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第18回生ごみリサイクル交流会2010
生ごみは宝だ!
日本農業再生への道を探る

「生ごみリサイクル交流会2010」〔主催:第18回生ごみリサイクル交流会実行委員会・NPO法人有機農産物普及・堆肥化推進協会(以下、NPOたい肥化協会)〕が8月23日、早稲田大学国際会議場で開催されました。生ごみを資源としてとらえ堆肥化し、有機農産物として循環させることを目標にした同交流会は、今回で18回目を迎え、全国から生ごみリサイクルに関心を寄せる市民ら458人(主催者発表)が参加しました。

主催者を代表してNPOたい肥化協会の瀬戸昌之理事長は、「生ごみを堆肥化して循環の仕組みに乗せるのは、専門家の仕事ではなく地域の総合的な仕事となる。広い視野をもって生ごみの堆肥化を行っている人たちが意見交換し、さらに取り組みの輪を広げていきたい」と挨拶しました。

「土の疲弊」を何で回復させるか


オピニオンリーダーの話に沸く会場
全体会では「生ごみは宝だ!日本農業再生への道を探る」をテーマにシンポジウムが行なわれました。パネリストは、早くから生ごみを地域資源としてとらえ食と農のまちづくりをめざすレインボープランを立ち上げ、現在も精力的に活動している山形県長井市の菅野芳秀さん(写真左)。農地がなく、生ごみリサイクルは不可能と思われている都会で、生ごみと花の苗を交換する事業を実現し、多くの自治体から注目を浴びている埼玉県戸田市職員の吉田義枝さん(写真中)。佐世保市を拠点に「大地といのちの会」を結成し、九州から生ごみリサイクル元気野菜づくりと元気人間づくりの旋風を巻き起こしている吉田俊道さん(写真右)。コーディネータは、生態系保全と環境微生物学が専門で東京農工大学農学部教授の瀬戸昌之さんがつとめました。

野菜の栄養価が落ちている
シンポジウムでは、農家である菅野さんが「ピーマン」を例にとって、1954年では100g600単位のビタミンAが、2001年には33単位と、20分の1に減ったことをはじめ、すべての野菜の栄養価が激変していることを紹介。堆肥から化学肥料農薬に転換し、「野菜の姿形はよくなったが、土の衰えによってかくも養分はない。土の弱りは、作物の弱りであり、土の化身である人間の弱り」と近代農業の現実を伝え、弱った土を甦らせるために「有機資源である生ごみを土にかえすことが有効ではないか」と提案しました。

生ごみのパワーはすごい
また、長崎県農業普及員から有機農家に転じた吉田俊道さんは、捨てられる野菜の皮や芯が、実は栄養たっぷりな、いのちの復活する場所=生成点であることを紹介し、「生ごみ堆肥と雑草からできた野菜がミネラル豊富である」という調査報告を行いました。土も人間の腸も同じ構造だとして、土には発酵した生ごみを、人間には未精白食品や丸ごとの野菜、発酵食品などを食べることが、元気な土、元気な人間づくりにかかせないと話しました。また、「食を変えることで子どもたちの低体温や集中力低下を改善することがわかった」と実践結果を発表しました。子どもたちが、自分の手で生ごみを土にかえして野菜を栽培し、それを食べるという「いのちの循環」と微生物の働きに気づく経験をして「土への感性を磨くことがなによりも大切だ」と話しました。

土のある地域とネットワークでリサイクル


首都高の高架下の花壇。車窓からの眺めも抜群に
話題の中心である「土」がない都会の行政職員である吉田義枝さんは、姉妹都市である埼玉県児玉郡美里町の農地に生ごみを還元し、安全で安心な野菜を市民に提供するという構想を公表。「9月にはNPO団体、市民、行政関係者が白菜の定植を行います。都会の人だって土づくりに加われます」と語りました。また、市民が家庭でつくるEM生ごみ発酵肥料と交換する花苗を栽培するフラワーセンターは、障害者の雇用の場となっており、「ハンデを持った人たちが栽培する花苗が花のまちづくりに大きく貢献しています。土がなくても、生ごみを分別し、堆肥化することによって、さまざまな波及効果があります。さらに活用法を考えていきたい」と抱負を述べました。

