その前に、この食事会が生まれたいきさつから。まずこの春「“439”有機協議会」が立ち上がった。これは、ぼくが住む地域を横断する国道439号線沿いにある5町村が参加し、3ヶ所の有機農業モデルほ場を設け、地元の農家に有機農業を体験してもらおうというプラン。「無農薬栽培は難しい」と言っている農家が、ついに立ち上がったのだ。しかも、64名も。既に、1回目の現地研修会では、全員参加で緑肥(ソルゴー)をまいた。短期、速効の土づくりの後、秋に播種、冬に収穫。その作物をそれぞれの地域にある直売所で販売する。「無農薬ではできない」と思っていた農家が、ぼくを講師に実際自分でつくってみることになった。その取り組みをみなさんに知っていただくためのアドバルーンがこの食事会なのだ。
ぼくの野菜がしゃべっていた
「人を緩める、安心させる」のが奥田シェフの料理の目的。彼は常々言っている。「ぼくは、料理を通して、人々を癒やしたい」と。それは愛と呼んでも良い。無駄な味付けは一切省き、複数の素材の組み合わせで絶妙なバランスを取るから調和の極みでもある。それぞれの素材の味を残しながら新たな味を創出し、それが口中で漂い、馥郁(ふくいく)たる香りが鼻腔をくすぐり、愛がのど元を滑り落ち、調和が脳を緩やかに覚醒(かくせい)する。緩やかに覚醒するから、お酒も上品に飲める。そして驚いたのは、ぼくの有機野菜が他の食材とも相まって、まるで何か話をしているように見えたのだ。
やました・かずほ 1950年 高知県生まれ。28歳まで東京でドラマーとして活動。その後帰郷し、高知市内で学習塾を経営。体調を崩したためにあらゆる健康法を試してみたが、最終的に食と農の問題に行き着く。1998年 本山町にて新規就農。2006年4月 高知県と地元NPO黒潮蘇生交流会(山下修理事長)との協働で「有機のがっこう」を始め、同年12月、第1期生14人の中8人が県内で就農。今春から第2期生11人が研修中。
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外部リンク 「有機のがっこう」土佐自然塾HP http://www.tosa-yuki.com/
山下農園HP http://harehore.net/