①何でも干して保存する
魚柄 自然界の食べ物は必ず傷みます。そこで保存の知恵が必要になるわけですが、保存策の筆頭は干して水分を抜くことです。
ニンジン、カボチャ、レンコン、ゴボウ、大根など、余った根菜類をピーラーで薄くスライスして、ざるや綱に広げて天日で干します。1週間ほどでカラカラに乾いたら、保存ピンに詰めて乾燥野菜のでき上がり。一晩水に浸けとけば、味噌汁でも煮物でも、包丁いらずでさっと使えて便利です。
汁を搾(しぼ)ったユズなどの柑橘類の皮も、干してビンに入れ、吸い物の浮身にしましょう。リンゴを食べたら芯も皮も切り刻んで2~3日干し、紅茶に加えてアップルティーを楽しみましょう。
ちょっと残った薄切りの牛肉だって、塩を振ってカラカラに干せば「お手製ビーフジャーキー」に変身です。豚肉を干したものは火を通す料理に。シチューやカレー、煮物などに入れると、コクが出て旨味がアップします。
②天然の調味料を活用する
次なる保存の知恵は、天然の調味料を活用することです。その代表選手が塩ですね。酢、アルコール、油も腐敗防止に役立ちますし、しょう油、味噌、酒粕なども昔から食品の保存によく用いられてきました。これらをフル活用して、手作りの保存食を作りましょう。
ウチでは山盛りのイワシやサンマを買ってきたら、まず刺身で楽しむその日の分を取り分け、残りは開いて塩を振って自家製干物にするか、塩をした後冷蔵庫に保存し、酢じめにしたりします。
大ぶりの魚の場合、余った切り身は味噌漬けや粕漬けにして食べ頃の時にいただきます。魚や肉などのタンパク質は、こうやって一手間かければ冷蔵庫の中で熟成し、旨味はさらに増してくるのです。
③隅々までおいしく食べ切る
骨も味噌汁やおすましの最高のダシになります。イワシなんかは骨さえもすり潰して「骨みそ」にし、文字通り骨の髄まで賞味します。煮魚をつくった日には煮汁の一滴だってムダにはしません。そのまま煮凝(にこご)りになるものもありますが、これに少々寒天を入れるとしっかり固まって食べやすくなります。野菜の煮物の残り汁も同様です。小さく刻んだ野菜やそうめんなどの具を入れて、寒天で固めるとオツな肴(さかな)のでき上がり。買ってきた食材の隅々まで腐らせずに使い切る。これが「一月9千円」の第一歩であります。
例えば、今夜ギョーザを食べるとします。刻んだ野菜とひき肉のタネ、それを通常の3倍量くらい一度に作ってしまいましょう。多少量が増えたところでその手間にほとんど違いはありません。10分かかるところがせいぜい12分になった程度のことです。
今夜のギョーザ分以外の残りで翌日のおかずのハンバーグ、翌々日のミートボールを作ります。さらに残ったタネは冷凍して次回のギョーザにしてもいいし、チャーハンの具に使ってもいい。1食分のギョーザのタネ作りが、4食分の下ごしらえに発展したわけです。
⑤次の食事への下ごしらえ
というように、カレーを作るのにニンジンやジャガイモを切るなら、翌朝の味噌汁用も切ってしまいましょう。カボチャやジャガイモの煮物を作るなら、多めに入れて途中で取り出し、マッシュポテトやコロッケのタネにしてしまいましょう。朝、炊飯器でご飯を炊くなら、卵も一緒に入れてゆで卵を作り、夕食のサラダの具にしましょう。
1回分の食事を調理する時、その回のみで完結させてはいけません。次の食事への下ごしらえがあってこその連続性なのです。
ミネラルやビタミン、繊維分が豊富な雑穀、豆、根菜類が体に良いことは分かっていても、やれ調理が面倒だとか、煮物のワンパターンしか知らないからといって敬遠する人が多いようです。そこで簡単豆料理と根菜料理を一品ずつ紹介しましょう。
まずは手作りのポークピーンズ。一晩水に浸けておいた大豆を20分ほど柔らかくゆでます。大豆より少し大きめに切った豚肉と薄切り玉ネギ、水気を切った大豆を一緒に中華鍋に入れ、蓋(ふた)をします。
⑦手軽に蒸して「つゆぴたし」
ニンジン、レンコン、大根、イモなどの重量級根菜類を1~2cmの角切りか、箸くらいの大きさの拍子切りにして10分ほど蒸し器で蒸します。蒸し上がったら、熱いうちに好みの濃さのそばつゆにドバッと浸けこみます。自然に冷めるまで放っておくと、つゆが根菜に浸みこんで、だし味のおいしい野菜料理が完成します。夏場なら冷蔵庫で冷やして、冬場なら沸騰しない程度に温めて食べてみてください。煮物とはまた違う、野菜本来の旨味が楽しめます。
「一月9千円」の健康美食は、いわゆるプロの常識にとらわれない、自由な発想から生まれる創意工夫の生活術です。もっと詳しく知りたい方は、ぜひ拙書(せっしょ)を読んで参考にしてみてください。[2008/10/30](つづく)
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