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パネルディスカッション

 

「持続可能な社会の実現に向けて~食と農の関係を考える~」

 

比嘉 照夫(ひが てるお)

農学博士。琉球大学農学部教授、(財)自然農法国際研究開発センター理事、自然農法国際普及実行委員会委員長、農水省・国土交通省提唱「花のまちづくりコンクール」審査委員長。著書『地球を救う大変革①②③』『甦る未来』(サンマーク出版)『EM医学革命』『「新世紀」EM環境革命』(綜合ユニコム)『微生物の農業利用と環境保全』(農文協)など他多数。

元岡 健二(もとおか けんじ)

株式会社ティア代表取締役社長。1998年1月に店頭公開までさせた外食チェーンの社長を退任。同年6月熊本に旬の無農薬有機野菜を使った家庭料理レストラン「土に命と愛ありてーティア」を、2005年12月には「もったいない食堂」1号店を開店。日本の食と農業を守ろうと提言、それに賛同する人たちの出店支援を積極的に行っている。平成17年に有機野菜を主体にした外食の新業態の確立と普及活動に対して「外食アワード2004」業態開発部門賞を受賞。

嘉山 進(かやま すすむ)

神奈川県農業経営士。横須賀・長井有機農法研究会副代表。18年前、慣行栽培から有機・自然農法へ転換。現在2haの農地で大根・キャベツ・メロン・カボチャなどを栽培。消費者の会「マリーゴールドの会」(会員約100人)と提携し、消費者の声を大切にした栽培に務める。

竹市美知子(たけいち みちこ)

愛知県犬山市に平成18年オープンした「食育の店 ロハスひまわり」代表。稲作・畑作で15年のキャリアを持ち、自然農法農園「ひまわり」(平成11年開園)世話人。

園井 信雅(そのい のぶまさ)

有機農産物生産グループ「紀州大地の会」と「和歌山EM活用研究会」の代表世話人。紀州大地の会では、生産物の流通販売を展開。会員70戸の農業生産者の内、有機JAS認定農家21戸。和歌山EM活用研究会は、地域における環境活動で平成18年度和歌山環境大賞受賞。NPO和歌山有機認証協会理事、NPOわかやま環境ネットワーク理事。

コーディネーター

 

金場 朗悦(かなば あきよし)

(財)自然農法国際研究開発センター普及課長

 

安全・安心な食が拓く可能性

 

金場

現代ほど食の安全・安心が求められ、また考えなくてはならないときはないと思います。「食育」「ロハス」を掲げたお店経営の所以をお話しください。

 

竹市

便利な生活スタイルが進んで、利便性や効率性を食にも求める傾向がありますが、食はお金で満たすのではないというのが私の考えです。農家の方が丹誠込めてつくられた自然農法のお米や野菜をゆっくりと時間をかけて調理すると、野菜本来の味と生命力を丸ごといただけます。食べていると、人間の持っている免疫力が上がって、自然治癒力も高まっていくのが分かります。やはり「食は命」で、生命力のあるものを食していきたいと思って「食育の店玄米菜食ロハスひまわり」をやっております。

 

元岡

私は、人もものもすべて命に限りがあるように思います。限りある命を「もったいない」と思って生きていくかどうか。その命を「どう活かすか」を常に考えています。一方で、経営していくことの難しさは9年目になった今でも感じています。売価を上げるわけにはいかないのに、原価や人件費は高くなっていく。志を持って頑張っている生産者の方々と喜びを共有できることをめざしています。

 

金場

嘉山さんは、有機自然農法に切り替える以前は消費者を遠い存在に思っていたと聞いておりますが、現在の関係はいかがですか

 

嘉山

18年前までは、慣行農法が大好きな人間でした。他人の健康は考えず、お金儲けだけで、農薬や化学肥料をばんばん使いました。15年前に援農グループ「マリーゴールドの会」と出会い、安全な野菜が欲しいという消費者の熱意に心を動かされ、順次有機自然農法に転換しました。3年間で有機自然農法をめざす生産者グループも育ってきたことから、産直を開始しました。現在も100人近い消費者たちが参加して、出荷小屋がグループの活動拠点になっています。 

