連載



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EMフォーラム2011

1.事例発表

2011年のEM活動の集大成となるEMフォーラム2011が、11月19日、浦添市の国立劇場で開催されました。EMの社会化をより推進するためには、個々のEM生活をさらに充実させる必要があります。EMフォーラム2011もまず、この基本を踏まえ、高坂早苗さんに「EMでエコ家事ライフ〜ハウスキーパーはアースキーパー」、吉田俊道さんには「菌ちゃんありがとう!〜子どもと一緒に生ごみリサイクル元気野菜づくり〜」についての事例発表をいただきました。

EM活動の基本は自己責任でボランティア(社会貢献認識)であり、そのチェックポイントは、安全で快適、低コストで高品質で累積的な持続性となっています。この基本的な概念を意識しつつ活動を続けると、いつの間にか人生の喜びや楽しみを見つけ、さらには人生の喜びや楽しみを造るという境地に達します。このレベルに達すると、EM技術はもとより、人生もクリエイティブ(創造)でプロフェッショナルなものになります。

高坂さんがEMに取り組むきっかけになったのは、末息子の喘息とアレルギーです。従来法で様々な努力を重ねても根本的な解決が困難であったのに対し、EMの生活化を徹底することによって解決したのです。その成果は、子どもの免疫力が必然的に高まり、家族全員が健康になり、どんな一流の医者でもなし得ない根源的な解決に結びついています。

合成洗剤はもとより、家庭内の化学物質は極端に減り、家庭からの排水は結果的に川や海の浄化や他の生物の生態系を豊かにしたり、生物多様性を守るライフスタイルになり、さらには家族でできる放射能対策の普及にも積極的に取り組んでいます。

吉田さんの場合も、県の普及員時代に農薬や化学肥料中心の現代農業に疑問を持ち、自ら有機農業に取り組んだのです。その成果を社会化するために達した結論が、EMを活用した生ごみリサイクルを軸にした食育に徹することです。

「土がいとおしい」「自分で育てた野菜さんにありがとう」を心から言える子どもは、幸福な人生の第一歩であり、生きる力の本質的な教育ともつながっています。幼少の頃から自然と共に生き、自らの作物に対する観察眼や愛情が育てば、その子どもは必然的に創造性が豊かになり、いかなる境地にも適応でき、望ましい人生を構築するフォームづくりに直結するものです。

このお二人の事例発表を一般化すれば、大半の医療、健康や教育社会問題も、自然に消滅してしまいます。同時に、「日本という国で健康を維持していくためには」という杉本一朗先生の基調講演に対する具体的な答えともなっています。

2.パネルディスカッション

パネルディスカッションは、第1部で「東日本大震災津波被災地でのEMの活用」と第2部で「EM技術による放射能汚染対策」の2部構成となりました。

第1部では、津波被災地にどのようにEMを供給し、どのように使われたのかという現場の活動状況を報告いただき、そのポイントについてディスカッションをお願いしました。まず岩手県全域に対しEM活性液をつくり、各市町村にタンクを設置して、くまなく行き渡るように配送した岩手コンポストの菅原専務の報告です。花巻市にある岩手コンポストは平成9年から建築物はもとより、汚泥などのコンポスト化にすべてEMを使用しています。従って、EMコンポスト(コスモグリーン)は、有機農業にも使用できる、極めて安全で機能性の高いコンポストです。そのお陰で岩手県は、下水汚泥の全量を完全にリサイクルできている代表的な県となっています。

EM活性液も月に100トンもつくる能力があり、この大震災に対し、岩手コンポストはEM研究機構とEM生活社の後方支援を受け、損得抜きにフル回転で岩手県の被災地のすべてに大量のEMを行き届かせ、活用できる体制をつくってくれました。その極め付けは、大船渡市をはじめとする各地域の大量の水産廃棄物の処理でした。量はもとより、その悪臭のすごさに、夏の感染症や二次被害も懸念されましたが、かつて宮崎の口蹄疫の殺処分でEMを活用し完璧に解消した事例と同じように、またたく間に根本から解決してしまいました。

その他岩手県では、オールハンズという国際ボランティア団体が長期にわたってEMによる避難所の衛生対策を行うなど、多くのボランティア団体がEMを活用してくれました。そのようなことから、今でも各被災地でEMは不可欠な資材として活用されています。

宮城県で岩手コンポストと同じように大きな活躍をしてくれたのが、栗原市にあるSPCジャパンの地球環境保全ネットワーク代表の平野さんです。もともと平野さんは、理・美容経営者の集まりであるSPCジャパンのリーダーです。地元の伊豆沼(ラムサール条約指定、大々的なハス沼)の汚染がひどく、回復策がないために、意を決してEMを本格的に活用したのです。伊豆沼は1年でかなり回復し、今ではかつてないほどにキレイになっています。

広大な伊豆沼を短期に甦らせたのは、大量のEM活性液を製造するタンクシステムと、それを配送する4トンのタンク車を備えたことです。伊豆沼の問題を解決し、栗原市の農業や環境全体をEM化しようとして活動し始めたときに、3月11日の大震災が発生したのです。この地震で栗原市は震度7という最もひどい状況になりましたが、平野さんは我が身を省みず、要求のあった宮城県全域に岩手コンポストのような目覚ましい活躍をしてくれました。

