こんにちは、EM研究所の今村です。 第6回は、水田での光合成細菌の働きについてお話しします。 記事の最後では、光合成細菌を野菜や果樹に効かせるコツをご紹介しています。
水田や池などの土壌中には有機物があり、土壌中の微生物によって分解されていきます。 通常、有機物の分解は<図1>のように、『多糖・タンパク質・脂質』→『単糖・アミノ酸・脂肪酸』…と、進み、最終的に『二酸化炭素・酢酸・水素』『メタンガス』といったガスや有機酸に変化していきます。 これらのガスは、イネの根に有害に働き、『秋落ち(初期の生育は良好だったのに収穫時に問題が起こること)』などの原因にもなります。 水田の土壌から、硫化水素やメタンガスが出る原因は「土の中にワラなどの未分解の有機物が腐敗分解しているため」と考えられます。
光合成細菌は、これらの硫化水素やメタンガスを減らす働きを持っています。 また、光合成細菌は有機酸やアルコールも餌として利用するので、メタンになる前の段階でその発生を抑えているものと思われます。(<図2>参照) EM・3は、光合成細菌主体の培養液です。 その効果を(公財)自然農法国際研究開発センターに実験してもらいました。 下の<図3>のように水田の土と水を試験管の中に入れ、一方の試験管に光合成細菌を滅菌したもの、もう一方には、生きている光合成細菌を添加し、中のメタンガス量と上澄みの中の有機酸量を測定してもらいました。 その結果が下の<表1>と<表2>です。 滅菌したEM・3を添加したものは、メタンガスが増加し、有害な有機酸も増加しましたが、EM・3を添加したものについてはいずれも減少し、特に有機酸については、ほんのわずかな数値となりました。
光合成細菌の菌体や分泌物質には、イネの生育に必要なプロリンやスレオニンなどのアミノ酸やウラシル、シトシンといった核酸も含まれていて、これらは、イネの収量を上げることが確認されています。 その他にも、光合成細菌に含まれるビタミンB12やカロチノイドといった物質も有用で、果菜類や果樹などに葉面散布をすると、糖度があがったり、鮮度保持につながったりと効果的に働きます。 ただし、光合成細菌は、硫酸還元菌やアンモニア生成菌といった悪臭の原因となる悪玉菌とも、乳酸菌や酵母といった発酵菌とも共生します。 そのため、光合成細菌の利用には、発酵菌の豊富なEM・1の活性液などの資材との併用をお勧めします。つまり、光合成細菌は使い方次第でよくも悪くもなる諸刀の剣なのですね。