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日本有機農業研究会
http://www.joaa.net/
1971年、有機農業の実践などを目的に、生産者と消費者、研究者が手を携えて結成された団体としては日本で最も歴史がある。自然と調和した農と食をめざし、生産者と消費者の「提携」を提唱している。
「第41回日本有機農業研究会全国大会総会〜全国有機農業者と消費者の集い2013 in 静岡」(主催 静岡大会実行委員会・日本有機農業研究会)が、3月2〜3日、静岡県富士市・富士常葉大学で行われました。現地見学会をはじめ、「食の未来」などの上映会、苗種交換会、分科会などに全国各地から有機農家、消費者など約450人が参加しました。

開催にあたり、静岡大会実行委員長の小櫛和子さん(富士市学校給食を考える会会長・食育研究家)が、「雄大な富士山のふもとで、豊かな自然を次世代に残すために、私たちが、今、何をすべきかを考える集いにしたい」と挨拶しました。続いて、佐藤喜三郎代表が、「有機農産物を生産する目的は、食べた人が健康になると共に平和な社会の構築にある。医農連携をしっかりすすめ、有機農業を守るために脱原発・脱TPP・平和憲法を守ることに集中したい」と決意を述べ、来賓のツルネン・マルテイ参議員議員(有機農業推進議員連盟事務局長)が、「有機農業は、国の力、国の宝だが、草の根がなければ国の政策はすすまない。有機農業に関わるすべての人たちと協力して国を動かしていこう」と応じました。

会場となった富士常葉大學挨拶する佐藤喜三郎代表有機農研恒例の種苗交換会
現地見学会のひとつ、「木の花ファミリー」(富士宮市)には、約60人が視察し、担当者の内田達也さんの話に熱心に耳を傾けていました。「木の花ファーミリー」は1994年に創立。有機農業による自給自足を基本として共同生活を行うエコビレッジで、現在、16家族77人が暮らしています。「血縁関係を超えた大家族」の自然と調和した暮らしが、国内外から注目されています。


新規就農した内田さんは、元会社員

無肥料栽培のキャベツ

木の花ファミリーの加工品も人気
標高360mにある農地は、野菜・穀類が9ha、米が9ha、計18ha。そのほとんどが、地元の遊休農地です。260品種を超える野菜や穀類をはじめ、14品種のお米を栽培し、860羽の平飼い養鶏による自然卵、10匹のヤギのミルク、養蜂による純粋蜜蜂、伝統製法による手づくりの味噌や醤油など、砂糖や調味料の一部を除いてほとんどの食料を自給しています。そのすべてが、化学肥料や化学農薬、遺伝子組み換え技術を一切使用しない有機農業で営まれ、EMをもとにビワの木、笹、ミカンの皮、ハーブなどを独自培養した「木の花菌」をボカシや、家畜の飼料や飲料に利用しています。エン麦、ソルゴーなどを緑肥として使い、それらの根が腐植化され土壌団粒構造をつくることや、敷きわら、微生物のエサとなる有機物(腐植)の補給、土壌中の病原菌や線虫の軽減など様々な効果があること、在来種とF1種のみやしげ大根を掛け合わせて、この地域にあった大根の育成など品種改良にも力を入れていることなどに注目が集まりました。

(公財)自然農法国際研究開発センターと有機農家で研修した内田さんが、「地域まるごと有機農業を行うことに魅力がある。有機農業のつながり、循環は、お互いを尊重しながら、助け合うという人間の営みに通じる。人との出会いで伝えられる、さまざまな情報を受け入れて、農園がどんどん進化している」とまとめると、ベテラン有機農家のひとりは、「とてもおもしろい。なかなか勉強になった」と笑顔で返しました。

2日目は、「野草パワーで 元気を摂ろう!」をテーマに野草料理研究家の若杉友子さんが、講演しました。若杉さんは、1937年大分県生まれ。西洋医学では見放された病気の夫を桜沢如一の提唱する食生活で改善したことから、日本人にとっての正しい食事について研究・実践する食養研究の第一人者。京都府綾部市で自給自足の生活を行い、つくし、ヨメナ、甘草など野草を使った料理教室を開き、アトピーや花粉症、不妊症などの悩みを抱える若い女性たちに「若杉ばあちゃん」と親しみを込めて呼ばれています。「野草は自分で命をつないで繁栄している。その生命力をいただくことで、元気になる」と、お米を中心にした一汁一菜の伝統的な食生活の上に野草を取り込むことを提唱しました。

