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土と平和の祭典2010
種まき大作戦・有機で耕す
見えてきた小さな光を大切に

10月17日、東京・日比谷公園で「土と平和の祭典2010」(主催・種まき大作戦実行員会 共催・NPO法人全国有機農業推進協議会)が行なわれた。このイベントは、全国各地で行なった大豆の収穫祭として始まり、今年で4回目。実行委員長は、千葉県鴨川市で有機農業を行なう歌手のYAEこと藤本八重さん。エコロジスト、有機農家、マクロビオテック料理研究家などを巻き込み、オーガニックの食あり、農業と平和のトークあり、人気歌手のライブありで、世代を超えてスローライフ志向の人たちの心をとらえた。

全国から有機農家がそれぞれの作物や加工品を持ち寄ったファーマーズマーケットや、「はじめる自給!チャレンジ」をテーマにしたお米、お味噌、自然酒、地ビールなどが並ぶフードコーナーが人気を呼んだ。また、会場内のごみは回収せず、マイバッグとマイ食器持参。太陽光発電機、ソーラーパネルを纏ったトラックを使用するなど、徹底したクリーンでエコなイベントとなった。

今年は、金子美登さん(NPO法人全国有機農業推進協議会理事長/霜里農場代表)が基調講演を行い、22年かけてつくりあげた有機の集落づくりへの経験を語った。午前は小音楽堂で新規就農したフレッシュな7人の若手有機農家が、午後は有機農業をひっぱるエネルギッシュな有機農家4人がステージにあがり、自分たちの暮らし、農業への想いを参加者に語りかけた。

土と平和の有機農業セミナー
なぜ、僕たちは
有機農業を選んだか

全国の新規就農者と後継者が、農業の世界の入り口に立ったばかりの心境を語った。北海道せたの町の富樫一仁さん(NPO法人秀明自然農法ネットワーク)は、自然農法の農産物を食べることでアトピーを克服したことから、40歳を超えて農業に転職。人が健康になる農産物を栽培するという使命感を強く訴えた。

また、神奈川県愛川町で就農した千葉康伸さん(写真・左)は33歳。8年間の東京でのサラリーマンを辞め、高知県の土佐自然塾で山下一穂塾長から有機農業の技術を学んだ。「自分の働きがなぜお金になるのかわからない都会の暮らしから、大地に立ち自分の手で生きる糧を得る暮らしへと変わり、今は一日一日がとても有意義だ」と心境を語った。

友人が自殺したことからさまざまな心の葛藤の末に実家の農業を継ぐことになった千葉県匝瑳市(そうさし)の佐藤真吾さんは20代。財団法人自然農法国際開発センターの農業試験場(松本市)で研修し、自然農法の考え方や技術を学んで米づくりに励んでいると話した。武田泰斗さん(花咲農園・秋田)、小野寺紀允さん(庄内協同ファーム・山形)、関徹さん(いなほ新潟・新潟)、松尾康憲さん(長崎有機農業研究会・長崎)も20~30代で、それぞれ の想いを率直に語った。

代表世話人で歌手の加藤登紀子さん(写真・右 左は、金子さん)は、「農の世界に入ってくる若者は劇的に増えたが、農家が減っていくスピードはそれ以上に速い。だからこそ、若者たちは希望そのもの。小さいけれど、はっきりと見えてきた光を大切にしていこう」と呼びかけた。

農家トーク
食べる人に問いかけ
ご飯1杯30円は高い?

メインステージでは、有機農業をひっぱる現役リーダーが顔を揃えた。パネラーは、伊藤幸蔵さん、宇都宮俊文さん、富谷亜喜博さんの3人。

伊藤さん(写真・左)は、山形県高畠町で有機農法と畜産の複合経営の「米沢郷牧場グループ」代表。1995年には、農業生産法人・有限会社「ファーマーズクラブ赤とんぼ」を立ち上げる。自家で営む農業生産法人「エコファーム匠」では、田んぼの耕作に従事している。

宇都宮さん(写真・中央)は、愛媛県西予市の「大地とともに心を耕せ!」をモットーにする無茶々園の代表理事。環境破壊を伴わず健康で安全な食べ物の生産 を通してエコロジカルな町づくりを目指している。1974年3人の若者が伊予柑の無農薬栽培を開始してから36年。LPG基地誘致反対運動や共同防除施設での農薬散布を中止。2004年の台風による過去最悪の被害を機に改植に着手し、収穫量も徐々に回復、売上も過去最高になる。

富谷さん(写真・右)は、千葉県山武市にある農事組合法人「さんぶ野菜ネットワーク」代表で千葉県農業士。有機農家を見学したことがきっかけになりJA山武郡市有機部会に参加し、2005年に同ネットワークを設立。現在、半径3kmの地域に52名の組合員がいる。

3人は、「これ以上、価格が安くなれば米農家がつぶれる」ことなど農業のおかれている厳しい現実とそれでも頑張れる有機農業の楽しさを語り、“いのち”ある食べ物を生産する農業の大切さを伝えた。最後に山形県長井市のレインボープラン事業を立ち上げた菅野芳秀さん(写真・下)が、「土」の大切さと循環するまちづくりを紹介。「あなたの座る土の下には、たくさんの“いのち”が詰まっている。あらゆるものを生み出す土に感謝して、これ以上汚さず、土を尊ぶ暮らしをしていこう」と呼びかけた。

(2010/10/26)
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