安部 そうです。でも、表示についても問題があります。まず「一括表示」。香料や乳化剤等、同じ目的のために使われるのであれば、一括して表示していいと食品衛生法で定められているのです。
例えば、食品の変質や変色を防ぐためにクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマル酸ナトリウムといった添加物を普通4~5種類使うのですが、その場合、「pH調整剤」とだけ表示すればいいのです。これだと、よく分からないカタカナ物質がたくさん並んでいるより印象がいいので、メーカーにとってはありがたい。「香料」「調味料(アミノ酸等)」「乳化剤」「凝固剤」等もそうです。
「香料」は約600種類の添加物の中から、目的の香りを出すために数種類混合して使うのですが、何がどれだけ入っているか、使用するメーカーさえ分からない程です。
「調味料(アミノ酸等)」には、化学調味料のグルタミン酸ナトリウム、DL−アラニン、グリシン等が含まれます。グルタミン酸ナトリウム(化学調味料)と書くと敏感な消費者に嫌がられるので、「調味料(アミノ酸等)」で済めばメーカーには都合がいい。そこでメーカーは一括表示にするために、わざわざ余計な添加物を増やすこともあります。
キャリーオーバーというのは、原材料からそのまま持ち越される添加物のことです。例えば、焼き肉のたれをつくる時、原材料に使うしょうゆに含まれている添加物は表示しなくていいのです。
加工助剤は、加工食品の添加物のうち、食品の完成前に除去されたり中和されたりするもののことです。例えば、生野菜は殺菌剤のプールやpH調整剤のプールに何度もつけますが、これは洗い流されるということで表記されません。
バラ売り及び店内で製造・販売するものも添加物の表示は不要です。トレイに載せて売られているパン、スーパーの店内でつくって売られるお惣菜、持ち帰り弁当などです。
飴や一口サイズのお菓子等、パッケージが小さいものも表示しなくていい。例えば、コーヒーフレッシュは実は牛乳や生クリームからはつくられていません。植物油に水を混ぜ、添加物で白く濁らせ、ミルク風に仕立てたものなのです。それでずいぶん安くできる。でも、大袋には原材料が書いてあっても、個々の容器には書かなくてもいいことになっているのです。
ある幼稚園で、「うちの子には、インスタントラーメンとスナック菓子は一切与えません」というお母さんがいました。でも、子供会の時にスナック菓子が出たら、その子は人を押しのけて食べていたそうです。だれが教えたんだろうというんですね。そこで私はこういう図式を示しました。
インスタントラーメンスープ=スナック菓子=だしの素
このうまみも、それだけでは濃厚すぎて喉を通りません。でも、これにしょうゆパウダーと香辛料を入れるとしょうゆラーメンスープになるんです。とんこつエキス、チキンエキス、香辛料を入れるととんこつラーメンスープになる。
カツオだしの素、昆布だしの素、和風だしの素、お吸い物の素、焼きそばの素、チャーハンの素、雑炊の素も、パウダーや香料が違っているだけで、みんなこの味です。明太子、ちくわ、ハム・ソーセージ、漬物、レトルト食品、冷凍食品、ふりかけ、スナック菓子……、あらゆる加工食品にはこの黄金の3点セットが使われています。
添加物の味に馴らされたご主人も、居酒屋に行くと同じようなものを食べています。安くて簡単で便利できれいで味が濃くて早いというのが、日本人が外食に求めることです。そうすると黄金トリオを使うしかない。
そういう材料は、日本が中国やベトナムで添加物を使ってつくらせている。国産野菜は高くて汚いという。本当は野菜は国産のほうが味があるんだけど、そんなおいしさより、添加物の味のほうがおいしいとみんなが言うから、野菜の形さえあればどこ産でもいい。ゴボウなんか真っ黒でも、漂白して真っ白にしてカラメル色素でゴボウの色に染めて、化学調味料で味を濃くすると、みんなおいしいと言って食べる。そのために、国内で本当にみんなのためを思って、農薬も使わずに地にはいつくばってやっているような人たちは、どんどん消されていくのです。
添加物を摂り続ける人と、そうでない人とどういう差が出るのか。私には因果関係は分かりませんが、幼稚園で見ていても、どういう食事をしているかで、子供たちの遊んでいる状態、あいさつの仕方、ゴミの拾い方等が違います。
どの添加物が精神的な障害を起こすとか、私はそんな難しいことは分かりません。ただ、添加物を多く摂る子と摂らない子は随分違うなと感じるだけです。
そして、食べ物は、お母さんがつくるのに1時間、私が食べるのに5分、というギャップを知っている子は、心の優しい子なんです。その差は明らかにありますね。
添加物は毒性も気になりますが、添加物ができたお陰で、食卓が消え、団欒がなくなり、親子の会話がなくなった。食べ物を大切にしない子が増えたということも大きな問題ではないかなと思います。
その方はパートで3時まで働いていたが、職場では5時まで残ってほしいと言われていた。娘さんが中学生になったので、5時まで働くことにした。それによって月に2万円収入が増えた。ご主人も働いていますから、この2万円は自由に使えるお金なので喜んだ。
ところが、そうなると、いつしか出来合いの食べ物を買ったり、何とかの素を使うことが多くなった。それに何より、中学生の娘が自分より先に帰って自分を待つことがある。以前は娘が帰ってきたら、今日学校で何があった、と会話が弾んだのに、今はあたふたと夕食の準備をして娘とゆっくり話す時間がない。それで悩んでご主人に相談したら、お金よりも子供が大事、今は娘と一緒にいたら、ということで、また3時までに戻してもらったというのです。その頃、私の本を読んだんですね。そして、「お金よりも子供の健康が第一です。それに、味覚が添加物の味に慣らされるのが心配だった」とありました。
それを読んで、この本を書いてよかったなとつくづく思いました。
―― 添加物を心配する前に、まずは自分でちゃんと料理を作ることですね。今日はありがとうございました。(おわり)
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