三人三様に語られた「豊かな土壌がいかに大切か」を受けて、瀬戸理事長(写真右)は、「大地をめぐる植物と生物の関係が切れてしまい、土壌の微生物も減ってしまった。我々はいったい何を食べているのか。食の質を問うことで、あらためて生ごみを燃やさず、堆肥にして大地にかえすこの運動を構築したい」と締めくくり、生ごみ堆肥化が土壌の復活、農業の再生に大きな役割を担うことを再認識する大会となりました。
なお、午後の分科会では4テーマ8事例発表があり、いずれも熱い議論が交わされました。

パネリストの事例発表
台所と農業をつなぐ生ごみ堆肥・・・土はいのちのみなもと
長井市レインボープラン推進協議会 委員(山形県) 菅野 芳秀 氏



レインボー認証シールがついた野菜たち
人口3万人、9千世帯のうち、市街地に暮らす5千世帯の生ごみを戸別回収。地域の家畜糞、モミガラと混合して堆肥化。台所と農業をつなぐ“レインボープラン”は、「循環」「共に」「土はいのちのみなもと」の3つの理念を掲げ、検討期間を含めると今年で21年目になる。生ごみ減量策ではない生活者重視の事業で、住民自治が基本にある。堆肥たっぷりの土から生まれた50年前の野菜をめざすレインボー野菜や米は、学校給食や市民に提供され、食と農の循環のまちづくりへとまい進している。
http://samidare.jp/rainbow/

生ごみがお花になって還ってきた…農地のない都会の挑戦
戸田市環境クリーン室クリーン推進担当副主幹(埼玉県) 吉田 義枝 氏



高齢者、障害者が担うフラワーセンター
人口12万1千人、5万5千世帯。人口増加のため可燃ごみも増加傾向にあり、ごみ減量推進のため生ごみを焼却ピットからはずす事業を開始。2008年より生ごみのEMボカシあえ(19リットル バケツ1杯)と花苗24鉢の交換事業を開始したところ、
市民に大好評で現在8万鉢をフラワーセンターで生産している。花と1350個の生ごみバケツが循環しており、花のまちづくりをめざすまでに。農地がないため、姉妹都市の美里町で生ごみ堆肥を施用してもらい、野菜を栽培、それを市民が食べる循環を実現。市民との協働で、やっかいな生ごみを宝にかえている。ちなみに今年4月から7月の4か月で35トンの焼却ごみ減量に成功した。
http://www.city.toda.saitama.jp/8/7002.html

土の元気は野菜の元気、人の元気・・・生命はつながっている
NPO法人大地といのちの会(長崎県)理事長 吉田 俊道 氏



大きなカブに驚く子どもたち
生ごみリサイクル堆肥で野菜づくりをするとまず子どもが変化し、それと共にお母さんが変わってくる。保育園や学校の食が変われば家庭の味が変わり、子どもたちの生きる力が育つ。生ごみと雑草を畑に戻して、微生物とミネラルいっぱいにした土から育った野菜の栄養価は驚異的。土に力をつければ、野菜の生命力が高まり、無農薬でも、害虫や病原菌があまり寄りつかなくなる。健康な野菜には虫がつかない。健康な子どもに育てるためには、生命力のある土からできた食べ物を与えることが大事だ。
http://www13.ocn.ne.jp/~k.nakao/

 

事例発表①
農作物の地域循環が回りだす
東京都小金井市ごみ対策課主査(東京都) 中福 昇 氏

人口11万5千人。世帯数5万5千世帯。東京都の中央に位置する住宅、文教都市。
2007年老朽化した全焼却炉を停止したため、「ごみ非常事態宣言」を発表。生ごみ減量の第一段階として、市内19小中学校・保育園の給食の調理残渣や食べ残し年間140トンを生ごみ処理機で乾燥させ回収して堆肥化。22年度から家庭の乾燥生ごみを戸
別回収をスタートし、生ごみ処理機を購入した25パーセントのおよそ600世帯が参加している。また、「小金井地場野菜フェア」を開催。地域の資源循環がまわり始めた。
http://www.city.koganei.lg.jp/kakuka/kankyoubu/gomitaisakuka/info/kansounamagomikyotenkaisyuu/

