ボカシは、長期熟成させると茶褐色になりますが、仕込んだばかりのものは白いですね。この茶褐色になる現象は、発酵物の中の糖とアミノ酸が反応して起こります。味噌や醤油をつくるときと同じ現象です。この茶褐色の物質は、「メラノイジン」と呼ばれ、抗酸化作用を持つ物質です。この「メラノイジン」をつくるための糖とアミノ酸はどこからくるのかというと、微生物が発酵していく過程で、米ぬかや魚粉、油粕の中のデンプンやタンパク質から作られるのです。
アミノ酸にもいろいろな種類がありますが、『ボカシの中でどんなアミノ酸がどれだけ作られたのか』を調べたのが、『<表1>EMボカシのアミノ酸含量』のグラフです。 黄色は白いボカシ、茶色は褐色に変化したボカシです。すべてのアミノ酸を合計して比較すると、茶褐色に変化したものは、白いものの約3倍近くになります。結果として、茶褐色に変化したボカシは『アミノ酸が高く、抗酸化機能に優れたボカシ』だと言えます。
アミノ酸の種類によって、作物の生育に与える影響が異なります。下の画像は、東京大学大学院農学生命科学研究科、二瓶直登准教授の『アミノ酸が根の姿を変える(現代農業2011年10月号掲載)』から、アミノ酸の違いがイネの根に与える現象の研究結果をお借りしたものです(画像転載使用許諾済)。グルタミン、アラニンというアミノ酸は、根を伸ばす効果が高いようですが、セリン、バリンといった物質は、逆に根の発達を抑制していることが分かります。 そこで、ボカシの中のアラニンとグルタミン酸の成分量を見てみると(<表1>EMボカシのアミノ酸含量』のグラフ参照)他のアミノ酸よりも多く含まれていることが分かります。つまり、褐色のEMボカシは、根の発達を促進するアミノ酸の割合が高く、逆に根の伸長を阻害するようなアミノ酸は少ないと言えます。特に、熟成されたボカシにおいては、アミノ酸含量が高くなるためさらなる効果が期待出来ます。
皆さんもアミノ酸たっぷりのEMボカシを作ってみて下さいね。 最後に、良いボカシをつくるための4つのポイントをご紹介します。
乳酸発酵しやすくpHの下がりがよいのは、水分量40%前後です。材料の米ぬかに15%くらいの水分が含まれているので、添加する水分として、重量の20〜30%程度のEM糖蜜混合希釈液(以下、希釈液)を準備します。 ※ 米ぬか 10kgに対し、希釈液 2〜3L。
夏期などの暖かい時に作製するのがオススメ。 発酵の初期1週間は、30〜35℃で保温しましょう。
EMボカシを作製する2〜3日前に希釈液を準備しておくと、微生物の密度が高くなるので、失敗のリスクが減ります。
EMボカシは、長期間(半年以上)熟成することによって、状態が安定します。 タッパーやプラスチック容器、または厚手のビニール袋に仕込むのがオススメ。 米袋や発砲スチロールは通気性があるため、発酵容器としては不向きです。 ビニール袋もねずみに穴を開けられないように、充分注意して下さい。 空気が入るとカビが発生し、腐敗しやすくなります。 しっかり密閉できる容器で保存しましょう。 それでは、次回もお楽しみに〜! <基本のボカシの作り方はこちら> EMボカシT型の作り方 EMボカシU型の作り方