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山下一穂 土佐自然塾塾長・山下農園代表
「40年前、ぼくが日本に来たときはホントウニ美しかったな。森も、川も、海も、とてもビューティフルだった」
C・W・ニコルさんの少年のような目が、遠い記憶をたどり、とても幸せそうな顔になった。その直後「日本人、いったいどうしちゃったんでしょう?・・・(こんなに環境を破壊しちゃって)」今にも泣き出しそうな顔になった。

奥田シェフを迎えての「一夜だけのレストラン2」。その食事会が始まる直前のミニ講演会でのこと。南氷洋の鯨取りの話、カナダの鮭の話、アラスカのイヌイットの話。彼の周りから立ち上るオーラは、命の気配とその循環に満ちていて、聞くものの心を癒やし続けた。
彼自身が豊かな森そのものかも知れない。本人は「ぼくは熊の生まれ変わりです」と言う。

奥田シェフ特製甘〜いナスのブロード煮と天然ウナギ
奥田シェフ特製甘〜いナスのブロード煮と天然ウナギ
その2日前、「森よ、海よ、川よ、蘇れ!」と題したフォーラムが高知市で開かれた。京都大学総長の尾池和夫さんが基調講演。ぼくと岡崎高知市長、近自然工法で有名な「西日本科学技術研究所」の福留脩文さんの3人がパネルディスカッション。コーディネーターはアウトドアライターの天野礼子さん。森と川の構造的物理性の整備や、生活雑排水や農地からの化学的汚染の排除などをテーマに、合併により源流から海まで繋がった高知市というフィールドを俯瞰(ふかん)して、これからのあるべき環境と、その改善策について語り合った。
 
そして、2部がニコルさんのコンサート。ギターと笛を伴奏に、オリジナル曲やアイルランド民謡を披露。ニコルさんの歌声からは、悠久の時間の流れを感じとることができた。いつも切り取られた時間の中で、窮屈な日常生活を送っているぼくたちは、解放され、溶かされて、まるで小宇宙を漂っているような気分になった。

二コルさん、びっくり!

その翌日は、「土佐自然塾」の教室で、ぼくがニコルさんにパワーポイントを使って、1時間半ほどレクチャーした。微生物や昆虫、それを餌とするキジの抱卵など、豊かな自然が見事に再生しているぼくの畑の画像にビックリ仰天、その目はまるで少年のようだった。彼は何かにつけ、すぐ少年のような顔になる。そのあと、美しい林に囲まれた山の小さな畑にでかけ、一株で百個なるカボチャ「万次郎」を見て、ウワー、スゴイ!」を連発。

二コルさんを魅了した万次郎カボチャ。これで1株
二コルさんを魅了した万次郎カボチャ。これで1株
「これねえ、でかいけど、味はエビスカボチャのように粉質で甘いんですよ」とぼく。
「20個、予約!」と右手を高々と突き上げて、ニコルさん。
ナスの畑では、落ちているナスを「これ、もったいないよ〜」と言いながらかじって、「甘〜い、甘〜い」と目をまん丸くした。夕方、今度はニコルさんが「土佐自然塾」で、塾生に特別講義。塾生達も大喜び。最後に記念撮影。

子どもたちのために

そしてその夜。翌日「一夜だけのレストラン」が開かれる山荘でニコルさんと飲んだ。しこたま飲んで何を話したのかほとんど覚えていない。覚えているのは2つだけ。

その1つ。
目をまん丸くして、「ぼくには、貯金が300万円しかないんですよ」と言ったこと。あとから、その理由を天野礼子さんに聞いたら。「アファンの森財団」にすべての財産を寄付したからだとか。このアファンの森は、40年前に彼が見たあの美しい日本を取りもどそうと、そのモデルづくりに、ニコルさんが荒れた里山を買い、間伐をし、藪を切り開き、落葉樹を植え、コツコツと整備してきたもの。今では、その黒姫の森を流れる細流には、イワナが戻ってきて、様々な動物や昆虫が生息しているそうだ。

2つめ。
「山下さん、これからぼくとズ〜ッと友達でいてくれますか」いくら酔っぱらっていても、ニコルさんからこんなこと言われたら、忘れるわけがない。そのぐらい嬉しかった。驚きと恐縮で言葉もなく、ただ「うん、うん」とうなずくばかりだった。と言うことで、これからぼくはニコルさんのことを「ニック」と呼び、彼はぼくのことを「かずほ」と呼ぶことになった。ぼくたちは死ぬまで悪ガキ仲間の「Bad little kids」となったのだ。
さあ、子どもたちのために、もう一暴れしてみようかね、ニック。

掲載日:2007年10月9日
山下一穂 プロフィール

やました・かずほ
1950年 高知県生まれ。28歳まで東京でドラマーとして活動。その後帰郷し、高知市内で学習塾を経営。体調を崩したためにあらゆる健康法を試してみたが、最終的に食と農の問題に行き着く。1998年 本山町にて新規就農。2006年4月 高知県と地元NPO黒潮蘇生交流会(山下修理事長)との協働で「有機のがっこう」を始め、同年12月、第1期生14人の中8人が県内で就農。今春から第2期生11人が研修中。

かんたん無農薬 有機農業
著書「超かんたん・無農薬有機農業」は自ら開拓した「超自然農法」での有機農法をユーモア溢れる語り口で書かれた実践本。野菜20種の栽培法収録のCD 付き。

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EcoPure56号 「美しい日本の再生を」


外部リンク
「有機のがっこう」土佐自然塾HP
http://www.tosa-yuki.com/

山下農園HP
http://harehore.net/



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