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第3回 コロンビア初の地方行政参加型の事例
─たかが生ごみの選別、されど難しい生ごみの選別─



コロンビア地図


ミヌトデデイオス財団の代表デイエゴ神父と右端はEM研究機構の奥本氏


フンダセス理事のメンバーと比嘉先生


フンダセスのスタッフと比嘉先生


比嘉先生とアミルカル氏 コロンビア大統領府内にて

フンダセスのEM工場にてご満悦の比嘉先生


ミヌトデデイオス大学での比嘉先生の講演


フンダセスの実験室にて


世界でも類がないEM活性液5%を生コンに混ぜて建設しているホテル建設現場を視察。土木実験室でのコンクリート強化実験ではEM活性液使用区の方が強度が増したとの結果が出た。現在は5つ星のホテルとして営業中


トグゥイ市の全景


トグゥイ市庁舎。他国の視察者の受け入れも頻繁にある
今回は、コロンビアの中南米でも初めての地方行政参加型の優良事例を報告したいと思います。コロンビアにはEM研究機構職員時代に、EMの初期(2000年)の普及から少なからず携わっていました。

比嘉先生にはコロンビアに過去2度視察していただきました。視察ごとに農業、畜産、環境、水産、建設、産業へとEM使用が広がりを見せ、その普及状況から中南米でも「EMの普及が最も進んだ国の1つ」と比嘉先生に賞賛いただきました。

その第1理由としては同国のEM代表である、ミヌトデデイオス財団(同国の代表的なカトリック教団)の傘下にあるフンダセス(農村開発指導財団で非営利団体)の存在があります。元々このフンダセスには独自の微生物資材を開発し、普及していた実績もあったことから、EMの普及にはそう時間はかかりませんでした。また職員の数も当時は数人しかいませんでしたが、少数精鋭でその陣頭指揮に当たっているアミルカル・サルガード氏の豊富な経験と、さらに現場での結果を科学的にサポートするための水質、土壌、微生物分析が可能な実験室の整備に早期に対応されていたことも普及の成功の要因と考えます。

第2の理由としてはコロンビアの国民性にあると考えます。コロンビアといえばファルク(コロンビア革命戦線)と呼ばれるゲリラによる誘拐や内戦(同国の努力の結果、2000年以降は治安が大幅に回復していることを同国の名誉のために追記します)、そしてコカインに代表される麻薬のシンジケートなど、あまり良い話は聞きませんが、その反面、美人の国、宝石のエメラルド、世界一のカーネーション栽培などの良い印象もあります。コロンビア国民は実のところ勤労勤勉で、良い技術や新しい技術はさらに深く、広く追求する傾向を多く見受けます。

私もコロンビアのEM現場を訪問した時に“仕事がキレイ”と日本人的な感覚で感じることがあります。特に同国の主要な輸出品目でもあるカーネーション農場などの花卉農場を見ると、いつもキレイで整然とした農場が印象的で、ただ単に結果が良いというだけでなく、仕事にセンスがあると感じました。

これは他のラテンの国と比べても異なり、こう言った国民性や仕事への取り組み姿勢がEM普及にも関与し、他国のEM関係者を受け入れて研修なども行えるEM先進国になり得た理由と考えます。

今回紹介するのは、市役所が生ごみバケツとEMボカシを家庭に配布して、各家庭でEMボカシ処理した生ごみをコンポスト化する事例です。読者の皆さんの中には、すでに生ごみバケツとEMボカシを使って生ごみを肥料として利用されている方々もいらっしゃるかと思います。また、日本にはかなりの数に上る市町村が、この生ごみバケツを使って生ごみ処理に取り組まれていると聞いております。ただ日本では容易に受け入れられるこのシンプルな取り組みも、中南米となると非常に難しく、EM普及の中でも最も困難な活動の1つとなってしまいます。

ではどうして中南米では生ごみバケツとEMボカシを使った生ごみ処理の取り込みが受け入れられにくいのか。その理由は、家庭から出された無選別ごみが、そのままごみ集積場に運ばれて、ほぼそのままの形で埋め立てられる。いわゆるごみの選別に無参加型だからと考えます。

