになる可能性があります。

そこで、私は「大人が何でもやってあげる保育」ではなく、「見守る保育」を園内に徹底することにしました。子どもは、自ら進んで何かをやる気持ち=主体性を必ず持っています。子どもが何かをやり始める前に、やってあげたり、与えたりしまうことは、せっかく自ら行動しようとしている芽を摘み取ってしまうことになるからです。

1つの例ですが、ゆで卵を自分でむけない子がいます。それはその子ができないのではなく、本人が体験しようとする前に、すべて周りがやってあげているのです。これでは、子どもの可能性あるいは、潜在機能・潜在能力が発揮する前につぶされてしまうことになりかねません。子どもが求めることに全部応えること、やってあげることが愛情だと思っている方もいらっしゃるかも知れません。私はそうではないと思います。「三つ子の魂百まで」と言います。3歳のころまでに体験することは、大人になって行動する際の基礎になるよ、という意味です。

自立した大人になる大切な一歩は、幼児期にこそ始まっていると私は思います。歩き始めのころはよく転びます。転ぶと、「わあっ大変!」とばかりにすぐ抱き上げてしまう保護者が多いのです。1人で起き上がるためには、手や足のみならず全身の筋肉を使うのです。このせっかくの機会を奪ってしまっているのは残念なことです。また、それに伴い、転んだときケガをしないようにと、机の角にクッションを施したり、段差をなくしたり。遊び場からも、回転ブランコや箱形ブランコ等のスリルあるものが撤去されています。

子どもから危険を回避する能力だけでなく、遊ぶ楽しみも奪っているのです。大きなケガは避けなければなりませんが、少しのケガならむしろ必要だと思います。大宝保育園では、「体の発達を保障する」という考えのもと、体幹を育てるためにいろいろな全身運動を取り入れています。このことについては、次回で詳しく説明しますが、「危険だ、危険だ」と言って子どもに何もさせないと、結局、身体も回避能力も育たないと私は思っています。

異年齢保育で育つ思いやり





保育園は1つの家族であり社会でもある。異なった年代の考えや思いにもまれて"個としての人格"が育っていく
昔は多子社会で、世代や世代同居は当たり前だったので大家族が多く、いろんな年齢の子どもたちが混ざり合いながら社会を形成し、その中で成長していったものです。最近は子どもの数が減って、1人または2人という家族が多くなっています。保育園まで年齢別ですべてを分けてしまうと、子どもによっては自分よりも年上や年下の子どもと全く触れ合う機会がなく育ってしまうことになります。「それは自然ではない」。そんな理由から大宝保育園では3〜5歳は異年齢保育を取り入れています。

保育園は子どもの発達を援助するところですから、発達の異なる子を一緒にした方が、より発達を援助できるのです。制作物をつくる場合、3歳児だからやさしいもの、5歳児だから難しいものと決めつけてはいないでしょうか。3歳児でもできる子はいるし、5歳児でもできない場合もあります。そんな時、年齢で分けるよりも、異年齢で過ごした方が居心地良いはずですし、頭も気も使うので、身体のみならず心の発達も著しいものがあると確信しています。

異年齢保育を始めた当初、3歳の子の親から「以前はこんな子ではなかったのに、何か意地悪になった気がする」と相談を受けたことがあります。「何でだろう?」と私は考えました。

よく観ていると、年長の子は小さい子とどう接して良いか分からなくて、面倒をみるだけでなく、時には「あれ取ってこい」と命令口調になっています。3歳だった彼女はそのすべてを一度に受け止められなかったのかも知れません。しかし、彼女は園の中で面倒をみてもらったり、時には命令されたり、いろんな体験を経ながら年中・年長になるにつれて、すごく思いやりが持てるやさしいお姉さんへと育っていきました。お母さんも驚いて、「3歳の時はちょっと意地悪なこともして、妹のことをいじめたりもしていたけど、年長になったらすごく妹思いになっちゃって」と話してくれました。

年上も年下もいる。そういう社会の中でじっくり、長い時間をかけて人間関係を学びながら育つ。「親」という文字は、「木に立って見る」と書きます。まずは、「見守る」ことから実践してみましょう。

掲載日:2009年3月19日

山内清視 プロフィール

やまうち・きよみ
1956年茨城県・大宝八幡宮宮司の長女として生まれる。1979年境内に社会福祉法人やはた福祉会大宝保育園(山内光洋園長)開設。主任保育士として現在に至る。1996年から保育の日課を午後昼寝から午前昼寝に変えるなど、子どもたちの身体機能を高めるカリキュラムを積極的に取り入れる。特に障がい児保育に力を入れ、朝の運動プログラムで機能訓練・促進を図る。趣味はジョギングで、1995年ホノルルマラソン完走をきっかけに早朝ジョギング実施(年間走行距離2000キロ)。他にピアノ・エレクトーン・篠笛。地域のボランティア活動を長年実施。EMについては八千代町で美容室経営・生井香代子さんから伝えられ、数年前から園全体に活用している。生井さんとともに、比嘉教授や比嘉節子さんによる講演会・講習会を開催し、保護者をはじめ地域への普及に努めている。

 

第11回
鎮守の森で"心を育てる"保育をめざして

第10回
保育園に関わるすべての人に

第9回
園長から職員に向けてのメッセージ

第8回
子育てのパートナーになりましょう

第7回
デイリープログラムを見直す

第6回
食育活動「いのちをいただくということ」

第5回
心身共に健やかに成長する2

第4回
心身共に健やかに成長する

第3回
自立できる子どもへ2

第1回
鎮守の森の中にある保育園


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