午前午睡で園生活にメリハリ
園では子ども自身が子どもらしく、よりイキイキと過ごすためにはどうしたら良いか、障がい児を受け入れるにはどうしたら良いかを考え、平成8年度より次に掲げるようなデイリープログラムに変えました。昼寝は午後という従来の発想を覆した内容になっています。
1日の流れを変えることは非常に大変でした。毎日のハイハイ運動もきつかったです。でも、半年が経過して子どもたちが変わってきたのです。“逆上がり”ができる子が目に見えて増えました。予想もしなかったことで、みんな本当にびっくりして喜びました。昼食も昼寝をしてから摂るので”眠り食べ”が見られなくなりました。午後昼寝の時は、「お昼寝嫌いだから園に行きたくない」と言う子どもが結構いたのですが、午前昼寝にしたら1人もいなくなりました。活発になりました。指先が器用になりました。ケガが激減しました。このような変化に、「体が疲れて大変だ」と思っていた職員も、「この保育を続けていっていいのではないか」と意識が変わり、そのうち確信になり、現在では自信につながっています。
全身運動で低体温体質が改善
昨今の子どもたちは夜更かしや運動不足で体温が低下しています。しかし、早寝早起き、ハイハイ運動、裸足の生活をすることで改善されています。実際、3か月ほど園の生活をしていると、ほぼ全員の子どもたちの体温は36度5分以上になり、運動直後は37度前後になります。脳が一番働く体温は37度〜37度2分と言われているように、運動直後の指先の時間がとても集中してできるのはこのためだと実感しています。
③と④の全身粗大運動と手指の微細運動を毎日継続して行うことは、子どもたちの全身の筋肉を毎日鍛え、身体の発達の保障を可能にします。同じ3歳児でも、0歳または1歳から入所している子どもと、今年入所してきた子どもとでは、運動能力や手先の器用さにかなりの違いが出ています。加えて、最後までやり抜く、できるまで頑張るという”頑張る気持ち”が育っています。
「早寝早起き・ハイハイ運動・午前午睡…」を考案し提案したのは、元東北福祉大学教授・故河添邦俊先生です。河添先生は、群馬県前橋市にある愛泉保育園の実践に携わって実績をあげられました。一時はこの保育に共感し、全国的に広まったようですが継続するのが困難なこともあって、午後午睡に戻した園も多いと聞きます。夜型社会の現在、共働きの両親と触れ合うのは夜しかないからと夜更かしを黙認している保育園もあるようです。
確かに、保育園は両親が共働きで、昼間家庭で保育できない子どもを預かるところです。しかしながら、ただ預かるのではなく”発達を保障”しなければならないところでもあります。私たちはこの③と④の取り組みで、障がい児を多く受け入れることが可能になり、自閉症やADHDなど多動な子どもたちにも、脳性麻痺のような肢体不自由な子どもたちにも効果があることが分かってきました。それだけに、乳幼児期の子どもの生活リズムは子ども主体に考えてほしいと切に願っています。
やまうち・きよみ 1956年茨城県・大宝八幡宮宮司の長女として生まれる。1979年境内に社会福祉法人やはた福祉会大宝保育園(山内光洋園長)開設。主任保育士として現在に至る。1996年から保育の日課を午後昼寝から午前昼寝に変えるなど、子どもたちの身体機能を高めるカリキュラムを積極的に取り入れる。特に障がい児保育に力を入れ、朝の運動プログラムで機能訓練・促進を図る。趣味はジョギングで、1995年ホノルルマラソン完走をきっかけに早朝ジョギング実施(年間走行距離2000キロ)。他にピアノ・エレクトーン・篠笛。地域のボランティア活動を長年実施。EMについては八千代町で美容室経営・生井香代子さんから伝えられ、数年前から園全体に活用している。生井さんとともに、比嘉教授や比嘉節子さんによる講演会・講習会を開催し、保護者をはじめ地域への普及に努めている。
第11回鎮守の森で"心を育てる"保育をめざして
第10回保育園に関わるすべての人に
第9回園長から職員に向けてのメッセージ
第8回子育てのパートナーになりましょう
第6回食育活動「いのちをいただくということ」
第5回心身共に健やかに成長する2
第4回心身共に健やかに成長する
第3回自立できる子どもへ2
第2回自立できる子どもへ
第1回鎮守の森の中にある保育園