 

消費者の声を直に聞くことで活動範囲も広がりました。地元中学校から農業体験の受け入れや、消費者が市や県に声をかけて、僕たちが農協とか市場やスーパーのバイヤーに声をかけて合同でイベント活動するのです。消費者に支えられながら、安全・安心・高品質の野菜づくりをめざしています。

 

比嘉

皆さんのお話を聞いていると志がだんだん使命感になり、ものの本質を見るところに到達していますね。協力関係が嬉しくて、楽しくてというように本質を付加価値にしていることで、お互いの存在の関係性で足りない部分を補い合っていく方向が見えてきた感じです。

 

 

流通にどう関わる。生産者と消費者

 

金場

園井さんは環境問題にも取り組んでいますが、食と農の分断が生産現場や環境にどのような影響を与えたと考えますか。

 

園井

食と農の分断は、消費者の声が生産者に直に届かなくなったこと、あるいは本当に良い物を合理的な価格で生産者が消費者のところへ届けられなくなっていることに原因があると思います。日本は高度経済成長とともに農業までも、工業的なマネジメントの発想で進めていき、生産者と消費者の間に命の糧に関する大切な情報の交流が非常に希薄になっていったのです。

 

特に、大きな影響を与えたのは流通業者のあり方だと思います。なぜキュウリがまっすぐでなければならないのか。トマトが何で年がら年じゅう出回らなければならないのか。加えて、世界からの農産物、一次産品の輸入が急速に増え、日本の農・漁・林業が価格競争に太刀打ちできなくなって衰退していきます。

 

昭和36年に施行された農業基本法は、農業生産の機械化、化学肥料や化学農薬大量投与、特産品の形成などを要に戦後の食糧難を急速に回復していきましたが、その反面で様々な問題が起きています。「衣食足りすぎて礼節を忘れる」・・そんな状況に今日の日本は至りつつあるのではないでしょうか。これは本当に生産者も流通業者も消費者も一体になって、日本の文化・文明を考え直してみるときです。

 

金場

嘉山さんのグループは、産直をとりながらも流通業者とも良い関係を築いていますね。

 

嘉山

生産者の立場で流通業者と良い関係を築くには、”うそ”をつかないことです。この大根1本100円で買ってくれとか、僕は一切言わないのです。僕たちは生活しているから本当はお金が欲しいのです。でもそれを言ってしまったら絶対に理解されない。だから、何しろおいしい、安全な野菜をつくることに専念する。そうすると評価され、高価格で取り引きされる。それだけは自信を持って言えます。

 

僕たちに自信がついてくると、流通業者も農法を理解しようとして変わってきます。秋田や長野・岩手のEM栽培リンゴは流通業者を通して、横須賀の消費者グループにつなぐのですが、産地と流通業者の間に新しいつながりができていきます。つながりをつけることをやっていると、流通も顔が見える関係になってきますね。

 

金場

園井さんも元岡さんも、生産と消費の仲介という形をとりながら、実は嘉山さんが実現している”つながる”という仕組を創っているのですね。

 

園井

私は農業に関わっていますが、実はまったくの素人です。青春時代の19~26歳まで大阪の大きな豆腐・油揚げ工場に住み込みで働き、昼は学校へ行っていました。豆腐は当時腐りやすかったのでクレームも多く、ある時から「魔法の薬」を使い始めました。数年後、遺伝子に悪影響を与える遺伝変異性の性質を持った防腐剤であることが分かりました。知らずとは言え、多くの人に食べてもらっていた。しかも、住み込みで働いていた自分たちは一番多く食べていたのです。「俺は子どもを生める種があるのだろうか」「いつガンが発生するか分からない」と2、3年ビクビクしたことを記憶しています。

 

この経験を基にして活動展開では、安心して食べるもの、特に胎児を含む子どもたちの食と暮らしを基本的にレベルアップすることに使命感を持ち、目標にしました。安全で新鮮なものを新鮮な状態で売り場に届け、売る努力をします。するとそこに必ず会話が生まれます。こういうことを大事にしながら多様な流通ネットを組んでいくことをモットーにしてきました。