日本のようにごみ処理方法によって、家庭レベルでごみを燃えるごみや燃えないごみなどに選別するというごみ選別参加型の場合とは意識がかなり異なるのではないかと考えます。さらに中南米の場合は貧富の差が激しく、富裕層と低所得層によっても環境に対する意識も異なりますし、富裕層ではお手伝いさんを雇用している場合が多く、雇用主である主婦に指導しても選別そのものができていない場合もあります。

あとは何と言っても「個人主義」でしょうか。基本的に中南米の人たちは「自分のこと以外は無関心」という姿勢も、ごみの選別活動に弊害になっていると考えます。こういった背景が生ごみバケツとEМボカシによる生ごみ処理を難しくしており、現時点でもコロンビア以外の国で、地方行政が各家庭に生ごみバケツとEМボカシを配布して生ごみ処理に取り組んでいる事例は聞いたことがなく、またそれほど難しい取り組みなのです。

コロンビアの首都ボゴタ市から北東部にあるボヤカ県に人口約1万人にも満たないトグゥイ市があります。この市は約5年前から同市が所有するごみ処理場(埋め立て方式)がすでに埋め立て済みとなり、隣接する市町村が所有するごみ処理場に頼らなければならいようになってしまいました。当然ごみ処理費用や運搬費は前よりも嵩み、市の経営を日に日に圧迫し続けるわけですが、そんな時にフンダセスから生ごみバケツとEMボカシを使った生ごみ選別プロジェクトの話があり、市としてはこのプロジェクトに飛びついたわけです。

それも当然のことで、同市のごみの約50%が生ごみで、それがそのままコンポスト化ができ、しかも50%も減少させることができるとなれば費用も節約ができ、しかも市民への環境への意識も高まるとなれば、まさに一石四鳥くらいの効果が望めるわけです。

このような背景もあり、2002年から中南米初の行政主導型の生ごみバケツとEMボカシを使って家庭から生ごみを選別し、それをコンポスト化するプロジェクトが始まったわけです。

しかし、このプロジェクトも最初はなかなかうまくは稼動しませんでした。特に家庭での生ごみ選別の歩留まりが非常に悪かったためです。バケツの中にはプラスチック製品や袋、フォークやナイフ、ガラス製品やペットボトルまで入る始末で、これでは最終過程のコンポスト化の効率が悪く、プロジェクト全体がギクシャクしていましたが、フンダセスによる90日間のトーレーニングシステムにより、生ごみ選別もうまく軌道に乗り出し、今では国内外からの視察も受入れるほどになりました。

また、コーデイネートしたフンダセスはこの取り組みをビデオ化し、普及にも努めていました。多分このビデオを見たEM関係者は中南米でも相当な数に上ると思います。現在、コロンビアではこのトグゥイ市に次いで、すでに10以上の市町村が生ごみバケツとEMボカシを使った生ごみ選別プロジェクトを行っており、また中学生の授業にも生ごみ選別プロジェクトが組み込まれ、次世代にも受け継がれるプログラムが構築されています。これにより名実ともに中南米のモデルとなっています。

今後は他の国々にこの取り組みが受入れられるように地道な努力が必要と考えます。

トグゥイ市の生ごみバケツとEMボカシを使ったプロジェクトの写真集


フンダセスが独自に開発した生ごみバケツ


家庭で選別された生ごみ。EMボカシで処理されている


フンダセスが配布する麦ふすまのEMボカシ


市のトラックの回収を待つ生ごみバケツ


生ごみ回収日に出された生ごみバケツ


市のトラックに回収される生ごみ


回収される生ごみ。EMボカシで処理されているので悪臭やハエなどの発生がない


回収された生ごみが搬入される市のコンポスト場


搬入された生ごみを裁断機で粉砕する


粉砕された生ごみはおがくずとともにコンポスト化


コンポストの過程でもEM活性液を散布しEMの密度を高める


生ごみが搬入されてから3週間でコンポスト完成


コンポスト以外にもEM生ごみを肥料として利用


中学生によるEM生ごみプロジェクトの表彰式。比嘉先生から表彰を受ける中学生たち。新しい世代にプロジェクトが受け継がれるプログラムがコロンビアでは構築されている

[2008年12月12日]

中南米で進むEMの普及
第1回 ニカラグア・ディスカパ湖浄化活動
第2回 コスタリカで実施されるEM活用のバナナ栽培
第4回 コスタリカの日本人学校での取り組み


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