パネルディスカッション第2部「EM技術による放射能汚染対策」にパネリストとして参加したベラルーシ国立科学アカデミー放射線生物学研究所のニキティン博士は、「EMを散布すると、放射性物質が農作物へ移行することが抑制され、特に放射性ストロンチウムに対して効果が大きかった」とチェルノブイリ原発立ち入り禁止区域付近で実施された研究の成果を報告し、「この研究過程で得られた経験は、必ず福島に役立つ」と説きました。
今回のフォーラムは、東日本大震災後国内に広がる不安と絶望感の中で、“為す術があるよ”と具体例を掲げて今後のEM活動の方向性を示しました。
日常的に使うEMだから、災害時に大活躍
フォーラムは、医療法人照甦会・沖縄照甦クリニック杉本一朗院長による基調講演「日本という国で健康を維持していくために」に始まり、続いて事例発表@「EMでエコ家事ライフ〜ハウスキーパーはアースキーパー」=高坂早苗さん(「重曹・酢・EMでエコ家事ライフ」著者)、A「菌ちゃんありがとう!〜子どもと一緒に生ごみリサイクル元気野菜づくり」=吉田俊道さん(NPO法人「大地といのちの会」理事長)がありました。
杉本院長は、医療に携わる立場で「日本のMRIおよびCTスキャンの保有率は先進諸国平均の4倍で、医療被曝は世界平均の5倍強で世界一の被爆国である」と指摘、「アスベスト、水俣病など過去の公害の歴史から日本人は学んでいない」と語尾を強めました。そして、「放射線を浴びると体の中で細胞膜やDNAが傷つき障害を起こすと考えられている。また、体の中の水分子と反応して発生した活性酸素による間接的な酸化障害が起きる。この2つの障害に対して、自分たちの持っている自己修復能力で立ち向かわなければならない。活性酸素に対して抗酸化力で立ち向かわなければならない。今後の放射能対策として、@放射線量の高い場所へは行かない、A除染にEMは有効、BEM栽培農産物を摂る、Cミネラル不足にならない食生活をする」と結びました。
WEBエコピュア連載「元気野菜づくりと元気人間づくり」でもお馴染みの吉田さんは、ステージ狭しと全身を使ったパフォーマンスで“菌ちゃん”を表現し、会場を魅了しました。生ごみリサイクルに取り組んでいる保育園や幼稚園では、児童たちの言動がやさしくなっていると言います。「汚い物が、キレイな物につながっていることは、教えることではなく体験で理解すること」「生き物は、小さいときに適当な試練を与えると強くなる」など含蓄に富んだ例えが多くありました。
休憩をはさんで、パネルディスカッションが第1部と第2部に分かれて行われました。第1部は「東日本大震災津波被災地でのEM活用」をテーマに、被災地で悪臭対策や塩害対策に活躍する足利英紀さん(宮城県・三陸EM研究会代表)、菅原萬一さん(岩手県・岩手コンポスト株式会社代表取締役専務)、平野勝洋さん(宮城県・有限会社ひらの代表取締役)が登壇しました。
3人の中で唯一被災者でもある足利さんは、「すべてを一瞬にして失いましたが、こんな時こそEMが必要とされている使命感で立ち上がり、甦ることができました」と語り、被災地気仙沼市で展開する「EM100万トン浄化大作戦」をパワーポイントで紹介しました。会場を埋めた大半の人たちは被災地から遠い沖縄県民で、被災当事者が説明する現場の映像に目を見張っていました。
菅原さん、平野さんはEMボランティアとして被災地へ駆けつけ、機動力を駆使してEM活性液を散布、水産廃棄物の処理や悪臭対策に効果を上げました。特に、海水とヘドロにまみれた水田では、「秋の収穫には、たわわに実った稲の刈りとりが行われました」と生産者と協力して行ったEMの塩害対策効果を報告しました。
「EMは放射性物質抑制に効果」―ベラルーシのニキティン博士が発表
幕田さんは、地元福島市で取り組んでいるEMオーガアグリシステムが扱う農産物からは放射性物質が検出されないことを実験データーを基に説明、「風評被害を含め、現実は非常に厳しいが、福島への皆さんからのエールを糧に何年か後には立派な農業ができるようになったとよい報告をしたい」と前向きに力強く宣言しました。
さらに、「ベラルーシは福島と似た経験をしているので、この問題は簡単に解決できないことが理解し合えます。EMは哲学です。人間が協力し合って、お互いを支える思想は大事です。ベラルーシと日本の心は繋がっています」と呼びかけました。
野呂さんは、ベラルーシの子どもたちからのメッセージ「“私たちは生き残った。だから、あなたたちも!!”」を伝え、「日本で保養した子どもたちは、他の国で保養したこどもたちより放射線量が下がっているのです」「福島へEM活性液を送ってください!!」と訴えました。
比嘉教授は総括・講評で「人間がつくり出した一番やっかいな放射性物質。環境問題を解決するのは放射能問題を解決しないと本当の解決にはならない。EM技術で解決できることが分かった。息の長い取り組みになるが、EMグループ挙げて取り組んでいく」「EM活動の原点は自己責任で社会貢献認識であって、人生の喜びや楽しみを見つけ、つくり出していくことにある。生涯病気にならないためには、子どもの時代から微生物に親しんで得心することにある」と話しました。
