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山下一穂 土佐自然塾塾長・山下農園代表
天才カズホ君の晴れ掘れ日記
第9回 美味しい日本!
「日本で一番食べ物が美味しいのは高知県」という調査結果が出た。
一皿でてんこ盛り みんなで楽しむ皿鉢料理
一皿でてんこ盛り みんなで楽しむ皿鉢料理
「ほんまかいな?」その新聞記事が、ぼくにはどうも納得がいかない。いかないけれど、記事を読んでみて、”調査結果”が事実であることはわかった。それでもこの「じゃらん宿泊旅行調査結果2007」には納得がいかない。
リクルートのじゃらんリサーチセンターが、日本のあちこちで観光旅行をした約一万人の男女を対象にアンケート調査をした結果、美味しかったのは土佐の「カツオのたたき」「刺身」「農産物」「四万十の幸(ウナギ・アオノリ)など」と「皿鉢料理」なのだそうだ。

この皿鉢料理は、土佐のお客(宴会)には欠かせない郷土料理。
基本は、寿司、刺身、組み物(煮物、揚げ物などに、果物やようかんも)が大きな皿に盛られていて、みんながそれをとりわけて食べる。高知で人が集まれば必ずと言うほど、皿鉢料理が登場していた。お酒を飲めない人や子どもも一緒に宴会を楽しむことができる。特筆すべきは、支度をしていた女性陣が、途中からエプロンを脱いで「よっこらしょ」と腰をおろし、「あ〜やれやれ」と言いながら、男性と一緒に酒を飲む。土佐の女性は酒に
外国産ばかりの寿司ネタがちょっとさみしいけれど
外国産ばかりの寿司ネタがちょっとさみしいけれど
強いし、仕事もバリバリこなす。あ、そうだ。宴もたけなわになると、キレるおんちゃんも登場していたな。気が小さくていつもは大人しいおんちゃんが、この「土佐のお客」の独特な雰囲気と酒で、突然、気が大きくなるのである。子どもは走り回る。夫婦げんかも、親子げんかも始まる。それらをすべて包み込み、後になんのしこりも残さない土佐人気質の大らかさが、土佐のお客には現れていて、まさに「皿鉢料理」と「お客」は土佐の伝統的な食文化、精神文化の象徴でもある。だから、それはいい。それはいいのだが、その味が日本一となると文句が言いたい。「これは上げ底の日本一だ」と。その理由を以下に記す。

自然を回復して本物の郷土料理を

カツオと言っても、三陸産をはじめほとんどが県外産だし。刺身も養殖ものや冷凍ものが使われることが多い。四万十の天然ウナギに至っては絶滅寸前まで減少している。ほんとうに美味しい農産物と言えば有機野菜だが、これもほとんどマーケットに出てない。

そう言えば、「エビおばさん」「カニおばさん」というのもいたな。酒が飲めないエビ、カニ大好きおばさんの前には、まるで海底のタコの巣よろしく、山盛りのエビの殻とカニの殻が出現。それが笑って許されるぐらい土佐の海は豊かだった。そのエビは今やインドネシア産、カニはロシア産。タコ、イカはアフリカ産。かつての高知市を源流域から桂浜沖まで見渡せば、アメゴ、アユ、アオノリ、シジミ、チヌ、スズキ、タコ、イカ、鯛、ヒラメ、ブリ、アジ、サバ、アワビ、サザエ、トコブシなどが持続的に再生産可能な、豊かで美しい環境に恵まれていた。要するに、美味しい食材が目の前にウジャウジャいたのだ。が、今はこれらのほとんどは激減していて、ものによっては絶滅寸前。

女性も宴会の一員になれるよ、とみどりさん
女性も宴会の一員になれるよ、とみどりさん
昔は良かったと嘆いているのではない。なんとしてでも、この豊かで美しい自然をもう一度取りもどしたいと言っているのだ。そのためには、太陽の光りが入り込むように森を整備し(間伐、木材需要の喚起)、コンクリート張りの水路や護岸を近自然工法で改修し魚の住みやすい環境をつくる。家庭からの雑排水に含まれる合成洗剤や殺菌剤、流域を取り巻く農地からの農薬汚染を排除して、微生物や土壌生物など、食物連鎖の底辺を豊かにする。底辺が豊かになれば、すべての生命が循環しながら世代交代を繰り返していくようになる。そうすれば、あの豊かな食材が戻ってくる。本当に美味しい土佐が取り戻せる。土佐だけではないよ。日本全国どこも環境の破壊度は似たり寄ったりのはずだから、国民みんなでこれに取り組めば、美味しい日本(ニッポン)が再生できるのだ。

掲載日:2007年9月10日
山下一穂 プロフィール

やました・かずほ
1950年 高知県生まれ。28歳まで東京でドラマーとして活動。その後帰郷し、高知市内で学習塾を経営。体調を崩したためにあらゆる健康法を試してみたが、最終的に食と農の問題に行き着く。1998年 本山町にて新規就農。2006年4月 高知県と地元NPO黒潮蘇生交流会(山下修理事長)との協働で「有機のがっこう」を始め、同年12月、第1期生14人の中8人が県内で就農。今春から第2期生11人が研修中。

かんたん無農薬 有機農業
著書「超かんたん・無農薬有機農業」は自ら開拓した「超自然農法」での有機農法をユーモア溢れる語り口で書かれた実践本。野菜20種の栽培法収録のCD 付き。

関連記事
EcoPure56号 「美しい日本の再生を」


外部リンク
「有機のがっこう」土佐自然塾HP
http://www.tosa-yuki.com/

山下農園HP
http://harehore.net/



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