事例発表②
ゼロエミッションをめざして・・上質な生ごみ堆肥
峡南衛生組合食品廃棄物処理係リーダー(山梨県) 日向 久也氏 主任 鈴木 俊規氏

山梨県の身延山の宿坊、下部温泉旅館、飲食店、公共施設などの年間約120トンの事業系生ごみをを回収。EMボカシを振りかけた生ごみバケツと次週用のバケツを週1回交換。回収したEM生ごみ発酵肥料にアワビの煮貝とジャガイモの皮を加えて発酵堆肥「峡南1号」を製造。使い勝手が良く土づくりに効果があると農家に好評で、2009年度は15kg入り(500円)を3,200袋販売した。また、生ごみを出している下部温泉下部旅館組合おかみの会から発酵堆肥からできた野菜を使いたいという相談があり、旅館から出た生ごみが野菜になって帰ってくる取り組みが始まっている。
http://www.kyonan-eisei.jp/

事例発表①
夢は生ごみを利用して日本の玉ねぎづくり
伊勢崎有機農業研究会 (群馬県) 松村 光雄 氏

「安全でおいしい野菜を消費者に提供したい」と、試行錯誤の日々。導き出した結論は、「土づくり」。いい土をつくるために、生ごみに着目。機械で一次発酵させた地元の回転寿司の食品残渣(さ)を3か月に1回程度回収し、米のとぎ汁EM発酵液、EM活性液、鶏糞などとともに畑に散布。有機物のエネルギーを有効に使える「土中堆肥化」をあみだした。畑で前作の野菜残渣と草をロータリーにかけ、鶏糞、機械で一次発酵させた地元の回転寿司のEM生ごみ発酵肥料を散布し、草が生えるまでそのままにしておく。草が生えたらロータリーをかけEM活性液や米のとぎ汁EM発酵液をかける。有機物を入れて植えつけるまで3か月おくことで、病害虫の出ない良質な野菜が生産されている。自営業の経営感覚を生かして、地域のスーパーに地場産野菜コーナーを設け、欠品をしない、小袋に包装する、多品目を用意する、安めの値段設定をするなど、仲間とともに消費者に喜ばれるよう販売の工夫も行っている。

事例発表②
農家との信頼関係を築くことを重点に
生ごみ資源化を考える会(東京都) 代表 土方 彰子 氏

人口55万人、24万世帯。農地がまだまだ残る地域。野菜を共同購入し、その農家の堆肥舎に密閉容器に入れた生ごみを運んで15年。一層の推進のため2010年2月に「生ごみ資源化を考える会」を立ち上げた。新しくニュータウンができ、古くからの農家と消費者が隣合わせに暮らしているところも多く、地元産の農産品の需要も多い。地域の農家との信頼関係で、生ごみ堆肥を使ったおいしい野菜購入の関係を広げるため、草の根のつながりを拡げる活動を推進している。

事例発表①
無農薬・無化学肥料の野菜を食事に提供
ナチュラルファムシティ農園ホテル取締役営業部長農業班長(埼玉県) 深田 賢 氏

「観光と農業の融合」をテーマに、生ごみリサイクルを施設内でシステム化している農園ホテル。自給農園で育てた安全な野菜や米、果樹を宿泊客に提供、食べ残しや調理残さは堆肥化して畑に戻している。ホテルから徒歩2分のところにある水田約2500平方メートル、畑約8000平方メートルで米の他年間約22品目の野菜を完全無農薬で、4品目(米、リンゴ、桃、トウモロコシ)は低農薬で栽培している。2008年には、JAS認定を取得(現在は申請していない)。農作業は社員(農業斑)が中心で専従者は置いていない。ホテル内に設置された2台の生ごみ処理機から排出された堆肥(一次生成物)は、施設内から出た落ち葉と共にビニール袋の中でプールし、熟成させて使用している。食の完全循環に取り組んでいるホテルは全国でもここだけとの評価を得ている。客室70室、収容人数は350人。飲食業やホテル業などサービス業が低迷する不況下にあって、年間約10万人が宿泊。田植えや稲刈りを始め、野菜の種まき、草取り、つみ取りをする農業体験の人気が高く、年間約4500人の参加申し込みがある。
http://www.farm-city.co.jp/environment.html

事例発表②
温泉活性化、生ごみ堆肥化へ、農業利用は間近か
  三朝温泉観光協会本部長(鳥取県)  中村恭久氏

年間35万人が宿泊する温泉街から発生する生ごみは約270トン/年で、全町から排出する生ごみの約1/4に上る。2007年、県、町、同温泉旅館協同組合の3者で「三朝町ゴミゼロアクションプログラム」を策定、同年三朝温泉観光協会は、県と町から補助金を受けながら「三朝温泉循環型プラント事業」として、生ごみ堆肥化施設と廃食油のバイオディーゼル燃料精製施設を設置、2008年度から本格的に事業がスタートした。観光協会が拠点となって食品リサイクルのシステム化に取り組むケースは全国でも例がない。旅館の生ごみを堆肥化して農家に提供、農家は有機栽培した食材を旅館に提供、排出される生ごみを再び堆肥化といった循環をめざす。

