私は仲間たちと白馬岳の麓で趣味の農耕作をやっています。昨年10月の収穫時には、見たことのない低気圧に覆われ、山の装備でも防御できない寒さに驚きました。翌月には青森に冬将軍が来ているのに台風が3つも発生するなど、今まで体験のしたことのない天候が日本を襲いました。1990年に集中豪雨という言葉が生まれましたが、その後も巨大な低気圧の発生など、地球温暖化による気象変動は、止まることがありません。

温暖化に対してCO削減が国際的に求められていますが、果たしてCO削減だけでいいのか、という問題を提起したいと思います。私は、昨年1月に南極の昭和基地に行ってきました。極地研究所の調査結果によると、COの濃度は北極から南極へ2年遅れで変動すること、また、過去50年の調査ではCOの濃度が上がっても、南極では気温の上昇がみられないことが分かってきました。この理由は、一年中雪が地表を覆っていると熱エネルギーが反射されて温度が上がることがありません。また、大気エアロゾル(浮遊ばいじん煤塵)が少ないので、気候変動があまり起こりません。

このことから、COが発生しているから温暖化する、温暖化が起こっているから気候変動が起こり、洪水や渇水が引き起こされるということは、必ずしも一直線にはつながらないのではないかと考えています。

CO削減は、国際的な課題であることには違いありませんが、同時に熱エネルギーや大気エアロゾルを吸収する自然を取り戻すことが何よりも大事です。その点、海に囲まれ、豊かな森林を持つ日本は、温暖化のために8万人も死亡したといわれるヨーロッパに比べれば、恵まれています。

特に森林の多機能に注目し、私たちは植樹活動を続けていますが。この活動は自分たちの代だけではできない事業なので、地元の子どもたちと取り組んでいます。山の木を植えるだけではなく、現代的な森林は都会の中にこそつくられなくてはなりません。ビルの壁面や屋上の緑化、緑道、街路樹、むき出しの斜面を緑でカバーするなどの方策が望まれます。人でできることは、樹木の植樹、家庭菜園、生垣などで、年中、熱エネルギーや大気エアロゾルを吸収できる植物で家を囲うことです。通産省の調べでは、緑が豊富な皇居に近いビルでは、他のビルよりも3℃温度が低いということです。温暖化対策には、植物の力がいかに大切かということでしょう。

また、農にかかせない種の遺伝子組み換えについて、私は人間にとってどうなのかという視点で判断しています。遺伝子を組み替えても、今までの成分と変化はない、生態系の影響はないと言われていますが、微量栄養素やビタミン、ホルモンなどの変化は調査されていないし、現実に今まで発見されていなかったアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が出現しています。経済至上主義にほんろうされないで、しつかりとした目を持つことが今ほど求められている時代はありません。文明の恩恵に浴しながらも自然の摂理に従っていく、アイデアを持ちながら農と共に生き延びていく、このことが一番大切なことだと思います。

(文責在記者)

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