大宝保育園では、室内は素足、戸外は草履を履く生活をしています。また、「身体の発達を保障する」という考えから、体幹を育てるためにハイハイ運動を取り入れています。ハイハイ運動といっても延々とするのではなく、おおよそ30分の時間内に「四つばい」、「手押し車」、ワニのようにはう「ワニばい」、前頭葉を活性化すると言われている「高ばい」の4種類を基本に15〜20種類の運動がセットになっています。運動を楽しみながら、子どもたちは最後まで頑張ろうとする気持ちを育てていくようです。体幹がしっかりすると姿勢が良くなり、正座する生活でそれを維持することが可能になります。
このことは他のことにも及んでいくのです。ハイハイ運動を開始して半年後には鉄棒の逆上がりができるようになった子が激増しました。身体の発達は、中心から末端に育っていきます。ハイハイ運動を毎日行うことで、逆上がり、三点倒立、側転、竹馬など、割合早くできるようになることを実感しています。
昼食前のお昼寝で取り戻した生活リズム
一般的にお昼寝というと午後にとりますが、当園では平成8年度より午前寝を採用しています。これだと60分の睡眠でも寝起きがすっきりで、着替えてちょうど12時から昼食ができるようになっています。寝てから食べるので、乳児の眠り食べも見られなくなりました。
午後にお昼寝をしていた8年度以前には、大宝保育園にも夜更かしや朝寝坊の子どもがたくさんいました。8時ごろに起きてボーっとして登園、11時半ごろに給食を食べて、やっと目が覚めてきたころにまた昼寝して、起きたらボーっとおやつを食べて、また脳が動かなくなって、夕方になったら、今度はランランとしてきて夜遅くまで元気になってしまう。そういう生活の子どもが多くいました。昼間イキイキと過ごせなかったら、どんなにいい保育をしても効果がありません。
年1度、大宝八幡宮に高砂部屋が合宿に来る時は午後午睡をしますが、どうしても60分では足りないようで、1時間半〜2時間寝てしまうのです。このように、午後に2時間寝てしまうと、「夜、早寝してください」と、保護者に呼びかけても無理な話なのです。保護者ばかりに要求するのではなく、園でも対策をとらなければなりません。
そして、午前午睡を始めたのですが、当初は、夕方早く眠くなってしまって、ご飯も食べられないし、お風呂にも入れない…と苦情が相次ぎました。習慣になっている1日のあり方を変えることは簡単なことではなく、保護者の苦情と職員の反感に押しつぶされそうになりながらも、「夕飯よりも睡眠の方が大事、お風呂に入らなくても平気!」と、午前寝を強行してきました。
数か月過ぎたころ、効果が見えてきたのです。朝からあくびの子、ボーっとしている子がいなくなりました。早寝早起き、ハイハイ運動で元気になり、逆上がりができる子が圧倒的に増えたのです。子どもが変わることによってスタッフ始め保護者の意識も変わりました。
社会は夜型になっていますが、「不易と流行」という言葉の通り、早寝早起きは三文の徳とも言います。単に「子どもはそうするもの」というルールに止まらず、子どもの発達にとってとても重要なこととして捉えたいです。
やまうち・きよみ 1956年茨城県・大宝八幡宮宮司の長女として生まれる。1979年境内に社会福祉法人やはた福祉会大宝保育園(山内光洋園長)開設。主任保育士として現在に至る。1996年から保育の日課を午後昼寝から午前昼寝に変えるなど、子どもたちの身体機能を高めるカリキュラムを積極的に取り入れる。特に障がい児保育に力を入れ、朝の運動プログラムで機能訓練・促進を図る。趣味はジョギングで、1995年ホノルルマラソン完走をきっかけに早朝ジョギング実施(年間走行距離2000キロ)。他にピアノ・エレクトーン・篠笛。地域のボランティア活動を長年実施。EMについては八千代町で美容室経営・生井香代子さんから伝えられ、数年前から園全体に活用している。生井さんとともに、比嘉教授や比嘉節子さんによる講演会・講習会を開催し、保護者をはじめ地域への普及に努めている。
第11回鎮守の森で"心を育てる"保育をめざして
第10回保育園に関わるすべての人に
第9回園長から職員に向けてのメッセージ
第8回子育てのパートナーになりましょう
第7回デイリープログラムを見直す
第6回食育活動「いのちをいただくということ」
第5回心身共に健やかに成長する2
第4回心身共に健やかに成長する
第2回自立できる子どもへ
第1回鎮守の森の中にある保育園