紹介するのは小学5〜6年生が総合学習の中で取り組んだ環境学習についてです。主な取り組みは水問題やごみ問題についてですが、日本とコスタリカの問題点をピックアップしながら、同時に両国の取り組みを比較し、発展途上国で小国なコスタリカではどのよう様な方法が水処理やごみ処理に適しているのかを、子どもたち自らが模索して提案していく学習です。
子どもたちがまず確認したのは、小学4年生に学習したごみ処理や水問題についてです。日本では各家庭で燃えるごみと燃えないごみに仕分けして、決まったごみ収集日に出されて、燃えるごみはごみ焼却場に、リサイクルできるごみはリサイクル場で処理されていることを改めて学びました。
しかしその反面、ごみ焼却場ではごみを燃やすことによって排出される二酸化炭素やダイオキシン問題、燃料費や残った灰を処理するための維持費が高いことなどの問題もあることが分りました。また、家庭から出る下水も下水管を通して下水処理場に集まられ、キレイに浄化された後に川や海に戻されますが、日本の下水処理で使われている活性汚泥法は施設の建設費や維持費も高いことが分かってきました。
ではコスタリカではどのようにしてごみが処理されているのでしょうか? コスタリカでは家庭から出るごみは仕分けされることなく、ごみ袋にすべてのごみをまとめて決まった収集日に出すという方法です。トラックで集められたごみはごみ集積場と呼ばれる場所に持って行かれてそのまま埋め立てられています。
この方法は埋め立てるだけの方法ですから場所だけがあれば良いわけですが、悪臭、ハエの発生、ごみ廃液による地下水の汚染、さらにはごみを捨てる場所が年々減っている問題や住民の反対運動など社会問題もあることが分かってきました。と言って日本のようなごみ焼却施設をつくれる、維持できるお金もコスタリカにはないので、そのまま日本と同じ方法は取れないことも分かってきました。
水についてもコスタリカでは各家庭から出る下水や家庭排水は処理されることもなくそのまま川にされて、川や海を汚染していることが分かってきました。と言って今すぐに日本にあるような下水処理場をつくることは、たくさんのお金がかかることや維持管理費も膨大で小さなコスタリカでは無理ではないかという答えにたどり着いてしまいました。
・コスタリカではゴミや水問題に解決方法はあるのか? ・お金に余裕のないコスタリカのような小さな国はどのように水、ごみ問題に取り組めば良いのか? ということをテーマに、小学5〜6年生の子どもたちで組織したエスクエラ・ハポネサ(日本人学校)環境研究所が本格的に調査を始めることになりました。
子どもたちが注目したのは、コスタリカにあるアース大学(国際熱帯湿潤地区農業大学)で日本の技術であるEM(有用微生物群)が低コストで安全で農業廃棄物を使ったコンポストや農場排水の浄化、畜産の悪臭対策、さらには農薬の代わりにバナナに使用されていることを発見し、このEMがコスタリカのごみや水問題解決に繋がるのではないかと考えました。
次に子どもたちは家庭から出た生ごみを学校に持ち込んで、EM活性液や米ヌカボカシを使って生ごみを発酵させ、学校の花壇やミニ畑で使って実際に花や野菜がうまく成長していくことが体験できました。さらには学校のトイレにも使って悪臭が消えることも体験できました。
子どもたちが今回の環境学習で学んだことは、EMであればコスタリカのような小さな国でもお金をかけずに十分にごみ問題や水問題が解決できる方法であることを学んだということと同時に、住民自身も環境を守るための活動に参加することもできることも知ることができました。
その上、微生物に頼らないで我々人間自らが環境を汚染しない、破壊しない努力をすることが一番大事なのだということが学習できたことは大きかったと思います。
今回の環境学習の取り組みについては、「インターナショナルデー」と呼ばれる年1回の現地の学校と周辺住民との交流日にも紹介され、子どもたちによるEMダンスやEM人文字が熱演もあり、大きな歓声が会場から上がっていました。
最後になりますが、今回のサンホセ日本人学校の子どもたちのEMを使った環境学習の熱心な取り組みや子どもたちの輝く目を見ていますと、EMの普及員の1人として携わっている私にも非常に新鮮な気持ちになりました。
中南米で進むEMの普及 第1回 ニカラグア・ディスカパ湖浄化活動 第2回 コスタリカで実施されるEM活用のバナナ栽培 第3回 コロンビア初の地方行政参加型の事例