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EMで国造りに挑戦するタイ王国 【下】
EMウェルネスウィークレポート②
不可能を可能にするEM

前回は、タイ国の根幹である農業分野におけるEMの事例を取り上げました。今回は、タイランドフェスタ(平成19年10月31日開催)で発表されたEMを活用した建築、食品加工、水環境対策、災害救助について紹介します。農業だけではなく幅広い分野に活用される理由は、国のトップリーダーがEMの働きをよく理解していること、国民の多くがEMの使い方を学んでいることが、あげられます。また、大量にEMを使うことで、ローコストで最大の効果をあげるスケールの大きさには目を見張るばかりです。

1tの活性液を使った 健康ハウス

タイ南部チュムポーン県ナーサック大学の教師であるマナット・ヌーサウィー氏は、1994年からEM技術を応用した授業を行っています。この間、タイ農業銀行出資によるサヴィーチョン河川の保護プロジェクトを実施したり、環境汚染問題を抱える工場に対して、EMを利用した解決法を提案したりするなどの効果を上げています。

そのような活動でEMの効果を実感したヌーサウィー氏は、家を新築する際にEM技術を採用することにしました。その方法は、コンクリートに3%のEM活性液を混入し、建築基礎、モルタル、壁、支柱、レンガ塗りなど建物全体にEMを活用しました。使ったEM活性液は1tにも及び、その結果、建物全体がキレイに仕上がり、強度も増したということです。また、室内が涼しく、すがすがしい空気感など、快適な家づくりに成功しました。

ことに20年来の糖尿病や高血圧、心筋こうそくなどを患っていた72歳の義母が、新築の部屋で寝ると、3か月後に血糖値が平常になり血圧も下がるという効果がみられました。心臓肥大の父にも、家に来てもらうと調子がいいという現象がおきました。この因果関係はわかりませんが、新築=シックハウスの逆の現象が起きたと言えるでしょう。

また、工場内をEMですべて掃除しているソーセージ工場では、扇風機を使わなくても涼しく、窓を開けていてもハエが入ってこないという環境になっていると話しました。EM活用の建築物は、建材資材から出る化学物質を軽減し、住民の健康状態が良いということです。

EMによる汚水処理技術 ローコストで難問を突破

30万ユニットの住宅管理を行うタイ国営バンコク住宅公社元副総裁・現相談役のウォラヌット・チャタムサターポーン氏は、汚水浄化槽の改善プロジェクトに本格的にEMを採用したことを発表しました。

2003年、ノンタブリー県にある入居者約2000家族1万2000人の住む集合住宅の10台のエアレーションが老朽化して稼動しない状態になり、その結果、窓が開けられないほどの悪臭で、住民からの苦情が住宅公社に寄せられました。

この緊急事態に対して、EMの情報を得た住宅公社は、さっそく悪臭を発生する貯水池にEMを流し込みました。すると2時間後汚水が透明な水に変わり、悪臭が消え、4mもあった沈殿物が30cmに減るという激変を目の当たりしました。 以後、住宅の汚水浄化槽の改善プロジェクトに本格的にEMを活用し、ローコストのメンテナンス技術として普及しています。

さらにEM浄化技術を応用したところでは、水質改善などに効を上げただけではなく、その用水が供給された畑地では以前よりも品質の良い農産物が収穫されるという複合的な効果も現れています。

例えば、2006年9月に起こった大水害で排水口がふさがり汚泥で埋まってしまった1億8千tの大貯水池に、EM活性液50万リットルを投入したことで、普通なら10年かかると言われる14mの汚泥処理を数週間で解決し、4つの村の水没の危機を救い、貯水池周辺の田んぼでは近年まれにみる豊作という素晴らしいプレゼントもありました。

また、バンコク市内のワット・トゥック集落に流れる水路は、生活廃水が流れ込みカビが発生して、周辺住民の中にはマラリアで死亡する人が出るほど最悪の環境でしたが、EM活性液を流したところ、大量のごみが浮き上がり、ボウフラが死んで成虫にならないという現象が起こりました。死の川から、今では魚が泳ぐキレイな川へと蘇っています。




コンクリートにはEM活性液を3%混入。他の資材もすべてEM活性液に浸して使用したEM住宅。空気感が違うと評判になっている

EMを使ったソーセージ工場。肉にもEMを用いて添加物を一切使用していない

バンコク住宅公社元副総裁と一緒にEMを流し込む住民

EM効果でキレイになった貯水池



大洪水のため木材が流れ込んだ池にEMを投入する

水路にもEMを流す。死の川に生物が復活
世界に報道された
津波被災地でのEM活用災害救助

2004年12月26日、津波大災害にあったタイ南部の被災地は、1万人以上の被害者が出るという大災害となりました。「タイでは2000年ぶりの津波で、住民も行政も津波の存在を知らず、どう対処するかという用意もありませんでした」と話を切り出したのは、国防省陸軍監査官のチンナラット・チッタムサターポーン氏です。

津波発生後3日目には遺体収容場から悪臭が発生。タイ赤十字社の要請を受けたEMキュウセイ社(タイ国でEMを製造・販売する会社)が7tのEMを無償提供し、陸軍専用機でEMを現地に運びました。

EM活用の様子は、ロイター通信を通してアメリカでも大きく報道された

津波の犠牲となった遺体は、現地の寺院などに安置され、1つの収容施設だけでも1000体を超えていました。猛暑の中で、遺体の腐乱は激しく、その激臭がDNA鑑定を行う医療チームを悩ませていましたが、EMを消防車で散布したところ、悪臭が半減しました。

遺体の腐敗臭が体に染み付いた救援スタッフにも散布した結果、防臭マスクを装着しないで作業できるようになったと言います。遺体から発生する微生物のため、救援スタッフが肝炎にかかる危険もありましたが、結果的に回避できたということです。

また、濁流に飲み込まれた集落では、悪臭問題だけではなく衛生問題も抱えることになり、そのため遺体をはじめ、汚泥やごみは、すべてEM散布してから埋立て、海水で塩化してしまった貯水池にはEM団子が投入されました。

チッタムサターポーン氏は、「伝染病の感染から生存者を守ることもでき、すべての困難な問題が解決した。言葉にできないほどのすざましい惨状を体験したものとして、EMを開発してくださった比嘉先生に心から感謝したい。もし、先生が現地を訪れてくれたら、誰もが同じ思いで先生をお迎えするだろう」と語り、会場からは災害時におけるEMの威力に対して感動の声が聞かれました。

比嘉教授は、「タイ国の国づくりに貢献したいという湧上さんの悲願を達成できて、感無量だ。タイのEM関係者に心から感謝するとともにこれからは、タイからアジアへEM活動が広がって、貧しい地域の自立が実現できるように願う」と話しました。日本で開発されたEMが、タイの市民の暮らしを変えていることに改めて勇気と希望を見出した1日でした。

(小野田)

運ばれた遺体にEMを散布する救援スタッフ

消防車から放水されるEM活性液。希釈は車上で行われた

比嘉教授夫妻とタイランドフェスタの発表者で記念撮影

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