特に、石巻市や仙台市の海水とヘドロだらけの水田に、稲作試験に必要かつ十分なEMを供給し、除塩をせずに望ましい稲作が可能であるというEMの真髄を示す試験にも並々ならぬ協力をいただきました。

津波ですべてを失った気仙沼の足利さんの報告は、人生の心得を万人に説く高僧の姿のような気配が漂っていました。解決不可能と思われた広大な被災地の悪臭や衛生問題に対して、EMを活用してケースバイケースで素早く対応し、根本から解決してしまったのです。

これは、本気になった人にはEMが無限の知恵と力を与えてくれるという典型的な事例で、足利さん自身はもとより、多くの人々に再挑戦する勇気を与えてくれました。

以上3人に代表して報告をいただきましたが、自然農法国際研究開発センターやEM研究所、東北EM普及協会の多大な協力もあり、今では七ヶ浜町をはじめ、宮城、岩手の被災地ではまちづくりにEMを本気で取り入れるようになった市町村が増えています。

第2部の「EM技術による放射能汚染対策」は、これまでDNDやWEBエコピュア、舩井幸雄.comなどで、私が発信し続けた情報の裏付けとなるものであり、さらに確たるものになったと言える内容となりました。

チェルノブイリ原発事故の被災地となったベラルーシ国立アカデミー放射線生物学研究所のアレクサンダー・ニキティン博士は、EMの使用によって放射性元素のセシウムとストロンチウムが作物に吸収されないことを報告してくれました。同時にセシウム対策に使われたカリウム40の放射線が問題となり始めているということと、現在ではセシウムよりもストロンチウムが問題となっており、その対策はEMで可能という過去の実験の正しさを裏付けてくれました。

福島の現地で15年以上も前からEMを使い有機農業の新ビジネスモデルを展開しているマクタアメニティの幕田さんは、その裏付けとなる成果を発表してくれました。すなわち、EMを使っている幕田さんのグループの農家の作物は、かなり汚染された地域でも、放射性元素は吸収されておらず、すべて検出限界値以下となっているということです。

この結果は風評被害を完全に克服できる成果であり、福島県はもとより、放射能汚染地帯の風評被害を根本から改めさせる力となるものです。

3人目の報告は、「チェルノブイリへのかけはし」の野呂さんです。野呂さんは私とベラルーシの国立放射線生物研究所を結びつけ、現在の放射能対策の道筋をつけてくれた大功労者です。チェルノブイリの子どもたちがEM・Xゴールドで元気になったことから、EMの様々な活用で子どもたちの放射能被害対策を行う活動を、福島はもとより、全国に展開しています。様々なノウハウに加えて、EM・Xゴールドが決定的な力を持っていることも報告してもらいました。すなわち、EM・Xゴールドを一般的使用の5〜10分の1でも内部被曝対策に活用できるという話です。当然のことながら、EM生活をすれば、放射能の問題も根本から解決することが可能となります。

以上、手短にEMフォーラムの内容を説明しましたが、岩手コンポストでは汚泥中の放射性元素(セシウム137)が完全に消えている例や、多くの学校の校庭にEMを散布すると放射線量が著しく下がる例などもトピックスとして出されました。

いずれにしても、東日本大震災の諸々の被害に対し、EMは十分に機能を発揮し、その復興の原動力になり得ることが明らかとなりました。

翌20日は、6か月前から開墾をはじめようやく公開できるようになったEM研究機構のサンシャインファーム「龍の谷プロジェクト」の見学と、バーベキュー大会に200人あまりの方々が参加してくれました。EMウェルネスリゾート・コスタビスタ沖縄・ホテル&スパの生ごみは、全量この農場で活用されています。「龍の谷プロジェクト」と称されるのは、この谷に昔から最高位の龍が降りてくると言われていることにちなんだもので、その下流域を含め、EMの本拠地のある北中城村全体をEM化するプロジェクトで、すでに漁協やEM栽培野菜のイオングループへの出荷協定など、具体的な活動を始めています。農場はいつでも公開しており、研修生も受けられるようになっていますので、EM農法のモデル農場としてのこれからが楽しみです。

(2011年12月5日)
PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。


 

 

 

EMフォーラム2011が開催された「国立劇場おきなわ」

 

国内はもとより世界18か国からも参加者があったEMフォーラム2011

 

子どもたちに説明する吉田さん

 

パネルディスカッション第1部では、東日本大震災の被災地におけるEM活用事例が報告された

 

岩手コンポストのEM活性液タンク

 

SPCジャパン平野さん(右)とEMを配送するタンク車

 

気仙沼でEM浄化大作戦を決行する気仙沼の足利さん(右)とボランティアの皆さん

 

 

 

 

 

ベラルーシ国立アカデミー放射線生物学研究所のニキティン博士が参加したパネルディスカッション第2部

 

放射能対策の道筋をつけてくれたと比嘉教授が感謝するチェノブイリへのかけはし代表野呂美加さん

 

 

 

ごみの不法投棄場所だったとは思えないEM研究機構直営農場「サンシャインファーム」。通年17品目がつくられ、ホテルなどに供給されている

 

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