この後ホテルコスタビスタで行われた懇親会で北中城村の新垣邦男村長は、「EMホテルが再建したおかげで村が活性化しました。EM活性液を村民に配って、村の特産品であるハネギの復元を試みています」と挨拶。また、ロシア・沿海州のEMセンターから参加したバレンケナ女史は、「ロシアでは畜産業と農業にEM使用が許可されました。現在、環境や水質浄化に許可をもらおうことを進めています」とアピールしました。
EM農法のモデル農場「サンシャインファーム」視察
翌20日は、EM研究機構の直営農場「サンシャインファーム」を視察、約200人が2班に分かれて農場長の大城盛朝さんから説明を受けました。同農場(面積80アール・栽培面積45アール)は今年4月に開墾したばかりですが、比嘉教授は「この農場の成果は北中城村全体をEM化する拠点になります。収穫物は、ホテルの食材になり、ホテルの調理残さや生ごみは堆肥として農場に活用することで完全な循環をめざしている」と語り、満面の笑顔で参加者からの質問に答えていました。
「EMフォーラム2011」第2部パネルディスカッションで発表されたベラルーシ国立放射線生物学研究所での研究成果(当日英語で発表された内容を、日本語に訳したものを以下に掲載します)
ニキティン博士は、ベラルーシ国立科学アカデミーに所属。同アカデミー放射線生物学研究所・放射線生物学研究室長。2004年にベラルーシの森林研究所にて農業分野の博士号取得。専門は、ポリッシ地域(ベラルーシの南部)における生物学的生産性、森林生態系における生物化学的循環を研究。大気、水、土壌、植物や動物などの異なる生態系における人工放射性核種の挙動に関する研究に携わっている。また、80報以上の科学論文を発表している。
Talk manuscript by Dr. Nikitin 発表原稿より
ベラルーシ共和国ベラルーシ科学アカデミー放射線生物学研究所はチェルノブイリ原発事故の影響によって生じた問題を解決するために1987年に創立されました。放射線生物学研究所は放射線生物学や放射線生態学分野の科学的そして実用的な研究の幅広い実績を持つ研究機関です。主な研究テーマの一つとして、放射性核種の食物連鎖への移行を減らし、摂取による人体への放射性核種の蓄積を最小限にすることが挙げられます。
土壌の肥沃度が上がると放射性核種の植物への移行率が下がることが知られています。伝統的に農業放射線学では放射性核種の植物への移行を抑制するために石灰の散布、大量のカリウム肥料やリン酸肥料を施用することを奨励しています(カルシウムはストロンチウムと類似性があり、カリウムはセシウムと類似性があります)。しかしながら、これらの資材の大量使用は以下のような短所があることが明らかになってきました。
大量の無機質肥料(化学肥料)の使用は農業生産コストを大幅に上昇させます。
石灰の土壌への散布やその他の伝統的な方法ではストロンチウム90の農産物への移行を十分に下げることはできません。現在のベラルーシではストロンチウム90による内部被曝量の方がセシウム137による内部被曝量より大きくなっています。
無機質肥料の大量使用により、カリウム40やウラン同位体及びウラン238の崩壊によって生じる娘核種等の天然放射性核種が農作物を通して人体に入り、余計な内部被曝を生みだしています。これら天然放射性核種の影響は「天然」ということで規制対象になっていません。しかしながら、いくつかの例では、農作物への移行について予防的措置が取られているセシウム137やストロンチウム90より大きな体内被曝を起こしています。
同時に腐植物質(フミン物質)の土壌への利用が放射性核種の植物への移行を抑制し、より清潔な作物を育てるのに役に立つことが知られています。しかし市販されている腐植物質は高価です。
EM研究機構との協力により、放射線生物学研究所では先代のコノピリィヤ所長の元、研究チームがベラルーシの環境条件下における有用微生物群(EM1)の作物や畜産分野の生産性に対する有効性試験、さらには放射性物質で汚染された土地における農業への有用微生物(EM)技術の可能性を評価するための研究を開始し、今日まで継続してきました。
これまでに得られた研究成果をまとめると興味深い結論が得られます。すなわち、汚染度がより高い場所ほど有用微生物群(EM1)の放射性核種の作物への移行を抑制する効果がより大きかったのです。
<スライド2> 左のグラフは有用微生物群(EM1)の散布によりマメ類とトウモロコシでストロンチウム90の移行が抑制されたことを示しています。 右のグラフはニワトリの飲料水に有用微生物群(EM1)を加えることにより、肉の量が増え、体内のセシウム137が45%減少したことを示しています。
この実験は、チェルノブイリ原発立入禁止区域で行いました。有用微生物群(EM1)を活用することで、国内・国際基準を満たす野菜の栽培が可能でした。
残念ながら、福島第一原発事故はチェルノブイリ原発事故に次ぐ世界で2番目の大きな事故です。日本の広大な面積が放射性物質で汚染されてしまいました。
チェルノブイリ原発事故で生じた問題に対する対策を研究する過程で得られた経験は、必ずや福島のために役立つことと思います。放射線生物学研究所には放射線生物学や放射線生態学の研究を行うため経験豊富な優秀なスタッフがいます。私たちの経験と知識を日本の皆さんと喜んで共有させて頂きます。 ありがとうございます。