トップ>特集・レポート>インタビュー・大塚貢さん2
第1回へ移動 第3回へ移動 第4回へ移動
大塚貢さん
おおつか・みつぐ 1936年長野県生まれ。信州大学卒業後、中学校教員、都内での会社員生活の後、長野県に戻り、県教育委員会指導主事、中学校教頭を経て、92年から中学校校長を務める。97年旧真田町教育長就任。市町村合併後、2006年より上田市教育委員長。07年退任後、教育・食育アドバイザーとして活躍中。
心の絆が切れた親子関係
 先生は学校改革の大きな柱の1つとして、大胆な給食の改善に取り組まれました。

大塚 授業を改善してから、いじめや非行はずいぶん減ってきましたが、まったくなくなったわけではありませんでした。

そのころ、朝礼で貧血になって倒れたり、遅刻したり、登校しても保健室にずっといる生徒が多いのを見て、もしかしたら食べ物に原因があるのではないかと感じました。

そこで陸上競技大会とか球技大会の日に、早朝から会場のそばのコンビニに行って車の中から見ていると、母親が子供を車に乗せてやって来るのです。子供たちはコンビニで菓子パンとかジュースとか好きなものを買って出てくる。ジュースといっても果汁ではなくて、合成甘味料や合成着色料の入ったものです。

その子たちを調べると、毎朝朝食を食べて来なかったり、いつもイライラしていじめや非行をしたり、あるいは無気力な子供が多かったのです。

そこで親を呼んで、子供の指導を頼んでも、子供は親の言うことを聞かないですよ。なぜかというと、その子たちは、「今日、かあちゃんは何を作ってくれたかな」と、母親の気持を思いながら弁当箱を開くことがない。自分の好きな菓子パンやなんかを買って食べているのだから、親は“お財布(さいふ)代わり”です。

家に帰っても、「今日は、お弁当おいしかった?」と親が子に問いかける場面もないわけです。親子の心の絆(きずな)が切れてしまっている。子供たちにとって何とも寂しい親子の関係ではないかと思うのです。

38%の子供が朝食をとらないで登校
 食事と子供の問題行動には、密接な関わりがあると考えられたわけですね。

大塚 以前から食事に問題があると思っていたので、校長になった時、食の調査を徹底的にやりました。その結果、38%もの子供が朝食をとっていないことが分かりました。

例えば、夕飯を前日の午後8時に食べても、給食は午後12時半頃からですから、少なくとも16時間ぐらい何も食べていないことになります。最も活動が盛んで、エネルギーの補給が必要な子供が、16時間も食べていなければ、空腹でイライラするか、無気力になるか、腹が減って友達をいじめてうっぷん晴らしをするようになるのは当然だと思います。

朝食を食べている子でも、何を食べているかと言えば菓子パンです。ジャムパンとかレーズンパン。それにハムやウインナーをちょっと焼いたもの。合成甘味料や合成着色料が入ったジュース。夜は、カレーや焼き肉。そういう子は朝食を食べていても、無気力だったり、キレやすかったり、非行を起こすことが多い。食事の改善をしなければ、根本的な解決にはならないと思いました。

家庭に呼びかけてもだめなら学校給食から
 食事の改善は、まず家庭でやるべきことですね。

大塚 そうです。ですから、少なくとも2日に1度は魚を食べて、カルシウムなどのミネラルを取らせてほしいと父兄に呼びかけました。子供が好きなカレーや焼き肉は、簡単で手間がかかりませんが、カルシウムや亜鉛、マグネシウムなど、血をきれいにして、前頭葉の働きを活発にしてくれるような微量栄養素がほとんどとれません。だから自己抑制ができなくて衝動的な行動をとってしまう。

でも、ほとんどの父兄は耳を傾けてくれませんでした。

もちろん、言われなくてもある程度バランスのよい食事を心がけている父兄もあります。でも無気力だったり、いじめや非行、犯罪を起こす子供の父兄にこそ考えてもらいたいのに、そういう家に限って聞き入れてくれない。それなら、もう学校の給食から変えるしかないと考えました。

