EMによる国づくりを語る比嘉教授

2日間8時間のセミナー
11月3〜4日、比嘉照夫名桜大学教授を迎え、「EMの未来を展望する比嘉セミナー」(NPO法人関東EM普及協会主催)が、栃木県伊香保温泉で開催されました。本来、このセミナーは3月14日に開催される予定でしたが、東日本大震災で延期となっていたものです。開講にあたり、同協会理事長の久森謙二さんが、福島原子力発電所の事故により子どもたちに夢のある未来を渡せなくなった痛恨の思いを語り、「不安と混乱の中にあるが、大人としてささやかな責任を果たすためにどうすればよいのか未来を展望したい」と挨拶しました。有機農業、自然農法、EMという3つの切り口に、有機農業推進議員連盟事務局長のツルネン・マルテイ参議院議員をはじめ、天野紀宜自然農法国際研究開発センター理事長、比嘉照夫教授が講演しました。

主催者の関東EM普及協会は、神奈川、埼京、茨城、山梨、栃木、群馬、千葉の団体のネットワークで、平成6年に結成。首都圏で農業から環境教育まで地道な活動を続け、各地で開催するEM基礎講座には13年間で2172名が受講しました。EMに習熟した指導者の育成にも力を注ぎ、EMエコインストラクター取得者は58名、EMエコアドバイサー取得者は82名を数えています。今回のセミナーには、EMインストラクターなど約170人が参加しました。講演内容は以下の通り。

講演1 「日本の有機農業政策の未来」
参議院議員 ツルネン・マルテイ


自然の警告に耳を傾けてとツルネン・マルテイ議員
NPO法人MOA自然農法文化事業団がまとめた有機農業基礎データによると、全国の有機JAS認定農家数は7865戸、有機JAS認定をとらないが有機農法あるいは自然農法を実施している農家数は3815戸で、あわせて1,2000戸。国内における有機農業実施ほ場の面積は、 有機JAS認定ほ場9000ha、それ以外のほ場7300haをあわせて計16,300ha で日本の全農地460万haの0.35パーセントになっている。また、有機農産物の販売先は、直売所や宅配など消費者との提携を中心に、小売、レストラン、JAなど多様な販売形態をもつ。

有機JAS認定を取らない理由としては、@認定料が高い、A申請が面倒、B取らなくても販売できる、C取るメリットがないなど、制度上の問題と、取得するメリットがないとの2つの意見に分かれた。今後、こうした有機農家の声を反映して有機JAS認定制度を見直していきたい。

2006年に有機農業推進法が制定され、モデルタウン、全国セミナーの実施などが行われてきたが、平成23年より地球温暖化防止対策として環境保全型農業直接支払い制度を開始し、エコファーマーや有機農家も含む7912件、農地面積にして2万haが申請を行った。補助金額は、10aあたり8000円(国4000円、市町村4000円)。23年度の予算額は20億円、24年度は30億円となっている。

一方NHK調べによると、家庭菜園を行ういわゆる「週末ファーマー」は全国で200万人。その多くは、農薬、化学肥料を極力使わない栽培を望んでいると思われる。福島第1原子力発電事故を教訓にして、これからは自然に沿った政策、ひいては自然に従う生き方がテーマとなる。自然に従う生き方を教えてくれる有機農業を広めていくことが、国の未来を拓いていくと確信している。

講演2「自然農法の未来」新しい時代のさきがけに
自然農法国際研究開発センター理事長 天野紀宜


自然農法で地域自給をと話す天野理事長
農地の放射能対策として、竃挙cアメニティ、福島県公的機関、福島大学と連携して、5月から農地に対する放射能汚染についての調査を行っている。中間報告では、2回耕転しEM堆肥を使った農地は、耕転しない農地よりも地表の放射線量率は1/3から1/2減少した。また、作物の放射性セシウムを分析したところ、例えば伊達市のI農家では地表の放射線量が2500ベクレル/kg以上の土壌から採れたエダマメ、トウモロコシは、不検出という結果であった。エダマメの放射性物質の部位別存在量についての分析では、セシウムについては葉に留まり、実への移行は少ない。こうしたことから、土の機能が発揮できる農地の作物は放射性物質を吸収されにくいと推察される。

放射能汚染や津波による塩害など、大震災で痛めつけられた土壌を自然農法で蘇生することができるかが、私たちに与えられた使命であり、できるならば今まで以上に豊かな東北、豊かな日本をつくりあげたい。そのためには、微生物を底辺にする生態系の復活を至急行わなくてはならない。その方法は長年EM自然農法を実施している篤農家が熟知している。土の機能を十分発揮できる土を育てるための有機物とEMの活用をはかり、農地における除染の発想の転換をはかることが必要である。

同時に東日本大震災を機に、見えるものから見えないものを大切にする価値観の転換を図り、地域自給を基盤に自然の偉大さ、生命の尊さを大切にする社会をつくりあげたい。自然農法の5つの条件は、@人間の健康を維持増進する食べ物を生産する、A生産者と消費者双方に経済的・精神的なメリットがある、B誰でも実行でき、かつ永続性がある、C自然を尊重し環境保全に責任を持つ、D人口の増大に伴う食料生産に責任を持つことであり、現在の自然農法の技術で十分に対応できる。自然農法の未来こそ、世界を幸福にする鍵である。

