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第18回全国EM技術交流会・東北大会in七ヶ浜

先月(H26年3月15日)、第18回全国EM技術交流会・東北大会が宮城県の七ヶ浜町の国際村で開催されました。500席の会場に600人あまりの参加者があり、大盛況となりました。もともと七ヶ浜町は農業や漁業などにEMを積極的に活用しており、町の方針としてEM活用の自然農法や環境浄化をすすめていました。

PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。
そのままいけば宮城県の代表的なEMモデル町になるものと期待されていましたが、2011年3月11日の東日本大震災の大津波で沿岸部は壊滅的な被害を受けてしまいました。このような地で全国EM技術交流会を開催することは、かなりの覚悟が必要であり、東北EM普及協会の相澤孝弘会長をはじめ、ご協力いただいた関係者の皆様にあらためて感謝申し上げます。

今大会のテーマは「生きがいのある新しい東北の復興を未来の子どもたちのために」です。青森、秋田、山形の各県にもEMのすばらしい活用事例がありますが、今回は被災地の災害対策や復興にEMがどのようにお役に立てるかという視点からEM活用技術事例集をまとめていただきました。

前回の第17回大会の事例集は、北海道におけるEMの広がりと、その技術的進化の集大成ともいえる内容で、読者の皆さんにも「即戦的な手引き書」として紹介させてもらいましたが、今回の18回の事例集は、災害対策の事例集としては、歴史的に見て、第1級の資料としても活用できるものです。余分があれば是非入手し、後世に活用してもらいたい内容となっています。

1.被災地石巻でEMパワー全開

発表者はEMエコクラブ宮城の及川良市さんです。この活動はEMのことをよく知っていて、日頃からEM活動を行っている人が被災地にいて、外部のEM関係者と協力する流れをつくると奇跡的な力を発揮したという例です。EMの効果はすでに明らかですが、被災の強さや規模が想像を絶する今回のような場合、EMが多量にあれば、かなりの対策ができると思っていても、何もかも流された状況では、EMを入手すること自体、不可能なことです。

幸いなことに、隣接する大崎市には、(公財)自然農法国際研究開発センター東北地区普及所と東北EM普及協会があり、震災直後に「大崎EM支援センター」を立ち上げていました。EM支援センターやU-ネットなどEMボランティアの組織はまず、現地のEM関係者の安否の確認とEM支援の受け入れに対し、どのような準備をすればよいかなどの相談を行い、具体的に支援を行うという対応を行ってきました。


 及川さん(中央)とボランティアのメンバー
基本的には、交通費と弁当代は事務局で負担し、可能なかぎり大量のEMを現地に配布、または、現地で大量の活性液をつくって供給するという態勢を整えました。津波の最大の被災地である石巻には及川さんを中心にEMを日頃から活用されていた方々が無事で、わが身を省みず、悪臭などを含むさまざまな衛生対策に取り組んだ結果、不可能と思われた数々の問題を解決したのです。

事例集には、それらの一連の活動がまとめられており、この情報は今後の災害時の環境問題や衛生対策に対する手引き書となるものです。EMの力は、薬品を散布して終わりというものでなく、その活動が地域に根づいて、他地域の人々との交流や学校の環境学習はもとより、地域の人々の協力態勢をより強固にしてくれます。

今回の石巻のEMパワーはまさにそのモデルとなったばかりでなく、地域の危機管理を含めた、地域に不可欠の社会資産として機能するようになっています。及川さんのこの活動は、石巻の近隣の市町村にも広がり、未来の子どもたちにも大きな希望を与えるものです。

2.震災でEMのすばらしさを知り水田塩害を克服した自然農法

発表者はNPOいしのまき環境ネットの千葉万里子さんと齋藤義樹さんです。石巻環境ネットは平成17年に設立され、EMのさまざまな環境活動を行ってきたという確たる実績があります。千葉さんは農業にまったくの素人でしたが、EMの先達である三浦さん夫妻と齋藤さんの協力で、これまで他人に貸していた津波で塩害を受けた水田に、EMを活用した自然農法にチャレンジしたのです。

素人ほど恐ろしいものはないの例え通り、初年度で高品質の米を、しかもいきなり10aあたり9俵の収穫を上げたのです。プロの自然農法農家でも7俵に達するには10年くらいかかるといわれていますので、津波の際によってきたヘドロや塩分が良質の肥料に変わったとしかいえない状況となっています。


 活性タンクの前で千葉さん(右)と齋藤さん
有機物を多めに入れ(10aあたり2〜4t)、EM活性液を徹底して使い続ければ将来的には15俵以上も可能となりますが、今回の成果で最も大事なことは、EMの活用によって、イネミズゾウムシとカメムシが著しく減ったという朗報です。

カメムシ対策は、登熟期から7〜10日に1回EM活性液を10aあたり50Lくらい原液のまま散布すると著しい効果があり、倒伏防止、登熟の促進、品質の向上、収穫後の稲わらの分解促進などにも効果がありますので、さらに徹底したEM活用を期待しています。また、本事例集の33ページには、これまで何回となく紹介した、仙台市宮城野の鈴木有機農園のことも詳しくまとめられています。近い将来、各地で津波による塩害も想定されますので、その対策となるEM農法に今から取り組んでいくことが重要なポイントであることを忘れてはなりません。