 最近でこそ「食育」が大事だと言われるようになりましたが、当時、まわりの反応はいかがでしたか。

大塚 そのころ、学校は週6日制で、2食が米飯、4食がパンやソフト麺でした。それをできるだけ米飯に切り替えて、野菜や魚中心のバランスのよい献立にしようと試みました。しかし、子供だけでなく、親や先生まで大反対でした。

先生たちも、揚げパンやレーズンパンのような菓子パン、ソフト麺や中華麺を食べて育ってきているから、そういうものが好きなのです。

最近の親は、「給食費を払っているのだから、子供が好きなものを食べさせてほしい」と言います。「食育」が叫ばれる今でも、そういう傾向が強いのです。

調理する方も、米を洗って炊いたり、食缶に移し替えたり、ご飯粒がこびりついた箸や食器を洗ったりと、米飯給食は手間がかかるのでいやがられます。

根気よく試食会を重ねて米飯給食に切り替える
 よくその抵抗を突破されましたね。

大塚 熱心に取り組んでくれる栄養士がいましてね。根気よく米飯給食の試食会を重ね、食の特別授業をしてもらいました。

試食会では、イワシの甘露煮やサンマのかば焼きなどを、本当においしく作ってくれて、食の授業で、「青魚にはEPAやDHAが含まれていて、血液をきれいにしてくれます」と、栄養が体にどう影響するかをきちんと説明しました。

今でこそ食育基本法が制定されて、栄養教諭が授業できるようになりましたが、当時はクラスで栄養士が授業をするなんてことはありえませんでしたから、かなり思い切った挑戦でした。給食を改善しようという信念を持って、私の校長判断で進めましたから、私も一生懸命でした。

食が体にどう影響を与えているのか分かると、子供や親も変わってきました。最初は反対していた先生も、栄養の大切さが分かってきます。現実に子供たちが問題を起こしていましたからね。

栄養士の愛情が献立に(下の献立表の「ちょっとひと言」参照) 栄養士の愛情が献立に(下の献立表の「ちょっとひと言」参照)
少しずつ説得を重ねて、まず週6食のうち米飯を2食から4食に増やし、赴任(ふにん)した翌年の平成5年には、6食のうち5食を魚と野菜中心の米飯給食に切り替えることができました。

 例えばどんな料理ですか。

大塚 魚はイワシやサンマの甘露煮、マスの南蛮揚げ、アジの香味焼き、焼きシシャモ、ワカサギの唐揚げなど、全部頭からおいしく食べられるもので、カルシウムや亜鉛やマグネシウムなどのミネラルを自然な形でとることができます。

ご飯は、ただの白米ではなく、発芽玄米を加えました。発芽米に含まれるギャバは血管を柔らかくし、腸をきれいにしてくれるのです。それでもまだミネラルが足りないから、手のひらいっぱいの小魚を毎日食べます。今日は食べる煮干し、今日はコオナゴ、今日はキビナゴという具合です。家庭でも、これだけしっかり食べさせているところはそんなにないと思います。
週に1食だけは、揚げパンとかソフト麺とか、みんなのお楽しみメニューにしました。
栄養士が本当によく頑張ってくれました。[2009/4/16](つづく)

