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ポーランドEMフォーラム2010

6月の11と12日、ポーランドのプワヴィの国立獣医学研究所の国際会議場で、30か国余のEM関係者を中心に「ポーランドEMフォーラム2010」が開催されました。サブタイトルは「食物連鎖の中でのEM技術」です。

プワヴィ国立獣医学研究所はEUの重点施策の一環として、世界最先端の獣医学研究所として機能しており、大学院生50人余が博士課程を持つヨーロッパを代表する研究所です。この研究所では、畜産にEMを活用することによって、環境問題の解決と有機農業の振興および家畜の病気の予防と飼料の効率化等の総合的な検討を行い、「EMの活用は食物連鎖のプロセスで環境や食の安全性に極めて効果的である」という結論を出しています。

そのため、EMがEU諸国において初めて政府から正式な認可が得られた国でもあり、今回のフォーラムは、このような意味でも極めて意義深い国際フォーラムとなりました。

7年前にワルシャワ農業大学の協力で国際EMフォーラムを行いましたが、当時はポーランドにEMが普及し始めた頃でした。したがって、ポーランド側の発表は少なく大半がドイツ、オランダ、オーストリア、スペイン、スイス等の先進地における事例で、可能性の大きなポーランドを後押しする形で行われました。

今回のフォーラムの発表の大半はポーランドで占められ、特に畜産分野はヨーロッパまたは世界をリードする内容の高いものとなっていました。特に国立獣医学研究所とグリーンランドEMテクノロジー社の「EMプロバイオティクスの無限なる可能性」の研究成果は、20%増収で抗生物質や畜産薬品が不要となる可能性を明確に証明したもので、即実用的なものとして注目されました。同時に発表された「家禽の細菌病予防とEMの役割」では、養鶏分野でも無投薬が可能であることを明確に示してくれました。

この成果は、今回発表のあったドイツ、オランダ、スイス、ベルギーの畜産関係の発表の裏付けとなる根拠ともなり、この7年間でポーランドのEMの普及は東西ヨーロッパをリードするまでに成長しています。また、その総めとして国立獣医学研究所の所長であるタデウシ・ヴィヤシカ教授の、「食物連鎖の品質保証と安全の一環としての効果的なEMプロバイオティクス」と題する講演は、畜産関係者のすべてが納得するもので、今後の畜産業のあり方を示すものとして、参加者全員に感動を与える内容となっていました。

すなわち、畜産分野において、EMをプロバイオティクス(生物健康飲料)および衛生管理技術としてあらゆる分野に活用すると、畜産薬品の大半が不要になる。そのことは経済的なメリットだけでなく、家畜や人間の健康にとっても極めて重要なことである。同時に肉質や牛乳、卵などの品質が著しく改善され、微生物や化学物質の汚染も防止できるため、EMは「食物連鎖の品質保証」の最も重要な課題の解決の要となっている。

また、悪臭を伴う畜産の環境問題もすべて解決できるばかりでなく、家畜の糞尿もすばらしい有機肥料となる。その肥料は無投薬であり、有機農業にも活用できるだけでなく、作物の収量や品質を著しく高める効果もある。それらの結果は、農作物のすべてに対し「食物連鎖の品質保証」をより確かなものにする力となる。その外、加工過程においてもEM技術を活用すれば、より高度で積極的な「食物連鎖の品質保証」の達成が可能である。ということです。

EMを活用した「食物連鎖の品質保証」

この内容については私が長年にわたって主張し続けてきたことですが、ポーランドは国の方針として、EMを活用した「食物連鎖の品質保証」を着々と進めています。 私は全体の総括として、「EUで畜産用にEMを国が認可したのはポーランドのみである。このことは法的しがらみの多い他の国々では不可能に近いことで、EM活用の大半は畜産農家の自己責任で行っている状況にあり、国策にするにはかなりの年月が必要である。すなわちポーランドは、ヨーロッパはもとより世界において、EM活用の独走体制に入っており、このまま研究を発展させると世界をリードする畜産研究と畜産王国および有機農業王国になることが可能である」と、お話ししました。

ポーランドは、社会主義からEUの仲間入りをしたため、7年前は貧しい国という印象であったが、今は経済はかなり活性化し、目を見張るような状況になり始めています。ポーランドは広大な農地を有し、東西ヨーロッパの要の部分に位置しています。この地勢学的な条件を踏まえ、これまでの活動を加速すれば、社会主義を経験した国だけに、これまでの資本主義とは異なる独創的な未来型社会をつくることが可能であると期待しています。

その他、作物栽培の分野では、EMを活用すると腐植が増え、土壌中のリンやミネラルの含量が増えるという報告もありました。EMが土壌中の光合成微生物の活動を促進すると同時に、リン酸を溶かしたり不溶性のミネラルを可溶化するために起こる現象です。 この件については、15年前にオランダのワーゲニンゲン国際農業大学でも確認されています。従来の土壌肥料学では理解できない現象ですが、EMの世界では常識になり始めています。

また、クロアチアからは下水処理場や種々の汚水処理場にEMを投入し浄化源として美しいアドリア海を守る活動が報告されました。規模も投入か所も多く、かなりの成果を上げています。下水施設の整備が十分でない地域では即応用できるもので、イタリアを含め多くの国々に広がってほしいものです。

スロベニアからは、「セラピー効果のあるEM入り化粧品」の発表がありました。EMフォーラムで化粧品関係の初めての報告でしたが、材料を厳選しEM効果を高める種々のノウハウが積み重ねられていました。サッカーのスロベニア代表も活用しているとのことでしたが、今回はワールドカップで善戦しましたが惜しくも予選突破を逃してしまいました。

今回はバルト三国をはじめ、バチカン半島、ウクライナ、ロシアなど東ヨーロッパからの参加者も多く、今後の東ヨーロッパのEM普及に対しても極めて重要なフォーラムとなりました。

今回フォーラムの3週間前から大雨が降り続き、100年ぶりの大洪水が各地で発生したとのことです。広い所は4000〜5000ha余りも水没し、飛行機からも見える広い場所が住宅の屋根まで浸っていました。

ポーランドのEMを製造しているグリーンランドEMテクノロジー社の近くでも、1000ha余りが水没し大きな被害が出ていましたが、衛生対策にEMを積極的に活用していました。被災の規模があまりにも大きいため、EM研究機構がフォーラム名義で3万ユーローの基金をつくり、参加者からの募金協力を得て、被災地のEM活用に役立てるよう提案しました。
この基金の活用は順調に行われており、多くのお礼のメールが届いています。

(2010年7月1日)
PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。


 

 

 

会場となった国立獣医学研究所

フォーラムの立看板

会場風景

基調講演

グリーンランドEMテクノロジー社

洪水8日後

洪水8日後

洪水現地での説明

水が引いた部分

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