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参加者には若い女性も

議論は土の視点へ

挨拶する瀬戸理事長
「生ごみリサイクル交流会2011 生ごみは宝だ!」(NPO法人有機農産物普及・堆肥化推進協会 以下たい肥化協会)が8月26日、早稲田大学国際会議場で開催され、全国から約350人が参加しました。東日本大震災による犠牲者への黙祷の後、東京農工大学名誉教授の瀬戸昌之たい化協会理事長は、福島第一原発事故による土壌、水、牧草などの放射能汚染による甚大な農業被害にふれ、「食糧、エネルギーをどうするかを政財界にまかせてきた結果、我々が大切にしてきた土を真ん中にした循環が切れようとしている。これからは、国民1人ひとりが多面的に勉強して食糧やエネルギーをどうするかを決めていくことが大事だ。この交流会が、そのひとつの学びの場になるように期待する」と挨拶しました。

また、元札幌大学教授で退職後郷里の仙台に帰り被災した同会顧問の綱島不二雄さんが、「三陸地方の人々は、津波に対してもそれ相当の備えはしてきたが、それを超える災害だった。代々続いてきた農業や漁業を続けていけるのか、多くの人たちの気持ちが萎えているのが現実だ。国は、スマートシティや水産特区など想定しているようだが、東北の復興は地元主体で行うべきだと思う。集落をどうつくり直すか、先が見えない農家や漁民の気持ちに寄り添いたい」と東日本大震災の状況報告をし、カンパの訴えを行いました。また、生ごみの悪臭に悩んでいた避難所の石巻市立湊小学校が、たい化協会の指導で生ごみを堆肥にして花壇をつくった話や、避難している農家が山形県の田植えのボランティアに駆けつけた話などを報告すると、会場から大きな拍手が起こりました。

全体会では韓国と日本の2つの事例発表が行われ、午後からは4分科会に分かれてそれぞれの体験と知恵を分かち合いました。3月の震災以降、地域のおかれている状況は大きく変わりましたが、「有機農産物を食べ、堆肥化し、土づくりに参加し、美しい花・美味しい農産物を作ろう!」の原点に戻り、このスローガンが実現できるように根本的な問題解決をしていくことを確認する交流会ともなりました。参加者の若者の1人は、「放射能と有機農業は相容れないものだと実感しています。でも、生ごみを燃やさず大地にかえす営みの中にも問題解決の道があるのではないかと思います。生ごみも再生可能なエネルギーなのですね」と感想を述べていました。

 

全体会

韓国 人口約5,000万人 世帯数約1,700万世帯


報告する朴事務局長

生ごみを分別しないと罰金
1996年、廃棄物埋め立て用地の確保が難しくなったことから、生ごみ減量総合対策がスタートした。京畿道(キョンギド)儀旺市(ウィワンシ)での生ごみ堆肥化モデル事業を皮切りに、2005年から韓国の全人口の約95%を占める144自治体が生ごみの分別排出義務と埋め立てへの生ごみの搬入を禁止。2008年には全国に堆肥化施設や飼料化施設など、あわせて259か所の生ごみ堆肥化施設が自治体によって設置され、1日に16,323トンの生ごみが処理できるようになった。こうした資源化リサイクルセンターの建設には、おおむね建設費の30%を国が負担。また、生ごみからつくられる堆肥や飼料を管理するため、国だけでも年間817億ウォン(約60億円)の予算が計上されている。リサイクルの内訳は、2007年度で飼料42.2%、堆肥が41.4%でほぼ半々となっているが、生ごみ堆肥、肥料の需要は供給よりも少なく、過剰生産となっている。

一方、ごみのリサイクル率は、2001年の56.8%から2008年の90.5%と飛躍的に延びたが、生ごみの発生量は、2001年の平均11,237トン/日から2008年の15,142トン/日へと1.37倍に増えている。家庭での生ごみは、1日1人300gで、他の国よりも多く、生ごみの排出量の削減が火急の問題となっている。そのため、豊富な食材と大量の料理でもてなす韓国の食文化を見直し、大量消費大量廃棄の習慣を改める食改善運動が始まっている。

