参拝というと、「高校や大学に受かりますように」とか、「テストで良い点がとれますように」など、いつも何かしらの願いをかけてお参りすることが多いと思いますが、大切なのは、「ありがとう」という感謝する気持ちでお参りすることだと思います。子どもたちにも、お参りでは「生きていることに感謝」、「ご飯が食べられることに感謝」、「今日も元気で過ごせたことに感謝」などなどを話して、「こういうことに“ありがとう”を言おうね」と伝えています。
みんな違って、みんないい。認めて、尊重し合う
一般的に保育園では、「集団生活が可能な子」という受け入れ基準があります。人間の社会はいろいろな人がいるのが当たり前なのに、この基準に達していなくて入園を断られてしまう子どもがいます。特にハンディがあるとかないとかではなくて、障がいがなくても手のかかる人も結構いるのですが、人は1人ひとり違って当たり前で、言うなればそれは個性です。幼いころからお互いの違いを認めて、尊重しあう心を育てていくのは大事なことで、保育園の役割は大きいと日ごろから肝に銘じています。
以前は障がい児を1人か2人受け入れるのが限界でしたが、もっと多くの子どもたちを受け入れるためにはどうすればよいかを保育士も含めて園全体で真剣に検討し、受け入れるための体制づくりに取り組みました。保育士だけでなく、大学の専門家や常勤の療育指導員が関わって、保育園ではありますが、可能な限りの療育を保育に取り入れました。今では、重い障がいのある子どもや他の保育園で入所を拒まれた子どもたちを多く受け入れられるようになりました。
それから今年で14年目。様々な障がいのある子どもたちに出会い、寿命が縮むような事態も何度か経験してきましたが、すべて貴重な体験になっています。個別の対応が必要な子どもには個別の対応をすることが、本当の意味での平等と言えます。こういう考えから、個別・小集団活動・逆統合活動などと形を変えて対応していますが、全職員が関わるところに大宝保育園独特の柔軟性があります。手がかかって大変な子どもを相手にしても、不満を言うどころか、どのように対応することがその子にとって最善かということを常に真剣に考えてくれるスタッフに恵まれたことに、心から感謝しています。
前回では、身体づくりについて触れましたが、身体だけ鍛えても、心も共に育っていかないと本当の意味での健康とは言えません。保育園では0歳〜就学前、さらに隣接して学童クラブがありますが、異なった年齢の子どもたちとの関わりに加え、障がい児と共に過ごすことは思いやりをはじめとする“心”が育つことを確信しています。そして、神様の前で“ありがとう”と感謝できる素直な心が、魂の成長に繋がるものと信じています。表題の「みんな違って みんないい」は、私の大好きな金子みすゞさんの詩ですが、障がい児保育をめざした際に真っ先に浮かんだ心情と重なる素敵な心温まるエールです。
やまうち・きよみ 1956年茨城県・大宝八幡宮宮司の長女として生まれる。1979年境内に社会福祉法人やはた福祉会大宝保育園(山内光洋園長)開設。主任保育士として現在に至る。1996年から保育の日課を午後昼寝から午前昼寝に変えるなど、子どもたちの身体機能を高めるカリキュラムを積極的に取り入れる。特に障がい児保育に力を入れ、朝の運動プログラムで機能訓練・促進を図る。趣味はジョギングで、1995年ホノルルマラソン完走をきっかけに早朝ジョギング実施(年間走行距離2000キロ)。他にピアノ・エレクトーン・篠笛。地域のボランティア活動を長年実施。EMについては八千代町で美容室経営・生井香代子さんから伝えられ、数年前から園全体に活用している。生井さんとともに、比嘉教授や比嘉節子さんによる講演会・講習会を開催し、保護者をはじめ地域への普及に努めている。
第11回鎮守の森で"心を育てる"保育をめざして
第10回保育園に関わるすべての人に
第9回園長から職員に向けてのメッセージ
第8回子育てのパートナーになりましょう
第7回デイリープログラムを見直す
第6回食育活動「いのちをいただくということ」
第5回心身共に健やかに成長する2
第3回自立できる子どもへ2
第2回自立できる子どもへ
第1回鎮守の森の中にある保育園