講演 「有用微生物の未来」 講座T・U
EMによる国づくり
名桜大学教授・琉球大学名誉教授 比嘉照夫


当日販売された「シントロピーの法則」は完売
EMは、土壌改良、病虫害抑制、有機物の分解、窒素固定、リン溶解などの農業に有用と思われる2000余の微生物の中から、安全性が確認された5科10属81種の嫌気性と好気性の複数の微生物を混合体としてスタートし、1980年に、この原型が偶然の産物として出来上がった。当時の常識として同一溶液の中に嫌気性と好気性の複数の微生物を共存させることは不可能という考えが根強く、しかもEMの最終的な安定溶液のpHが3.5以下であったため、ほとんどの専門家には「あり得ない話」としてまったく相手にされなかった。

EMの機能性は、多様な抗酸化作用と非イオン化作用と触媒的にエネルギーを賦与する3次元のエネルギー転換機能に由来するものである。結果的には、超電導と半導体の組み合わせで起こる光合成の原理と同じ現象が起こっており、エントロピー(秩序の乱れ)を元に戻し、秩序を強化する現象が見られる。このような現象をシントロピーと称しており、一見すると蘇生的な現象である。

エントロピーの増大のプロセスを一般的な物質で見ると、各種の劣壊(非秩序化)を伴う、フリーラジカルを一般の物質で見ると、陽イオンの増大および有害な二次元波動(有害電磁波)の増大と表裏一体のものになっている。また、有害な化学物質の汚染や放射性物質の汚染は、エントロピーの増大の極限的な側面を有するが、EMの機能性を高めると、化学物質の有害性や放射能汚染などが消失することも明らかになっている。

この成果は、現在、東京電力福島第1原子力発電所の事故による放射能対策や内部被曝対策にも活用され始めているが、いずれもチェルノブイリの被災国になったベラルーシの国立放射線生物研究所との共同研究による成果である。

このような、従来の常識では信じられない現象は、EMの主要菌の中核をなす光合成細菌によるものである。光合成細菌は、嫌気性で地球に酸素がなかった時代に主要な役割を果たした細菌で、メタンなどの炭化水素やアンモニア、硫化水素などの還元性の水素を使い、酸素を発生しない不完全光合成※1を行い、同時にほかの微生物と連動し、アミノ酸を合成する能力を持つ生産者的微生物である。

※1 不完全光合成
一般の光合成は水素源を水から得ているため酸素を発生する。このような光合成を完全光合成と称している。一方、光合成細菌はメタン、アンモニアなどについている水素を使って光合成を行い、酸素を発生しない。このような光合成を不完全光合成と称している。

その光合成細菌を粘土に混和し、1200度以上の高温でセラミックス化しても、その情報は失活せず、そのセラミックから生きた状態で再度光合成細菌を取り出すことができる超スーパー菌である。さらに重要なことは、紫外線やガンマ線を当てると増殖されるという性質をもっている。この超スーパー菌である光合成細菌は、自然界では、水田やドブの底などに棲む典型的な嫌気性細菌で、酸素が大嫌いである。このような性質をもつ光合成細菌を大量に培養して土壌に散布しても、酸素が普通の状態で存在すれば、たちまちにして失活し、他の好気性微生物の基質(エサ)となって、まったく増えないという泣き所がある。とは言え、その結果、土壌中の有用な放線菌が増えるため、あながち無駄ではないが、光合成細菌の実用化の壁となっていた。


顕微鏡で見る光合成細菌
その上、光合成細菌は、自然界では単独で存在することはなく、必ず、他の微生物と伴随的または共生的に存在し、その大半は還元物質をつくる腐敗菌であり、純粋に培養している場合でも、わずかな飛び込み菌によってたちまち腐敗臭を発し、その本質的な力を失ってしまう。ところがEMに活用されている乳酸菌や酵母は、腐敗菌が増殖できないpH3.5以下で光合成細菌と伴随的な共生関係を形成すると同時に、光合成細菌をほかの微生物から守る役割を果たしている。

このような安定状態を保つことで、光合成細菌は嫌気、好気を問わず、また生命体、非生命体を問わず、励起されたエネルギー※2の賦与が行われ、シントロピー(蘇生・秩序化)現象が現れる仕組みとなり、EM1号がその基本型となっている。

※2 励起されたエネルギー
エネルギーには熱となって消えていくタイプと、触媒的な化学反応などを引き起こし物質に取り込まれて機能的に作用するタイプがある。後者のタイプを励起されたエネルギーと称している。

人間には、すべての生物を犠牲にせず保護する義務があるのは言うまでもない。そのためには自然に学ぶこと。地球の進化と成長の原動力は、EMのような微生物であることを再認識して、単に悪環境を浄化するだけではなく、さらに資源化して、自己矛盾のない社会をつくりあげる。東日本大震災の津波被害や原発事故による放射能汚染問題も、EM技術のような安全でローコスト、ハイクオリティ、持続可能な方法をもって解決できる。大震災は不幸なことであったが、EMにとっては最終試験に合格したという思いでいる。EMが未来を切り拓く技術として、さらに生活化していくことを切に望みたい。

2011年12月16日


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