 

元岡

人を大事にする経営に取り組んできました。1人が組織を独裁していくのではなく、思いでつながっていくアメーバー経営のような形が、最も人の能力を引き出せるのではないかという思いで、ティアの家族という形でつながっています。土の「T」と命の[I]と愛の[A]をとって「土に命と愛ありてーティア」です。

 

昨日から学んでいるEMのネットワークもそうであるように、1人ひとりがつながって、1人ひとりが使命感を持っていくことが理想です。

 

比嘉

これまでのお話しで、私たちは人生をチャレンジするときの非常に重要なアドバイスをいただいたと思っています。成熟していくプロセスが感じられます。

 

相手のことを本当に考える。本質を見て相手のことを考える。これを持続していくと、どんどんプロフェッショナルな状況、ある意味で生き甲斐の状態に変化していきますね。

 

生きる力を育む食の力とは

 

金場

皆様から最後のまとめとして一言ずつお願いします。

 

竹市

過労とストレスで病気になった主人を通して、本当に生命力のあるものを食べ続ける大切さを学びました。健康体になった現在、素材本来の味を活かした料理を真心込めてつくってお出ししています。お客さまは、「いただきます」「ごちそうさまです。おいしかったです」とお礼を言われます。これが本当に食事の基本だと思います。ロハスひまわりでは、家庭のしつけや家庭の暖かさを伝えていきたいと思っています。

 

元岡

私はすべて人のせいにしないで、自ら実践することが大事だと思います。自分の目の前にいる人を、自分の実践を通して感じて、感動していただく。その思いを伝えていくためには後継者づくりが必要です。小さな「もったいない食堂」を通して、生産と消費、そして世界の中の日本が誇りを持って生きられるような実践をしたいと思っています。

 

嘉山

妊娠してつわりがひどくて何も食べられないお母さんがいました。妊娠3か月目にうちの大根の葉っぱを食べたのですが、そのお子さんが今4歳になって黙って食べていても大根の味が分かるというのです。3か月の胎児が記憶していると言うのです。僕たち生産者は、そこまで良い物をつくっていかなければならないと痛感しました。これからは予防医学という分野での野菜づくりをめざしたい。

 

園井

お腹にいる子どもも含めて、食を中心とした、暮らし、地域環境、心など、子どもたちを心身共に健康な状態に育てていくことに、この国は本当に集中していかなければならないのではないでしょうか。

 

食で言えば、日本の有機農業はJAS認定農家に限ると、0.16%。つまり1万軒に16軒という現状です。しかし、必ずしも有機農業を狭い意味で考えることはない。特別栽培農産物、エコ農業、すべてが環境保全を兼ねた農業を推進していると考えます。

 

有機農業推進法をたんなる施策で終わらせることなく、生産者や消費者の意見や意向を反映させていくには、多くの人が関心を持って見つめていくことが必要です。

 

比嘉

皆さんは生き甲斐で取り組んできた結果を、社会的な責任を持って提案されていますが、このことが世の中をよくしていき、持続社会を実現していくことなのです。

 

農業から始まって、土の健康、環境の健康につながり、できた食べ物でみんな健康になる。おまけにそういうことがすべて教育につながっていく。気がついてみたら、本当にローコストでロハスな社会に行き着くわけです。生きる力の本質はなにかと言うと、自分で食べるものを自分でつくれなかったら生きる資格はないのです。

 

自分の健康もしかり。現状では、医療も国家も破綻しかねない。自分の住んでいる環境を望ましい環境に管理していく。変える能力も生きる力の基本です。EMを使って川をキレイにしたり、土をキレイにしたり、空気をキレイにすることは、情報があってできることですから、人間関係の構築にもつながるわけです。共同で作業をして汗を流すことから地域を良くしていこうという発想が生まれる。みんなが生きる力を身につければ、日本から世界に対して、人類の未来のあり方を示してくれるだろうと、私は期待しています。

文責在記者
比嘉教授講演スライドフォト

 

 


 

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