日 曜 主食 牛乳
小魚
おかず 栄養素 ちょっと一言(食事メモ)
エネルギー
kcal
カルシウム
mg
タンパク質
g
1 木 バターライス ○ 手作りカレーコロッケ
トマトサラダ
ワカメスープ
810 351 30.1 真田中オリジナル、心を込めた手作りコロッケを味わいましょう。
2 金 カレーそぼろ丼 ○ 魚のピリ辛焼き
煮びたし、サクランボ
大根と油揚げの味噌汁
811 444 52.2 矢野さん宅で収穫された地物サクランボ、香華錦をいただきます。
5 月 ご飯 ○ サンマの甘露煮
ごぼうサラダ
豚汁、杏仁豆腐
943 606 42.3 3年2組さんの希望献立。さすが給食委員長のクラス、健康によい和風献立。
6 火 ご飯 ○ エビとイカのチリソース
ちんげん菜のナムル
ワンタンスープ、ミニトマト2個
750 347 34.3 中華風でまとめました。20品目の食品が使われています。
7 水 ナン ○ タンドリーチキン
レタスとチーズのサラダ
キーマカレー、ジョア
920 602 45.1 上小大会がんばれ献立。カルシウムたっぷり、骨も心もしっかりするように。
8 木 ソースカツ丼 ○ (ヒレカツ)
ジャガイモの金平
エノキの味噌汁、くだもの
833 381 36.7 上小大会「勝つ」献立。ソースカツを食べて全力でがんばれ。
13 火 菜飯 ○ タラのマヨネーズ焼き
ビーンズサラダ
なめこ汁、くだもの
794 390 33.2 タラのようなあっさりとした魚は、ベークドマヨネーズと相性がいいです。
14 水 ご飯 ○ ハムエッグ
イカのマリネー
肉団子のスープ、トマト
776 373 36.3 トマトには抗酸化作用があるリコピンがたっぷり。
15 木 ご飯 ○ マスの南蛮揚げ
味噌ドレサラダ、手作りふりかけ
じゃが芋の味噌汁
824 352 46.5 人参の味噌漬け、じゃこ、梅、しその入ったふりかけで食欲増進。
16 金 親子丼 ○ アジの香味焼き
白菜のごまあえ
豆腐の味噌汁
794 507 41.3 父の日にちなんで親子丼にしました。
19 月 ご飯 ○ 揚げ豆腐の五目あんかけ
和風サラダ
けんちん汁、くだもの
845 621 36.5 保険・給食週間が始まります。内容のそろった朝食を摂って登校しましょう。
20 火 梅ご飯 ○ イワシみりん干し
切り干し大根の煮物
かき卵汁、ヨーグルト
878 761 42.2 中学時代にカルシウムをしっかり摂ることで骨粗鬆症が防げます。
21 水 ご飯 ○ ワカサギのカレー揚げ
青菜のチーズあえ、うずら卵の甘煮
ワカメと凍り豆腐の味噌汁
805 714 36.6 中学生に必要な1日のカルシウムは男子900mg、女子700mgです。
22 木 ひじきご飯 ○ 焼きシシャモ2尾
五目炒り豆腐
なすの味噌汁
829 586 40.1 カルシウムは、ひじきや大豆製品にもたくさん含まれています。
23 金 青豆ご飯 ○ カワハギの磯辺揚げ
凍り豆腐の卵とじ
もずくの味噌汁、ミニトマト2個
804 518 40.4 この1週間はカルシウムを意識しての献立でした。「自分を守ろう」です。
26 月 ビビンバ ○ 蒸しぎょうざ
ちくわのマリネー
春雨スープ、くだもの
880 384 35.7 真田中自慢のビビンバです。楽しくいただきましょう。
27 火 お茶ご飯 ○ 手作りさつま揚げ
こかぶの即席漬
鯛そうめん汁、くだもの
764 338 33.8 2学年中心のPTA試食会です。手作りさつま揚げに挑戦。
28 水 ご飯 ○ 鮭のハーブ焼き
ひじきと厚揚げの炒り煮
カレーうどん汁、くだもの
798 464 36.3 日本型の食事で健康によい、量とバランスを給食から学んでほしいです。

撮影/山下恒徳
トップページ | EMとは? | 特集・レポート | 連載 | 投稿ひろば | 用語集 | FAQ | バックナンバー | EM情報室 | リンク集 | サイトマップ

Copyright (C) Eco Pure All Rights Reserved.