5つの分科会では、放射能と有機農業など今日的な問題と共に、環境にあわせた技術の選択で農薬を使わない農業は可能だという提案もされました。最後に「私たちは、この豊かな緑あふれる自然を基盤として生きとし生けるすべての『いのち』を健やかに次世代につなげていくために、森・里・海の『いのち』の循環の中で人々が繋がり、多くの課題を一緒に乗り越えていく」ことを大会アピールとして採択し、閉会しました。

若杉友子さんの講演要旨


伝統的な食を伝える若杉さん
「人」の下に「良」と書いて、「食」という漢字になるように、食べ物は人にとって良いものでなければならない。戦後2人に1人がガンにかかっているのは、ガンに冒される「食」を摂っているから。「癌」という漢字を見ると、「口」が3つ、下に「山」があり、山ほど食べ過ぎれば病になることを意味している。

30年前に近所の方にF1種の大豆の種をもらい栽培したが、実がつかなかった。次世代に種を残さないことを異常だと思い、種を自分で残す野草に着目した。有機野菜、野草を中心にした食堂を始め、料理教室を開いて食の運動を始めた。その中で、花粉症・アトピーの方の方が健康を取り戻していくのを目の当たりにした。「これを食べたから健康だった」というのではなく、自分のつくった良いものを食べたから健康だった。土からあがった野菜をしっかりした調味料でシンプルに食べる。なによりも季節の旬を食べれば健康になる。「身土不二」というように地域でできた物を食べれば、人も地域も元気になる。

1960年代までの日本人は、米一俵を担いで100mを走るほど体力があったが、今の若者にはこんな体力はない。また、昔は、結婚すれば子どもができるのは当たり前で、今のように10人に1人が不妊症に悩むのは異常だ。男性の精子数が激減、女性の生殖能力の低下は、食がおかしいと考えなくてはならない。ことに不妊症は、低体温(36.5℃以下)を改善することで克服できる。米とミネラルたっぷりの自然塩、飲む点滴と呼ばれる味噌汁、そうした和食で体温は上がる。体温があがると性格も変わってくる。子どもたちの体を考えるならば、パンをやめ、米の給食に変える180度の転換が必要だ。そのためにも、消費者がもっと自分のこととして、食の勉強をし、自分で自分の食生活をコントロールする訓練をして欲しい。


分科会で話し合われたポイント
第1分科会 放射能汚染の中での有機農業

若島礼子(日本綜合医学会食養指導士・安全な食べ物をつくって食べる会会員 http://taberukai.jp/
大内信一(福島県 二本松有機農業研究会 http://www4.ocn.ne.jp/~dake/ynk/yuki.htm
馬場利子(静岡市 プラムフィールド代表 http://plumfield9905.jp/
魚住道郎(茨城県魚住農園)
槌田劭(京都府 使い捨て時代を考える会 http://www.tukaisutejidai.com/


安全な食べ物をつくって食べる会の若島さん
チェルノブイリ事故後に放射能測定活動を行っていた「プラムフィールド」は、福島の事故以後、農産物の放射能測定を開始した。また、福島では、さまざまな方法で放射能を移行させない努力が続けられている。福島では、野草、キノコ類を除くとすべて不検出で、農産物への放射能移行は少ない。まだ、結論は出ていないが、団粒構造の土壌にセシウムなどの放射性物質が固定・吸着され、作物への移行を防ぐ力がある可能性が大きい。きちんと検査して放射性物質のリスクを低減しながら、一般の農業者にも有機農業のよさを伝え、福島を安全な農産物とエネルギーの生産基地にしたい。

