2月26日に福井県越前町朝日多目的ホールで、第16回の全国EM技術交流会が行われました。福井県は田畑正一郎さんを中心に我が国では昭和61年に初めて水田にEMを活用し、多収高品質、雑草対策、不耕起栽培、倒伏防止などなどの成果を上げたEM先進県です。以来、25年を経過しました。花のまちづくりの指導を含めますと、私はその間に20回あまり福井県を訪ねており、全国で最も多く、EMの講演会やイベントが行われた県でもあります。
特に今回の北陸大会の会場となった越前町には合併前の旧宮崎村も含まれており、その宮崎村の成果が越前町全体に広がっています。旧宮崎村の成果は本サイトでも何回も取り上げ、EMの地域振興や活性化のモデルとして紹介し、日本中が宮崎村化すべきという強い主張を繰り返し行ってきました。
参加者は850人余りとなり、会場では多数の立ち見席ができ、福井を中心とする北陸のEM関係者の熱気であふれていました。西川福井県知事も来賓として臨席を賜り、関町長や青木議長をはじめ、町や議会の関係者も終日参加してくださいました。また実行委員長が田中県議であった関係もあり、数名の県議のほかに県関係者も多数参加し、福井県のEMの広がりを強く感じさせる大会ともなりました。久々に元気な木村元宮崎村村長にお会いすることもできました。
ツルネン・マルテイ参議院議員は来賓というよりも長年の当事者として、国会を中心とする様々な情報をお話ししていただき、全国EM普及協会の総会でも講話をいただきました。今大会の圧巻は事例集2011の内容です。この事例集の内容は、この25年間の中で、たゆまずEMに取り組んできた方々の多様なノウハウが蓄積されており、行政関係者の要望に即に対応できる内容になっています。また、新しくEMを始める人にとっても、EMのベテランにとっても、多様なアイデアに結びつく情報源としても、活用できるようになっています。
大規模経営で高品質と作業性を追求した栽培体系
時間の関係で、発表は4名の方々にお願いしました。まず最初に、滋賀県長浜市で水田28haを耕作、そのうちの12haを無農薬、無化学肥料のEMを活用した自然農法を行っている吉田道明さんです。当初から無農薬、無化学肥料にこだわり、運のよさも手伝ってEMの力を知るようになり、EMの可能性に挑戦し、それなりの成果を上げています。小規模の一般的な農家では、このレベルで止まってしまいます。このレベルでは品質のよい米をできるだけ高く売ろうと考えがちですが、吉田さんの企業理念は「安全で美味しいお米をできるだけ多くの方に安く供給する」となっています。吉田農園の「長寿米」は、この企業理念に立って「毎日の健康と長生きを願って」という意味で命名されたものですが、名前だけでなく、吉田さんは平成18年に全国米・食味分析鑑定コンクールの若手農業経営者部門で金賞を受賞しており、確たる裏付けを持っています。
その後、毎日新聞や地元紙でもたびたび取り上げられ、EMを活用した大規模な稲作のオピニオンリーダーとしてのチャレンジが始まっています。琵琶湖のまわりの水田がEMに変われば、琵琶湖をきれいで豊かな湖に変えられると同時に、生物の多様性を守り、多くの人々の健康が守れるという農業のロマンが、今では吉田さんの確信につながっています。技術的には、規模に応じたEMの供給体制と、成績のよくない水田への集中的なEM処理法や表層代かき、などなどの課題もありますが、これも時間の問題といえます。
次世代の若者が実施できる有機栽培
その次の発表は、富山県小矢部市の和田俊信さんの水田の事例です。水田10haで約3haのEM有機栽培を行っていますが、10aあたり540kgの収量を目標に様々なチャレンジを行っています。和田さんは、これまでのEM技術を大規模な水田に応用するため農機具を改良し、田植機や除草機にEM活性液の同時注入法を考案したり、バーチカルハローを使い、有機物の表層処理や株粉砕を行い、EMを併用することで、田植え前までに稲わらや稲株の分解をほぼ完全に行っています。
この方法はコナギやヒエなどの雑草抑制にも効果がありますが、寒冷地では安定化するまでに数年の時間が必要です。そのため、和田さんの当初の対策を含め、チェーンを引っ張る除草機を考案し、成果を上げています。和田さんのこのようなチャレンジも、吉田さん同様の「農業の使命」という高い志に支えられています。後継者も決まり、今後の展開が楽しみです。
品質向上を目指したサトイモの連作障害
3番目に発表いただいたのは、EM関係者の間ではすでに知れ渡っている、サトイモの連作で有名な福井県大野市の山村喜一郎さんです。山村さんの連作は10年を経過しました。サトイモは特に連作が困難な作物で、水稲とのローテーションは7〜8年というのが常識です。3〜4年周期でも運がよければうまくいく場合もありますが、連作障害が発生すると収穫が皆無になるほどの大打撃を受けてしまいます。山村さんは、当初からEMを徹底すれば連作は可能という私のアドバイスを受け入れ、連作を続けています。
数年ならいざ知らず、10年も続けることは、大きな危険と常に隣り合わせということになります。確かに山村さんは、その間にヒヤリとしたことが何度かありますが、そのたびにEM活性液や良質な有機質のボカシの施用で乗り切っています。何故このような冒険的なことを続けているかということです。
それは水田とのローテーションで限界のある大野市のサトイモ産業をさらに発展させたいという強い思いと、大野市全体をEM活用による自然農法にしたいという高い志に支えられているからです。連作障害によるサトイモ産地の衰退は常識とまで言われるようになった今日、山村さんのチャレンジは限界突破として高く評価されます。
地域住民と生ごみリサイクルから環境学習に
最後の発表は、地元越前町の朝日生ごみネットワーク会長の木下美恵子さんです。旧宮崎村の活動をさらに組織的にアクティブに完成度の高い社会的活動に進化させています。
会員183人、2500世帯以上に広がり、学校給食へのEM野菜の提供や川や海の浄化運動や学校でのEM活用などなど、その活動範囲は全地域を網羅しています。その活動の成果は週2回(火、土)に開かれる「あさひ美味市(うまいいち)」に集約されています。それらの活動に町も積極的に協力しており、また行政ではなかなか解決できない無縁社会問題や高齢者を含めた地域活性化など様々な問題を解決し始めています。それもリーダーである木下さんの環境を良くしたい、地域社会を活性化したいという高い志によるものであり、全国EM技術交流会のテーマである「豊かで美しい地球を未来の子どもと孫のために」に即したもので、今後の独創的な発展を期待しています。
以上4名の方々の発表を簡単にコメントしましたが、事例集2011の内容は、すべて高い志と独創性に満ちあふれています。当初の予定よりも参加者が大幅に増えたため、事例集をさらに増刷することになっています。今回の北陸の成果を、より多くの自治体でも活用されることをおすすめします。
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