「有機の野菜」とはどんなものかをズバリ教えてくれるのが、本書である。旬に合わせたレシピつき野菜エッセイと写真集とでもいうのか、野菜をつくる楽しさもそこに溢れている。収穫したカブを土を落としてかぶりつき、そのやさしい美味しさに感動する一方で、甘いカブを無農薬でつくるのは難しく、虫食いに悩んだりもする。畑の青いエンドウや黄色いズッキーニ、掘り当てた小判のようなジャガイモが目を楽しませてくれる。
田中さんはフランス料理店で5年間修行し、有機農家で1年の研修を経て有機農業者と結婚。畑の野菜で家族のために食卓を調えてきた。野菜の持ち味を生かしたレシピは、専門のフレンチのワザを用いおしゃれな一品から、子育ての中から生まれた手早いものまでとバラエティーに富む。毎日続く旬の野菜を、目先をかえて食卓に並べている様子が目に浮かぶ。野菜の性質に合わせた調理法の解説の他に、品種のことや保存の知恵など、心憎い配慮がされている。