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土の汚染度は微生物相の反映である

海水活用の試験終了後のコマツナ(肥料不足を起こさない)
<写真1> 海水活用の試験終了後のコマツナ
(肥料不足を起こさない)

写真2 無肥料2年目の花壇(海水EM活性液のみ)
<写真2> 無肥料2年目の花壇
(海水EM活性液のみ)
本連載、第134回「真の自然農法の実現にむけて」で、自然農法の創始者である岡田茂吉師の主張を紹介しました。すなわち、「土を尊び、土をピュア(清浄)にし、その浄化力を高めると、土は肥料の塊となり、作物を育てる熟練工となる」という一文に要約されますが、土の浄化力の低下の最大の原因は、旧来の農法で肥料源として活用されている「下肥(しもごえ)」「家畜の糞尿」「悪臭を発する様々な有機肥料」であり、土を穢(けが)し汚し、病害虫の多発の原因となる。したがって、それらの不浄な資材を使うことを岡田茂吉師は厳しく戒めています。

確かにその通りですが、しかし、完全に腐熟した有機物の肥料効果は、目を見張るものがあります。有機物が腐熟すると、山森の腐葉土のようになり、万能的な力を発揮しますし、臭気のなくなった下肥は最上の液肥となります。

この状況は、岡田説からすれば浄化が完了したものであり、自然の蘇生の理にかなっていることになりますが、その得られる量は元の有機物の1/10〜1/50です。1970〜1980年代、化学肥料や農薬の急激な増大や、その欠陥が明らかになるにつれて、有機物の重要性が再認識されました。また、大型畜産の出現によって、大量の畜産廃棄物が問題とされ、全国の農業試験場で、活用のための試験が行われました。

共通して得られた見解は、「生の有機物は例外なく病害虫を多発し、土壌を劣化させる」というものでした。そのため、生の有機物を施用した場合は、その有機物が十分に分解された後(30〜60日)に作物を植え付けるか、屋根付の堆肥舎で悪臭がなくなるまで十分に腐熟または発酵分解させ、無害にして活用するという現況に辿りついています。

したがって、現在、活用されている堆肥は無害で、肥料効果があるとされていますが千差万別です。その判定には、有機資材をポットに入れ、発芽の早いダイコンやコマツナの種をまいて十分に潅水するという単純な方法で明確な差が出ます。

発芽しない場合(最悪、発芽しても枯死した場合)は、当然のことながら、施用後15〜20日間後に再度植え付ける。健全に発芽生育すれば合格ということになります。市販の有機肥料の大半は、このテストで落ちてしまいますが、岩手コンポストのようにEMで完全発酵熟成したコンポストは、理想的なレベルに達しています。

このような背景を極論すると、有機物にEMが優占すれば、生の有機物をそのまま施用しても良いということになります。この場合も、土にすき込むと有害な微生物に逆転される恐れもありますので、必ず表面に敷いて常にEMを施用し、微生物相を蘇生化するという管理が必要です。

この方法は、不耕起栽培、雑草対策、病害虫抑制にも効果があり、自然発生の有機物は、すべて良質な蘇生力に転換することが可能となります。

とは言っても、従来の農業のベテランは、旧来の農法の罠に嵌(はま)って、牛糞バーク堆肥などをすき込んで、その後にEMを施用すれば良いと考えています。施用する有機物が、岩手コンポストのレベルにあれば特に問題はありませんが、第132回「泥(土)を食べよう」に紹介したように、一般の牛糞バーク入り堆肥等は、必ず土を汚染します。念のため、後日改めて取り上げますが、EMによる微生物相の改善を怠ってはなりません。

EMの良い効果を早く出したいと考え、自分の考えでいろいろ付け加えては失敗している、A農園(仮称)の例を挙げます。私は、都度、このA農園を訪ね是正していますが、今回の波動測定の結果には、その油断が表れています(<表1>参照)。<図1>のように処理された栽培区に極端な差が出たのです。つまり、本人はEM処理した堆肥を使っているから、更に結果が良くなるであろうと考えたのですが、生産物の波動の数値は、その考えが間違っていることを表しています。有害な微生物が優占している土壌は、最悪になるという事例でもあり、岡田茂吉師の「土を穢(けが)すな、土を汚すな」という教えに合致するものです。

このように、長年EMに携わるベテランでさえも陥ることがあるほど、旧来の農法の罠は深刻なのです。

<図1> A農園圃場の施肥量(元肥)
A農園 圃場の施肥量

<表1> 波動測定結果/A農園
  紫大根

日野
菜かぶ

赤人参

黄色
人参

もものすけ
かぶ

大根 ほうれ
んそう
免疫 42 70 56 87 9 11 16
視床
下部
36 68 55 88 6 7 14
副腎
皮質
37 74 53 87 6 8 10
大腸 38 73 53 85 5 5 10
小腸 39 69 54 87 11 10 14
胆嚢 37 72 55 89 6 9 15
肝臓 38 73 56 89 5 5 11
腎臓 35 73 57 87 6 6 16
子宮 35 62 50 70 2 4 11


<参考> EM活用による土壌の健康に関する波動測定結果/アルムの里 塩施用ハウス
第132回 「泥(土)を食べよう」より
  砥部町
一般ミカン畑地
アルムの里
ハウス牛糞
バーク入り
アルムの里
EMで改質後※1
アルムの里
ハウス※2
三重県しんせん
玄米
(スパークファーム)
免疫 9 9 16 117 18
視床
下部
11 5 18 21 19
副腎
皮質
15 4 19 19 18
大腸 18 6 20 19 22
小腸 14 9 18 21 23
胆嚢 6 11 19 20 22
肝臓 2 14 19 21 26
腎臓 9 13 19 21 28
子宮 3 9 18 21 24

※1牛糞バーク入り改質後:5倍EM海水活性液100リットル+1u当り発酵C 50gを活用
※2前回紹介したアルムの里の塩使用のハウス:白菜残渣、炭、廃菌床、EM海水活性液、パワーシールを活用

<測定数値判定>
+18以上・・・非常に高い / +15〜+18・・・高い / +10〜+14・・・通常 / +5〜+9・・・低い / -21〜+4・・・非常に低い


ナレスアン大学授与式 【 追記 】
去る1月25日、タイ国のナレスアン大学から、名誉農学バイオテクノロジー博士号が授与されました。
この機会に、同大学でのEMプロジェクトを発足し、タイ国の中北部のEMの社会化を幅広く進めることになりました。

◆国立ナレスアン大学HP
https://www.nu.ac.th/?p=12980
名誉農学バイオテクノロジー博士号賞状

(2019年2月8日)



PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。

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