3言語(日中韓)環境情報サイト
東アジア環境情報発伝所HP
http://www.eden-j.org/

札幌市 人口約190万人 児童数 約14万人


田村さんと指導にあたった綱島さん

栽培した大豆で豆腐づくり
「環境首都・札幌」を宣言した札幌市では、生ごみの分別、資源化の促進に積極的に取り組み、市内の学校でも1997年から生ごみ回収を実施。2006年度から学校で出た調理クズや残食などの生ごみを堆肥化し、農家がその堆肥を使用して栽培した作物を学校給食で子どもたちが食べるという食の循環が開始された。食育と環境教育の充実を図ることをめざし、現在は、小学校204校、中学校97校の給食に生ごみ堆肥を使って生産された作物が使われている。この取り組みには、教育委員会が事務局を担う連絡会議が設置され、リサイクルセンター、札幌市環境事業公社、札幌市農業協同組合、札幌市学校給食会、調理業務委託会社、環境局、経済局(農政部)などが加わっている。

また、札幌市の市民講座「さっぽろ農学校」の卒業生が、知識や技術を市民との農の共生をめざしNPO法人さっぽろ農学校倶楽部を設立。NPOが栽培した「トウモロコシ」や「カボチャ」などが給食に使われ、子どもたちとの交流授業も行われている。こうした学校給食フードリサイクルを学校活動(落ち葉の堆肥化、野菜栽培、調理体験など)に関連させる学校も95校となり、その結果、給食の食べ残しが減ったことをはじめ、子どもたちの食への関心が確実に高まっている。

さっぽろ学校給食フードリサイクル
http://www.city.sapporo.jp/kyoiku/top/kyushoku/recycle/recycle.html

 

第一分科会

御殿場市 人口約9万人 世帯数 約3万世帯


タッグを組む高森さん(左)と勝又さん

堆肥化施設
同市と小山町が運用するごみ固形燃料化施設「RDFセンター」は生ごみの乾燥や無毒化に膨大な経費がかかり財政を圧迫しているため、10年ほど前から市民グループや一部業者が経費節減に協力しようと、独自の生ごみ堆肥化活動を展開してきた。平成20年から「生ごみは絶対燃やさず堆肥化する」を目標にあげるNPOエコハウスと御殿場市一般廃棄物処理事業協同組合が連携した生ごみリサイクル事業を開始。平成22年には、同市かまどの浄化センター隣接地に生ごみ堆肥化施設「ゆめかまど」が建設された。同施設は鉄骨平屋建てで床面積515平方メートル。生ごみの処理能力は1日5トン、年間1,176トン。木質チップとHDMシステム(有用微生物群)による自然発酵法で、悪臭を出さず良質な堆肥を造ることができる。HDMシステムは、ローテク、ローコスト、必要な堆肥だけつくられる方式で都市型の生ごみ堆肥化システムとして注目されている。

「この生ごみ堆肥化施設の建設が、ごみを出さないライフスタイルが広まるきっかけになってほしい。現在は一部地域の1700世帯で行っている家庭生ごみ回収を市内全域に広げ、将来は市内全域で生ごみ全量回収を目指したい」と関係者そろって期待を込めている。廃棄物処理業者の組合が地域の家庭生ごみ回収堆肥化に本格的に取り組むのは全国でも初めて。

エコハウス御殿場
http://www6.ocn.ne.jp/~ecogoten/


発酵液肥を説明する国岡さん
同社は、善循環の食品リサイクルループの構築をめざし、生ごみの回収、液肥へのリサイクル・農業への活用・生産販売までを一貫して行っている。地元の八頭町・智頭町・鳥取市の約2,100世帯約16トンと公立病院・介護施設・スーパーなど60事業所から出る生ごみ約45t、県外の食品工場からの廃ジャムなど70トンを回収し、月計110トンの液肥肥料を製造している。週2回の回収でその日のうちに地域内2か所の自社プラントで液肥化。液肥は酢のようなニオイで、多様なアミノ酸や必須微量栄養素を含む有機土壌活性液となる。基本的な使い方は、元肥10アールあたり2〜3トンを使用。生育過程で100倍液を散布する。商品名は「液肥スーパー大国」で、鳥取県認定グリーン商品として登録されている。自社農場で栽培されたニンジン、玉ネギなどは、生ごみを出す事業所に業務用として販売。直産ショップ「こだわり菜園」を開設し、地域の人たちに好評だ。また、リサイクルプラントの視察の受け入れや、環境セミナーなども実施している。