3.十三浜ワカメ復活に活躍したEM団子@A

@の発表者は宮城県漁業協同組合北上町十三浜支所の佐藤清吾さんで、Aは中村歯科の仲村由美子さんです。この活動も仲村さんが歯科医師としてすべて自己責任で、石巻市や北上町でボランティア活動を実施していたときに佐藤さんを紹介され、十三浜地区のワカメ養殖の復興支援に取り組んだとのことです。


 一緒にEM団子をつくった佐藤さん(手前右から5番目)、仲村さん(同3番目)と漁協やボランティアの皆さん
事例集を読むとEMの持つ不思議な縁をつくる力がひしひしと感じられます。EMのことを知らなかった佐藤さんは、仲村さんの確信に満ちたEM支援活動を受け入れた結果、奇跡的な成果が現れたのです。

それらの成果は将来の希望はもとより、地域外の多くの人々との巡り会いを、より強固なものにしています。海の再生については、これまでEMによって引き起こされた愛知県の三河湾や、東京湾の奇跡が再現された結果となっています。その他、気仙沼をはじめ環境浄化にEMを大量に散布した地域の沿岸の養殖や漁業は、すべてかつてないほどの成果を上げるようになりました。

七ヶ浜町の星のり店は、震災前からEMを活用し、その成果を確認していました(事例集38ページ)。このような数々の成功事例をつなぎ合わせてみると、東北の養殖や沿岸漁業の未来像が見えてきます。

4.ロシアから見る震災EMボランティアとロシアのEM活動

発表者はロシア沿海州EMセンターのイワン・ユゴフさんです。10年以上も前に福井の和田森さんからウラジオストクで自然農法を普及したいので指導して欲しいと頼まれ、通訳としてイワンさんを紹介されました。その後、ロシア沿海州でのEM活動は、すべてイワンさんの通訳によって行われました。その結果、イワンさんはEMスピリットに変わり、いつの間にか、EM技術のエキスパートになってしまいました。この技術をロシア全土に広げるべく、ロシアのEM関係者をまとめ、私の原書本の「地球を救う大変革」をロシア語に訳し、ロシアにおけるEMの普及の原点としています。


 大崎EM支援センターにて
その他、ベラルーシとの共同研究の通訳や、ロシアとベラルーシのEM普及の交流などを積極的に進め、沿海州の抱えるさまざまな環境汚染問題をEMで解決した実績もあり、EMに関する国際会議も数回行っています。

そのイワンさんが、2011年の9月に大崎EM支援センターのお世話で、4日間のEMボランティアを体験し、EMの本当の力と総合力を再認識したのです。その後の沿海州のEM活動は、さらに多様化し、高度化していった事例と画期的な研究事例を紹介してくれました。その成果は、日本でも十分に手本になるものであり、また昨年のアムール地区の大洪水に対するEMの活動は、震災ボランティアの体験が十分に生かされています。

5.岩手、宮城、福島における復興支援活動の全体の動き

発表者はEM研究機構の西渕泰さんです。この発表は、EMグループ全体がどのような協力体制を組んで被災地一円にEMによる復興支援を行ったかについてまとめてくれました。すでに述べた、鈴木有機農園や星のり店のことも詳しく報告してくれましたが、最大のポイントは、今もEMによる復興支援活動を続けている福島の放射能対策です。

 南相馬市の試験水田

それらの成果は、過去2回にわたって福島で環境フォーラムを開いて、EMによる放射能汚染対策や、健康を守るためのさまざまな情報を発信していますが、報道を含め、公的な放射能対策は、すべて国の認めたもの以外は、公的に予算化することはできないという法律があります。

EMの情報は、国のしかるべき部署もよく知っていますが、反対論議が出ると、すぐに引っ込んでしまいます。したがって、EMによる除染は、国が認めるまで根気強く、ボランティアの力で進めていく必要があり、その体制も十分に整いつつあります。

おわりに

今大会に注目すべきことがいくつもありました。昨年12月3日にスタートした国会議員の超党派による「有用微生物利活用議員連盟」の高橋比奈子事務局長と、ツルネンさんの後を引き継いだ室井邦彦有機農業議員連盟事務局長が参加されました。高橋さんには、大会であいさつをいただき、室井さんには懇親会でのあいさつと翌日の全国EM普及協会の総会で、5年経過した有機農業推進法の見直しのポイントと今後の展望について詳しく説明いただきました。

この2つの議員連盟は、国会を軸にEMを社会化する両輪のようなものであり、これからも密接に連携し、EMが大きな国民資産になるように、より活発な活動を展開することになっています。

最後、本大会が開催される午前中に、七ヶ浜町の被災地をまわり、また七ヶ浜町でのEMの取り組みについて詳しく説明してもらいました。潜在的にはかなりのものがあり、行政のバックアップも積極的でしたので、農業、水産、人々の健康を連動した東北の未来像が実現できるのではないかと期待しています。

この大会を機会に、七ヶ浜町が東北復興のモデルとなるように、より積極的な支援を行いたいと考えています。

(2014年4月15日)





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