有用微生物群であるEM技術での除染は、廃棄物がでないので仮置き場の必要がない。自然にも人間にも良く、海も川もきれいになる。もちろん、お米の味も品質もよくなる。福島県では、2016年度産米から食品衛生法の基準である1kg当たり100Bq(ベクレル)を超える放射性セシウムは検出されていないが、今回取材した方々がつくったEM米は、放射性セシウムが不検出(検出下限値1Bq/kg )、あるいは50分の1という数値であった。 EM技術で放射能の影響を限りなく少なくし、地域再生の原動力になっている4人の方々を紹介する。
4.『除染対象地域が 生物多様性に富んだ理想郷に』 田村市・今泉智さん&米倉金喜さん
田村市都路町古道(ふるみち)地区は福島第一原子力発電所から西に約20km。警戒区域として避難命令が出され、一時は無人と化した地域だ。しかし、6年間避難せずに住み続けているのが、今泉智さん(62歳)と米倉金喜さん(62歳)だ。しかも、国の除染を断った。今泉さんは、大熊町で農業をしていた米倉さんから、EMで発酵した馬糞たい肥の上にガイガーカウンターを置くと、周りよりも低い数値だったことを聞いて、「放射能対策にEMが使えると直感しました」と述懐する。播けば、助かる。この小さな気づきが、のちの大きな希望へとつながっていく。
EM研究機構の協力を得て行った除染対象区域は、なんと32ha、東京ドームの約7倍の広さだ。近くのシメジ栽培工場を無償で借受け、EM培養工場に改修した。トラックに3tタンクを積せ、消防用ポンプで散布した。環境省の調査では、国の除染をしていないこの地域だけ極端に下がっていて、調査官が首をかしげていたという話もあるほどだ。この検査結果は、環境省のHPでも発表されたが、「なぜ低いのか」という調査はなかった。
しかし、このダイナミックな除染の複合効果は計り知れなかった。生命力をここぞとばかり溢れさす花々、驚くほど美味しい野菜、元気な鶏、池の魚たち。そして、病気ひとつしないペットたちだ。さらに全国で絶滅危惧種になっている「モリアオガエル」も確認された。きれいな水にしか生存しないカエルが、繁殖できたのは、この地域が生物多様性に富んでいる証だろう。
この地区では、誰よりも早く開始した米づくりでは、年々工夫を重ねて、最近では粉炭入りEM団子を利用して土壌の改良に努めた。その結果は、放射性セシウムは検出されず、さらに量、質ともに申し分なかった。このお米でご飯を炊き、米粉でパンを焼く。ほとんど食材は買わない。皮肉にも震災前には許されなかった豊かな食卓が、ここにある。
こうした変化を見逃さなかった人がいる。近隣の森林組合に勤める知人が、塩入EM活性液やEM団子を森の斜面に使い始めたのだ。誰もが、空を見上げ、おいしい空気を胸いっぱいに吸い込みたくなる庭が、広がっている。
「こういう理想の郷ができたのは、たくさんの方の協力があってこそ。感謝でいっぱいです。これからは、ここで、多くの人に心を癒してもらえたらうれしい。そう、ここを日本のフィンドホーンにしたいですね」と今泉さんは、夢を語っている。フィンドホーンは、スコットランドの北東部に位置する自然と人間が共生する、愛があふれる理想の郷といわれており、世界の人々のあこがれの地だ。
「これから、私たちがやらなければならないことは、自然と切り離せない人間の精神性の復活です。自然を蘇らせてくれる微生物は、人間の魂も復活させてくれると信じて、EMを撒き続けたい」震災以降、さまざまな苦悩を乗り越えてきた今泉さんと米倉さんの決意だ。
(文責:小野田)
<参考>福島県産玄米の放射能検査結果 https://fukumegu.org/ok/kome/year/16
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