因幡環境整備㈱
http://www.inaba-kankyo.co.jp/

アドバイサー・恒川芳克さんのコメント
生ごみ堆肥化事業を支えるのは根本的に女性の力だが、社会化していくには男性の力が欠かせない。必要な人が必要な時に与えられ、事業は進んでいくものだと思う。時間はかかるが、正しい理念があれば、必ず成功すると信じている。

 

福島県南会津町人口 約1万8千人 世帯数 約7,000世帯


土と健康がテーマと話す馬場さん
全国に先駆けて化学物質過敏症の転地療養所「あらかい健康キャンプ」を設置したことで知られる同町は、財政を圧迫する医療費の解消のために平成20年から有機農業を指導する「いきいき健康農業推進員」を設置。有機物の地産地消を目標に炭素循環農法をすすめ、草や生ごみを有効利用した不耕起栽培を実践している。また、専門農家だけではなく、兼業農家や家庭菜園を行う町民対象に「大人の学校農学部」を開催し、堆肥のつくり方、使い方などを伝えている。スタート時は、有機堆肥への理解は少なく、なかなか受け入れてもらえばかったが、年配者の発酵の知恵が生かされ、草堆肥や生ごみ堆肥が普及してきた。収穫祭や直売所で、「安さ」競争とは違う食味や健康への貢献など有機野菜の価値を広めている。その結果、町がいきいきと変わってきたことを実感している。

茨城県土浦市 人口約14万人 世帯数 約5万7千世帯


わかりやすいテキスト

豊富な経験を市民へ 飯塚さん
ごみ減量化をはかる同市環境衛生課と、遊休農地の有効利用をすすめたい農林水産課が連携して誕生した有機栽培市民農園。有機農業に特化した市民農園は全国初と言われている。開講にあたり、生ごみ堆肥化を指導してきたJAS有機農家の飯塚さんの助言を受け、「自然を楽しむ菜園講座〜自給菜園でおいしい野菜づくり」(編集(財)自然農法国際研究開発センター)をテキストに栽培講習会を年6回開いている。農園の土壌診断を行い、1区画(20平方メートル)当り、生ごみ堆肥5kgと有用微生物ボカシ堆肥3kgを目安に30区画のうち15区画に施肥した。その結果、農園の作物のできもよく、「生ごみは宝だ」が定着してきた。雑草の大切さも浸透し、小豆、大豆、黒豆などを栽培しているが害虫や病気など全くでていない。有機で野菜が栽培できることが示され、周辺の農家が関心を示している。

中村西根市民農園
http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/nourin/nokan/guide/map_south20.html

コーディネーター浅井民雄さんのコメント
原発事故以降、特に消費者と農家の連携が重要になってきた。「生ごみリサイクル交流会」で「ごみ減量」から「土づくり」の話ができるようになり感慨深い。土づくりを成功させる鍵は、なによりも優秀な指導者がいるということだとあらためて認識している。

 

茨城県牛久市 人口約8万人 市内小学校数8校 児童数約4,000人


質問に答える川谷さんと矢野さん

魅力的なオリジナル教材
平成13年度に市がISO14001(環境マネジメントシステム)取得を機に学校給食の食べ残しを学校外に持ち出さず、化石エネルギーを使わずに堆肥化して処理する学校給食ゼロエミッションをスタートさせた。EM生ごみ堆肥化を進めるNPOエコライフが業務委託を受け、以来10年間、市内の全小学校5〜6年生に生ごみの堆肥化を指導している。オリジナル教材をつくり、見えない微生物の大切さ、循環のしくみなどを子どもたちに教え独自の環境教育を行っている。「日本広しといえども、このように長く学校で生ごみの堆肥化に取り組んでいる市は牛久以外にない」と評価された。今年1月からは、ゼロエミッションと同じ方法を取り入れた家庭の生ごみ回収がモデル地区で実験的にスタートし、地域ぐるみのゼロエミッションが期待されている。

