実証試験の発表を行った福島県農林水産部農業振興課が入る福島県庁西庁舎

アレキサンダー・ニキティン博士(べラルーシ国立科学アカデミー放射線生物学研究所・放射線生態学研究室長) 昨年秋福島にEM研究機構の案内で視察に訪れ、研究内容について記者発表も行った
福島県の公募による「農用地土壌中に含まれる放射性セシウムの作物への吸収を低減させる技術を選抜する」事業において、マクタアメニティ株式会社が提案申請、試験用資材を提供し、福島県農林水産部農業振興課が行った比較試験においてEMオーガアグリシステム標準堆肥使用による栽培結果が、化学肥料区(無処理区)の1/8以下、放射能の作物への移行抑制が実証されているカリ肥料を強化したカリ区より1/3以下に移行係数が低下しており、放射性セシウムの作物に対する影響を抑制する効果が顕著に現れた。

EMによる抑制効果は、ベラルーシ国立科学アカデミーがEM研究機構と行った研究でも報告されており、日本国内でも公的機関が成果を明らかにした。

福島県が行った試験概要は以下の通りである。

1.供試資材および試験方法

放射性セシウムを含む土壌に供試資材(マクタアメニティ(株)提供、同社が開発と技術指導を行っているEMオーガアグリシステムの標準たい肥(以下一部についてEM堆肥と表記)を添加し、作物(コマツナ)をプランター栽培することにより、吸収低減効果を評価した。

(1)供試資材および土壌への添加割合
ア.供試資材の他に、対照資材として塩化カリウムを用いた。
イ.土壌は、汚染濃度が異なる褐色森林土T(約1,200Bq/kg乾土)、褐色森林土U(約47,000Bq/kg乾土)、褐色低地土(約38,000Bq/kg乾土)を11:2:1で混和したものを使用した。すべての試験は3反復で実施した。

(2)試験方法

EMオーガアグリシステムによる栽培されたコマツナ
汚染土壌に所定の添加割合で各資材を混合した後、混合した土壌をプランター(65cm×23cm、14L)に詰め、コマツナ(タキイ「楽天」)を播種した(平成24年1月24日)。発芽後、20株/プランターに間引いた。プランターは温度を15℃に設定したパイプハウスに設置した。55日間育成後(平成24年3月19日)地上部全体を収穫し、放射性セシウム濃度をGe半導体検出器で測定した。また、収穫後の土壌も測定し、移行係数を算出した。なお、測定は、ユーロフィン フードテスィング ジャパン株式会社に委託した。また、資材添加前の土壌と収穫後の土壌における交換性カリウム含量を測定するため、1M酢酸アンモニウム液(pH7.0)で抽出後、原子吸光法で測定した。併せてコマツナの草丈、葉数、株重を測定した。

手順
※なお、Ge半導体検出器による測定は、U8容器を使用し測定時間は、以下のとおりとした。
①土壌:測定時間1,200秒
②植物体:測定時間1,200〜7,200秒

2.結果の概要

(1)放射性セシウム濃度および移行係数
コマツナの放射性セシウム濃度は、EMオーガアグリシステム標準たい肥、塩化カリを施用した区が無処理区と比較して低く、移行係数は、EM区で0.0007、対照の塩化カリ区で0.0023、無処理区では0.0060であった。

(2)土壌中の交換性カリウム含量
コマツナ収穫後の土壌中の交換性カリウム含量は、EM区、塩化カリ区、無処理区の順で多く、コマツナの放射性セシウム濃度の減少と同様の傾向が見られた。

(3)コマツナの生育

 図1 各種資材を施用した場合のコマツナへの移行係数
コマツナは全区ともカリウム過剰等の症状は無く正常に生育した。生育量は、EM区が、塩化カリ区、無処理区と比較して、ややまさった。

以上の結果、マクタアメニティ(株)が提案し提供したEMオーガアグリシステム標準たい肥の施用によってコマツナの放射性セシウム濃度、および、移行係数が低下した。

(以上福島県農林水産部による福島県民間等提案型放射性物質除去・低減技術実証試験事業 成績書(EMオーガアグリシステム標準たい肥)より抜粋引用

本試験結果により、マクタアメニティ(株)の提供資材によりセシウム移行の抑制が実証されたばかりでなく、対照区等より生育が上回っている試験結果も報告され有機生産資材としての優秀性も証明された※。

同表は福島県民間等提案型放射性物質除去・低減技術実証試験事業 成績書 (EMオーガアグリシステム標準たい肥)より引用

この結果報告をうけてマクタアメニティ(株)の幕田武広社長は、「今までの当社契約農家の調査実績や独自の分析にかんがみ、おおむね想定内の結果と言えます。今回の福島県の試験設定の制約上、今回は標準たい肥の使用だけに止まりましたが、EM発酵肥料(オーガ1号)、EMセラミックス等をEMオーガアグリシステムの使用基準により使用すれば、さらに移行係数の低下や収量の増加も見込めると思います」とコメントしている。

原子力災害により逆境にあえぐ「ふくしま」が、世界的な農業の先進地になることも夢ではない。(駐在員 石崎弥生)

2012年5月18日

外部リンク
アグリSCMふくしま
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    福島県 農用地等における「民間技術提案型放射性物質除去・低減技術実証事業」の採択及び試験結果

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