ある小学校で初めて生ごみを土に混ぜた時、子どもたちは、「こんなもので野菜ができても絶対に食べたくない!」と言っていたんです。でも、その場所に植えたキュウリの苗から、初めてキュウリが実り、それを食べた時、目を丸くして驚きました。 「なに、これ!おいしい!ドレッシングをかけなくともおいしい!」 「でも、魚の頭とか入れたよね」 この時、子どもたちの頭の中で、汚そうな魚の頭と、おいしいキュウリと、自分がつながったのです。
清濁一体
そうです。みんなつながっているから、地球上に要らないものなんて無いんです。 私たちはよく、汚いものなんかどこかへ行ってしまえと思ってしまいますが、その汚そうなものこそが、最高にキレイなものとつながっていたのです。反対に、私たち人間はキレイに見えますが、出すのはウンチやおしっこや垢で、汚そうなものばかりです。でも、それらがあるから、菌が元気になり、土が浄化され、元気でキレイな野菜ができるのです。
公教育の場で、すべての子どもたちに体験してもらうための生ごみリサイクルは、絶対に不快なニオイを出さず、清潔に行う必要があります。だからこれまで説明してきたような方法で、有用微生物(EM)を使って生ごみを発酵させて浄化します。
でも、本当を言うと、生ごみが腐敗してウジが湧いても、2年も置いたら結局、浄化された元気な土に変わるのです。途中の発酵ルートが変わり早くなるだけです。
生ごみを回して、元気野菜を食べる取り組みが常識になったら、次はバイオトイレを園内に設置して、腐敗臭を出さない発酵分解で、自分たちのウンチとおしっこを堆肥や液肥にして回して、飛び切り元気な野菜をつくって食べる取り組みを始めたいものです。 どこかやりたい保育園・幼稚園があったら連絡をお待ちしています。
みんな回ってひとつ
地球上に生きていた”いのち”は、いつか死ぬと必ず大地に戻り、そこから新たな”いのち”につながっていきます。それを体験することによって、頭でなく体で理解した小学生は素直に行動に移してくれます。そんな例を報告します。
生ごみリサイクルを体験した小学4年生の教室で、掃除の時間に先生がトンボの死骸を見つけました。いのちの循環を教えた先生ですが、何気なく、「これもごみに捨てて」と言いました。でも、体で理解している子どもはすごいです。 「先生、これ土に戻したら、また元気な野菜になるんだよ」と言って、土に戻したのです。
国の食育推進の大きな柱としても「教育ファーム」の普及が図られていて、教育現場での農業体験の必要性が理解され始めています。そして多くの小学校でサツマイモを育てて食べる体験が行われています。サツマイモを収穫したら、芋づるが残ります。先生はこれは要らないからと、ごみ袋に入れて捨てようとしました。それを見つけた小学生は、「どうして捨てるの?畑の菌ちゃんはお腹を空かせて待っているんだよ」と声を上げました。言われた先生は、なるほどそうだったと思って、子どもたちと一緒に畑に混ぜました。先生も子どもたちの感受性の高さに脱帽です。農業体験に、いのちの循環体験という視点を取り入れて取り組むと、はるかに教育的効果が上がることを実感したひとコマでした。
バイキンマンが時々悪さをしないとアンパンマンは強くなれないし、腸内には善玉菌だけでなく悪玉菌も必要なことが分かっています。雑菌との遭遇が少ない清潔生活は、人の免疫システムを弱体化させます。雑草があるから朝露などの溢泌(いっぴつ)により土壌中に可溶化ミネラルを供給し、死んでたくさんの微生物のエサになってくれます。人間の浅知恵で軽はずみに処分してはいけない気がします。
でも、現実の世の中は反対方向にまっしぐらです。「テロは殺してしまえ!雑草は要らないから枯らしてしまえ!」抗菌靴下に抗菌まな板。テレビをつけたら、「じょきん、除菌」の連呼。何でも殺して自分だけ生き残れるのでしょうか?
これはとんでもない大きな勘違いだと思うのです。取り返しがつかなくなる前に、もう一度早く地球とのきずなを取り戻して欲しい。そのためにも、生ごみリサイクル元気野菜づくりを本気で楽しく普及しています。私も、あなたも、こうして地球が生かしてくれている以上、何か役割があって生きているのだと思います。
「みんなに伝えて、腐海が生まれた訳を!虫は世界を守ってるって」 風の谷のナウシカも、虫の大切な役割を気づきました。
例えば、インフルエンザってどうして存在するのだろう?口蹄疫は?ガンは?
この生ごみリサイクル元気野菜づくりの体験活動は、真の意味での循環型共生社会へ、1人ひとりが移行するための入り口になる気がします。そして、案外幼児の方がすんなりと入りやすいものかも知れません。
これまでの連載で一通り説明できました。ぜひ、近くの子どもや幼児たちと一緒に、生ごみを飛び切り元気な野菜に変身させて、子どもたちと一緒に、子どもの心になって感動体験されると、とっても楽しいですよ。
雑草は土を肥やし、野菜を活かす
ところで、いのちの循環による元気野菜づくりは、材料は生ごみでなくても、大量の生雑草をすき込んでも、ミネラル豊富な野菜が育ちます。その理由としては以下のことが考えられます。
生雑草を大量投入することで、その微生物が爆発的に増えます。この微生物が根から植物に吸収されることで、植物は生きるために必要な微量ミネラルをバランスよく確保しやすくなるのではないかと考えられます。
理由はともかくグラフ(右上のグラフ)を見ていただくと分かるように、雑草栽培ニンジンは、普通栽培に比べカルシウムや亜鉛の含有量が2倍以上になっています。農薬や化学肥料を減らしただけの特別栽培ニンジンとは、比較になりません。
雑草の有効性に気づいたら、ごみとして燃やすなんてもったいない! 学校の掃除で出る雑草を学校の野菜づくりに有効利用したり、地域清掃や公園管理で発生した大量の雑草があれば、有機農業に積極的に利用できますね。
イベント詳細やその他の行事など、下記をご覧ください。 http://www13.ocn.ne.jp/~k.nakao/
よしだ・としみち NPO法人大地といのちの会理事長。1959年、長崎市生まれ。九州大学農学部大学院修士課程修了後、長崎県の農業改良普及員に。96年、県庁を辞め、有機農家として新規参入。99年、佐世保市を拠点に「大地といのちの会」を結成し、九州を拠点に生ごみリサイクル元気野菜作りと元気人間作りの旋風を巻き起こしている。2007年、同会が総務大臣表彰(地域振興部門)を受賞。2009年、食育推進ボランティア表彰(内閣府特命担当大臣表彰)。長崎県環境アドバイザー。主な著書は「いのち輝く元気野菜のひみつ」「生ごみ先生のおいしい食育」「まるごといただきます」など。