自然の循環のしくみを面白おかしく解き明かしてくれる生ごみ先生こと吉田俊道さんの新刊本「元気野菜づくり」超入門。
「土に入れた生ごみがどうして消えるの?」 「そこから育った野菜はなぜおいしいの?」 「それを食べるとどうして元気になるの?」
完全版と銘打つだけあって、これらの疑問にすべて、やさしい言葉で答えてくれる。それも、ここ20年に亘る実践で積み上げられた生ごみリサイクルの経験から、有機野菜づくりの理論と方法、健康になる食べ方まで科学的に導いているので、誰もがなるほどと腑に落ちる。しかも、いのちの源である土からの視点が、新鮮で画期的な現代版食養生本といってもよいかもしれない。
なによりも捨ててしまう野菜の皮や成長点とよぶ根元や茎に生命力が溢れているという考察は、「生ごみ」は単なる「ごみ」ではなく土を豊かにする有機物であるという新しい価値を与えた功績はとても大きい。さらに土の中で微生物と野菜がしっかりつながることで、微生物の作り出す生理活性物質(菌ちゃんパワー)が野菜に伝わり、より生命力あふれる野菜が育つ。
「きたなそうな生ごみから一番きれいで元気な野菜を育てることができた時、子どもたちは、地球のいのちの循環を肌で感じ、自分は食べ物のいのちに支えられていること、自分は食べ物であり、地球であることを感じる。食べ物への感謝の気持ちと、食を本気で変える意思を、子どもたちは湧き上がらせる」と吉田さんはいう。
土があるところどこでも、草や生ごみと発酵を進める微生物資材として米ぬかボカシ(あれば、EMボカシ)を加え、生ごみが完全に消えてから種まきや苗の植え付けを行うだけでよい。初心者でもコツさえつかめば、無農薬で虫がほとんど来ない、切ってもなかなか腐らない野菜ができる。吉田さん自身も、子どもたちが育てた野菜から学んだというから、面白い。
また、吉田さんのもうひとつの活動は、子どもたちにいのちをいただく食生活を体験させる具体的な食改善改善プログラムをつくり、4週間実践するだけで、体質を改善させるというもの。体温35度台の子どもたちの多くが36度台に上がり、集中力、イライラが改善したり、おなかの調子が良くなり、風邪をひかなくなるなど、驚くほどの変化を先生や生徒や保護者が実感している。
いのちとは何か?いのちの実態とはなにか?の答えは、まだわからないが、微生物パワーとつながることだけはまちがいなく、よい方向に循環させれば自然も人間も健康になれる。自分で野菜をつくり食べていくのだから、誰でも一人でもできる。
「ひとりひとりの意識改革が、社会全体を変えていく」という吉田さんの信念はゆるぎない。食育にとどまらず、いのちや未来を大切に考えて行動する仲間(グリーンコンシューマー)にお医者さん、保育園や学校の先生、料理家、研究者が加わり太く大きくなっていることにとても励まされる。
◆連載『吉田俊道さんの生ごみマジック,元気野菜づくりと元気人間づくり』 https://www.ecopure.info/oldweb/rensai/genki/genki201.html
<吉田俊道さんプロフィール> NPO法人大地といのちの会理事長 菌ちゃんファーム園主 長崎県環境アドバイサー 1977 九州大学農学部入学 1986 同大学院修士課程修了、農業改良普及員として長崎県に就職 1996 有機農業に新規参入 1999 「大地といのちの会」結成(代表) 全国で菌ちゃん野菜づくりの講習会など精力的に行う http://daititoinotinokai.web.fc2.com/