土の汚染度は微生物相の反映である
確かにその通りですが、しかし、完全に腐熟した有機物の肥料効果は、目を見張るものがあります。有機物が腐熟すると、山森の腐葉土のようになり、万能的な力を発揮しますし、臭気のなくなった下肥は最上の液肥となります。
この状況は、岡田説からすれば浄化が完了したものであり、自然の蘇生の理にかなっていることになりますが、その得られる量は元の有機物の1/10〜1/50です。1970〜1980年代、化学肥料や農薬の急激な増大や、その欠陥が明らかになるにつれて、有機物の重要性が再認識されました。また、大型畜産の出現によって、大量の畜産廃棄物が問題とされ、全国の農業試験場で、活用のための試験が行われました。
共通して得られた見解は、「生の有機物は例外なく病害虫を多発し、土壌を劣化させる」というものでした。そのため、生の有機物を施用した場合は、その有機物が十分に分解された後(30〜60日)に作物を植え付けるか、屋根付の堆肥舎で悪臭がなくなるまで十分に腐熟または発酵分解させ、無害にして活用するという現況に辿りついています。
したがって、現在、活用されている堆肥は無害で、肥料効果があるとされていますが千差万別です。その判定には、有機資材をポットに入れ、発芽の早いダイコンやコマツナの種をまいて十分に潅水するという単純な方法で明確な差が出ます。
発芽しない場合(最悪、発芽しても枯死した場合)は、当然のことながら、施用後15〜20日間後に再度植え付ける。健全に発芽生育すれば合格ということになります。市販の有機肥料の大半は、このテストで落ちてしまいますが、岩手コンポストのようにEMで完全発酵熟成したコンポストは、理想的なレベルに達しています。
このような背景を極論すると、有機物にEMが優占すれば、生の有機物をそのまま施用しても良いということになります。この場合も、土にすき込むと有害な微生物に逆転される恐れもありますので、必ず表面に敷いて常にEMを施用し、微生物相を蘇生化するという管理が必要です。
この方法は、不耕起栽培、雑草対策、病害虫抑制にも効果があり、自然発生の有機物は、すべて良質な蘇生力に転換することが可能となります。
とは言っても、従来の農業のベテランは、旧来の農法の罠に嵌(はま)って、牛糞バーク堆肥などをすき込んで、その後にEMを施用すれば良いと考えています。施用する有機物が、岩手コンポストのレベルにあれば特に問題はありませんが、第132回「泥(土)を食べよう」に紹介したように、一般の牛糞バーク入り堆肥等は、必ず土を汚染します。念のため、後日改めて取り上げますが、EMによる微生物相の改善を怠ってはなりません。
EMの良い効果を早く出したいと考え、自分の考えでいろいろ付け加えては失敗している、A農園(仮称)の例を挙げます。私は、都度、このA農園を訪ね是正していますが、今回の波動測定の結果には、その油断が表れています(<表1>参照)。<図1>のように処理された栽培区に極端な差が出たのです。つまり、本人はEM処理した堆肥を使っているから、更に結果が良くなるであろうと考えたのですが、生産物の波動の数値は、その考えが間違っていることを表しています。有害な微生物が優占している土壌は、最悪になるという事例でもあり、岡田茂吉師の「土を穢(けが)すな、土を汚すな」という教えに合致するものです。
このように、長年EMに携わるベテランでさえも陥ることがあるほど、旧来の農法の罠は深刻なのです。
<図1> A農園圃場の施肥量(元肥)
日野菜かぶ
黄色人参
もものすけかぶ
※1牛糞バーク入り改質後:5倍EM海水活性液100リットル+1u当り発酵C 50gを活用 ※2前回紹介したアルムの里の塩使用のハウス:白菜残渣、炭、廃菌床、EM海水活性液、パワーシールを活用
<測定数値判定> +18以上・・・非常に高い / +15〜+18・・・高い / +10〜+14・・・通常 / +5〜+9・・・低い / -21〜+4・・・非常に低い
【 追記 】 去る1月25日、タイ国のナレスアン大学から、名誉農学バイオテクノロジー博士号が授与されました。 この機会に、同大学でのEMプロジェクトを発足し、タイ国の中北部のEMの社会化を幅広く進めることになりました。 ◆国立ナレスアン大学HP https://www.nu.ac.th/?p=12980
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