観光協会の職員が毎日18軒の旅館と町調理センター、温泉病院から排出される生ごみを専用容器で収集し、生ごみリサイクルプラントで堆肥化。プラントでつくられた1次発酵の堆肥を近くの牧場に運び、牛糞と合わせて約半年間寝かせて2次発酵させた上質の堆肥づくりを行う。現在はモニターに無償で使ってもらっているが、有料販売を予定している。循環型社会づくりの推進や温泉地のイメージアップ、旅館のごみの減量化や無駄をなくすなどの意識改革、町財政の軽減、観光と農業の活性化など、これまでの客を誘致するだけの温泉町づくりからエコ温泉町へと挑戦中である。
http://www.misasa-navi.jp/2277.html

事例発表①
「有機性資源活用事業補助金」制度がスタート!
神奈川県相模原市資源循環推進課 総括副主幹(神奈川県) 奈良 潔 氏
さがみはらリサイクル連絡会 斉藤 奈美 氏

相模原市は、人口71万人。世帯数30万世帯。2010年度より、「相模原ごみDE71(でない)大作戦」と銘打って1人1日100gのごみ減量事業を開始。「ダンボールコンポストでの堆肥化」を推進している。2009年度は、市主催の講習会を市内3会場で開催し、延べ100人が受講。また、「有機性資源活用事業補助金制度」と「市民アドバイザー派遣事業」を開始した。

「有機性資源活用事業補助金制度」は、市民活動団体の「相模原いきごみ隊」と農業生産法人「青空農園」が実施した家庭の生ごみを有機性資源として活用する事業「お帰りやさいプロジェクト」をきっかけにできた制度で、一般家庭(市内在住5世帯以上のグループ・団体等)を対象に1世帯1万円を上限に補助金を出す。現在9団体84世帯が登録し、7団体は農業生産法人。補助金の対象は、①堆肥化の器具、基材、プランターなどの費用、②菜園などの利用料、③種苗費、④研修費用、⑤消耗品など。

 「市民アドバイサー制度」は、ダンボールコンポストを始めたい団体・グループに活動経験のある市民アドバイサーを派遣する制度で、市民アドバイサーには1時間3000円から1000円の謝礼が支払われる。現在。8人が登録。市民サイドで行われていた生ごみ循環に行政が、補助金をもって支援するまでになった。
http://sagamihara.ficsc.jp/sagamihara/search_result.htm?key=%E7%94%9F%E3%81%94%E3%81%BF

事例発表②
行政と協働、多彩なメニューでリサイクル推進
仙台生ごみリサイクルネットワーク 代表幹事(宮城県) 徳田 実 氏

仙台市人口103万人。世帯数46万世帯。1999年に4人の有志から発足したネットワーク。市の委託事業として市内5区の区役所で市民対象にした生ごみ堆肥化出前講座を年10回開催。コンポスト、密封容器、ダンボール式、電気式処理機の使用方法から、畑やプランターに堆肥として戻すまでの説明を行なっている。また、生ごみ減量リーダー養成講座を市と共催するなど、生ごみ堆肥化の普及に取り組んでいる。無農薬や低農薬で農産物を生産している農家グループと提携して電動処理機でできた「乾燥生ごみ」と「リサイクル野菜」を交換するリサイクル野菜ネットワークを立ち上げ、生ごみが循環するシステムを実現した。乾燥生ごみは、月1トンを越えるまでになっている。また、杜の都の落ち葉作戦と銘打って、市内の落ち葉を堆肥化するなど、多彩な活動を行なっている。
http://namagominet.web.fc2.com/

[2010/9/4]

次回の交流会は2011年8月26日(月)に開催される。
NPO法人 有機農産物普及・堆肥化推進協会(NPOたい肥化協会)
http://www.taihika-kyokai.or.jp/

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連載 吉田俊道さんの“生ごみマジック”元気野菜づくりと元気人間づくり

推薦書籍 玉子と土といのちと 菅野芳秀著


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