第2分科会 子どもの健康と食 〜未来の学校給食〜

小櫛和子(富士市 富士市学校給食を考える会会長 http://shizuokakyusyoku.sakura.ne.jp/fuji_kyusyoku/
中島紀一(茨城県 茨城大学名誉教授)
遠藤貴子(富士市立田子浦小学校学校栄養職員)
安藤徹哉(富士市 安藤農園 http://profile.ameba.jp/andounouen/


富士市学校給食を考える会の小櫛さん
学校給食を通して、地場産品の利用拡大と食育を行っている「富士山おむすび計画(富士市食育推進計画)」。富士市の卸売市場の協力で、地元エコファーマー認定の野菜を優先的に学校給食に利用している。また、給食に使う野菜の生産者が直接学校へ出向き、子どもたちと交流授業を行っている。こうした地道な取り組みは、地域と密接した小規模な農業に支えられている。しかし、TPPへの日本の参加が、小さくも価値のある食育活動や有機農業を破壊する可能性がある。次世代のためにも、食の安全とこれからの農業のあり方を国民みんなで考えていきたい。

第3分科会 手をつなごう オーガニック

上田由紀(生活協同組合パルシステム静岡副理事長 http://www.palsystem-shizuoka.coop/group/
吉野隆子(愛知県 オアシス21オーガニックファーマーズ朝市村村長 http://www.asaichimura.com/
小松浩二(沼津市 八百屋REFS代表 http://fujiyama-veggie.com/
舘野廣幸(栃木県 有機農家)
松木一浩(富士宮市 潟rオファームまつき代表取締役 http://www.bio-farm.jp/


生活協同組合パルシステム静岡の上田さん
大量生産・大量消費社会への流れの中で、生産の場と消費者が切り離されてしまった。しかし、オーガニックマーケットやレストランなど多様なチャンネルで、有機農業に無関心な人々を取り込んだ活動が展開されている。農業を原点にさまざまな産業が手をつなぐ6次産業化や、インターネット販売など、新しいビジネスも生まれている。生産者と消費者をつなぐ役目を担う人々の存在も、ますます重要になってくる。新しい切り口で食の安全を広めていきたい。

第4分科会 有機農業がお茶を救う〜日本茶の新しい世界〜

圷有恒(静岡市 静岡有機農業の会事務局長 http://shizu-yuki.jimdo.com/
大村悌治郎(静岡市 薬剤師、食品保健指導士)
齊藤勝弥(静岡市、有機茶農家)

静岡有機農業の会の圷さん
戸崎雅章(静岡市 有機茶農家、静岡環境保全型農業推進会代表)

放射性物質が荒茶から検出されたことで、お茶の産地は今でも苦悩している。そのため、海外に販路を開拓したり、独自に栽培販路をインターネットにするなど新しい市場開拓に乗り出している。原発事故前も、年々お茶の販売量は減少していた。その理由は、日本人にとってお茶は嗜好品となり、機能性としてのお茶を無視した結果、安全性が失われてしまったことにある。この点を反省し、有機農業で安全なお茶を消費者に提供していきたい。

第5分科会 農の技〜農薬はやめられる〜


木の花ファミリーの北尾さん

自然農法の考え方を説明する石綿さん

北尾晃一(富士宮市 木の花ファミリー
http://www.konohana-family.org/
石綿 薫(長野県 自然農法国際研究開発センター http://www.infrc.or.jp/
松沢政満(愛知県 福津農園
http://toyohashiyuki.jugem.jp/?eid=23
龍田純隆(富士宮市 ドラゴンファーム http://www.dragon-farm.jp/

有機農業は、国土の環境を守る国土回復産業として存在する、そのことを再確認。無農薬新規就農する人には、最低3年の国家援助を要請したい。生物多様性と農の関係を学んで、肥料は少なめにし、虫は虫で、草は草で、菌は菌で調和させるため、野菜類の不耕起栽培、果樹の混植栽培、有畜複合農業(平飼い養鶏、ヤギ)、リビングマルチなどを提案。病害虫は、誘因を小さくする生態系づくりを行い、害虫がいても実害がなければ、農薬を使う必要はない。こうした栽培をしながら、土を育てる自然農法の技術を普及し、誰でも農薬を必要としない農業に取り組めるようにしたい。

(2013/3/31)
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