NPOエコライフHP
http://www.ushiku-shimin.jp/uccy5m/index.htm

栃木県高根沢町 人口約3万人 世帯数 約1万世帯


有機質堆肥「たんたんくん」
平成12年に事業費7億5千万円(国と県から6割の補助)で完成した高根沢町土づくりセンターは、学校から出る給食残渣、町内から回収する生ごみに畜産廃棄物ともみ殻を加えて堆肥「たんたんくん」を製造している。翌13年から、地元農家がこの堆肥を使って生産した米や野菜を学校給食で活用する「食育、地産地消プロジェクト」が始動。学校給食センター、町、JA、高根沢町土づくりセンターが連携し、学校給食への地場産農産物の活用と循環型農業の推進をしてきた。この結果、①給食、野菜が好きな児童生徒が増えた②地元農産物、地元食材の利用が増えた──などの成果が認められた。

しかし、この土づくりセンターは閉鎖式施設のため電気代がかさみ、処理能力の割には経費がかかりすぎている。また、農家は堆肥を無料でもらうもので買う物ではないという意識があり、「たんたんくん」の売れ行きは芳しくなかったが、町が10トン当たり4,000円に対して2,000円の補助を付けたところ、利用者が増加した。今では、町内に2か所ある農産物直売所は地元農産物を目当てに観光バスも止まる盛況ぶりだ。給食食材を地元産にこだわると、生産計画や品目の調整など生産者にとっては面倒なことが多いが、それでも“孫のために”という申し出があって、17年度には使用食材の約50%を地元産でクリアーするまでになった。

コーディネーター・綱島不二雄さんのコメント。
総合力=生きる力を持った子供が育つためにも、食育をもっと総合教育の中に取り入れて欲しい。教育の場で生ごみ堆肥化を循環の流れに組み込んでいくと、生ごみ堆肥化の取り組みが、もっと豊かな運動になっていくと思われる。

 


知恵が詰まったベストセラー本

主婦の視点で たいらさんと久木野さん
地域単位の「小さな循環」で、土を大切にする暮らしづくりをテーマに活動。落ち葉や雑草、生ごみなどを家庭単位で資源化するための堆肥化の技術を長年にわたり全国に推進している。ことに地域循環を支える人材育成、支援講座を開催して、市民、学生、児童への学習支援を行い、講習会は年400回のべ2万人が受講した。提唱する「コンポストのある暮らし」を実現するためには、学び合い支え合う基盤が大切で、そのために、①誰もが参加しやすい学習会、②実践的で民主的な指導者、③適切なアドバイスをしてくれる地域の人、④世代間をコーディネートしてくれる人材や場の用意が必要と訴えた。

NPO循環生活研究所HP
http://www.jun-namaken.com/index2.html

武蔵野市 人口約13万人 世帯数 約7万世帯


ローテクな段ボールコンポスト
「クリーンむさしのを推進する会」は、武蔵野市で自前の焼却施設をつくらなければならなくなったことをきっかけに創立された市民団体で34年の歴史を持つ。「ごみ発生の少ない街」「きれいな街」を目標に、地域に密着して活動を続けている。市内に12支部(会員数700人)があり、あらゆる方法の試験を市民、農家が行った。その経験から、段ボール箱・腐葉土・ヌカ・シャベル(材料費約1,300円)をセットした生ごみ堆肥化キッドを「生ごみ活かす君」として開発し、平成23年6月までの3年間に希望する380世帯に無料配布。現在のところ3割程度が継続しており、市民農園利用者にも生ごみで堆肥にする方法を伝授し、拡大につとめている。

クリーンむさしのを推進する会HP
http://www.city.musashino.lg.jp/faq/faq_seikatsukankyo/faq_gomi/002767.html

コーディネーター・土方彰子さんのコメント
家庭でのコンポスト化については、段ボールコンポスト、EMボカシなど出揃ってきたので、それぞれの方法で実践する人を増やす。段ボールコンポストについては、基材の研究をすすめ、さらに工夫して誰でも続けられる方式になるよう知恵を出し合いたい。

(2011/9/15)

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外部リンク

NPO法人有機農産物普及・堆肥化推進協会 (NPOたい肥化協会)


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