まず、「農業生産における地球温暖化対策の推進」では、平成24年度までに農業分野における温室効果ガス53.8万トンを削減する目標を掲げ、土壌がもつ地球温暖化防止機能の活用には、2億4千万円の予算が計上されています。これに連動して農産物における省CO2効果の表示ルールの構築とCO2の排出量取引参画支援なども予算として盛り込まれました。
農業における地球温暖化の要因は、大規模な田畑に使う大型機械と施設園芸に使用する燃料、石油由来の化学肥料や農薬、水田から派生するメタンガスなどが考えられます。堆肥には、温室効果ガス(メタン)の排出を抑制する働きがあり、二酸化炭素の削減能力が森林の5倍あるといわれているので、有機農業の地域温暖化防止機能に大きな役割をもつと考えられます。
CO2を大量に排出している日本企業は、海外のCO2取引枠にお金を支払うことなく、国内の農家と取引きすることによって農業振興に大きく貢献することになり、同時に農業も産業として付加価値をつけることになります。施設園芸での燃料削減と有機農業の推進が、地球温暖化防止の鍵をにぎることが国レベルで認識されてきたといえます。
第2番目の「有機農業の推進事業」は、有機JAS農産物の生産量を26年度までに5割増加を目標に全国の有機農業普及と新規有機農家の参入を促進支援するため約1億円、有機農業に取り組む産地の収益力を向上させる取り組みは、16億円の予算が計上されています。また、有機農業技術支援センターなどの整備も「強い農業づくり交付金」から市町村に交付されます。有機農業モデルタウンで実施されていた事業の多くは、この予算で継続することが可能とのことです。
第3番目の「環境保全型農業の推進」は、化学肥料を減らし地域にある有機資源を肥料として活用することと、カドミウムの低減を目標とする土壌環境復元対策などが盛り込まれました。根本的な原因である土壌や河川の生態系を破壊している除草剤を含む化学合成農薬に対する対応が明確ではありませんし、エコファーマー制度で化学合成農薬の低減はよしとするのではという疑問を呈する有機農家も少なからずあります。しかし、カドミウムについての日本の基準はWHOが示した0.3ppmよりはるかにゆるく、0.5ppmとなっています。WHOの基準を受け入れると、かなりの米がその対象となるために本格的な取り組みに手を着けたことは画期的ともいえます。
EMでの有機農業を推進する比嘉照夫教授は、「かつての化学肥料、農薬、大型機械による環境破壊型農業から環境保全型農業への歴史的な大転換を推進しつつあり、食の安全性や地球温暖化に対する姿勢は、それなりに評価したい。しかし、従来の技術では、これが限界かと思われる部分も多く、EM技術を活用するとそれらの限界をことごとく突破することも可能である」と、今年度の農業政策を前向きにとらえるべきと話しています。
※参考資料:平成22年度予算概算決定の概要 生産局農業環境対策課(農林水産省)
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