昨年11月に行われたEMフォーラム(沖縄)に、タイ国の社会開発省の大臣と、エジプト農業省の次官と局長、および環境省の局長をはじめ、海外から多数の要人を迎えることができました。EMは世界150余の国々に広がっており、その大半は民間主導で政府が後押しする形になっていますが、エジプトのように農業省や環境省が独自にEMの製造工場を持ち、当初から政府主導型という国もあります。
タイの場合は、サラブリ県にある自然農法アジア人材育成センターを中心にEMの指導者養成と一般研修会を行い、20年余で100万人を超える人々がEMの使い方を指導できるようになりました。今では、地方において、学校はもとより病院など、あらゆる分野にEMが活用され、政府の関係部局も積極的に協力しており、EMのモデル国家として着々と成果を上げています。
タイ国の社会開発省のイッサラ・ソムチャイ大臣は昨年、2度も沖縄へ来られました。1度目はEMの活用状況の確認、2度目はEMフォーラムに合わせ、EM研究機構と協定書を交わすためでした。タイの住宅公社のEMの活用は、下水処理や衛生対策、生ごみのリサイクル、自給菜園活動、住宅建築、大型ダムの浄化など大々的に広がっていますが、住宅公社は社会開発省の所轄となっています。
新しく社会開発省の大臣となったソムチャイ氏は、10年以上も前から出身地であるウボン県で貧しい農民の自立のために、EMの活用を積極的に進め、ご自身もEM技術のエキスパートを任じています。新大臣は就任当初から住宅公社のみならず、社会開発省全体でEMを使うべきであるという方針を決め、そのためにはEM研究機構の確たる協力が必要であると判断し、再度沖縄へ来られたのです。
タイ国における10年後のEMの役割
協定書を交わしたあとに、ソムチャイ大臣からタイ住宅公社の36周年記念特別講演を依頼され、2月15日にバンコクで、「タイ国における10年後のEMの役割」というタイトルでお話しすることになりました。参加者は800人以上、会場には様々なEM活動の事例が展示され、EM産品の即売場も設けられ、大にぎわいでEMの熱気であふれていました。
私の講演の前に、社会開発省も協力しているタイ南部の、イスラム教徒の貧しい農民の自立支援事業の成果と、ワット・シン県立病院におけるEMの活用と、住宅公社のEMの普及状況についての報告がありました。
タイ南部のイスラム教徒の多い地区では爆弾テロが絶えず、軍にも多くの犠牲者が出て、国連もタイ国軍の行き過ぎに警告を発するくらいに最悪の状態となっていたそうですが、EMによる「足るを知る経済」の自立活動によって、解決に向けてほぼ満足すべき結果が得られているとの説明がありました。その件については次回に詳しく述べたいと思います。
タイ住宅公社のEM活動については、数年前にもEMフェスタで発表してもらいましたが、今回の報告では、その規模がさらに拡大し、活性液のつくり方や施用の方法が長期的な視点でシステム化していることが目立ちました。すなわち、これまでのスポット的な人海戦術から、EMをコンスタントに施用するシステムで、洗濯では洗剤を使用しない使い方に変わっていました。水質浄化やごみ対策、ハエやカなどを含む種々の衛生対策にも、薬品を使うよりもまずEMを使うという体制に変わっており、コストも10分の1以下で、地域の住民の協力も得られ、様々な余得が発生し、住宅建築や健康への応用も広がっているとのことでした。
ワット・シン病院もEMの飲用はもとより、水処理、洗濯、廃棄物の処理、掃除などあらゆる場にEM技術が活用され、全国のEMモデル病院として著名な存在となっています。薬剤にかかるコストが20分の1以下となり、病院の運営にEMは不可欠なものとなっています。4年前に訪問したときには30内外の県立や国立の病院がEM化しつつあるという話を聞きましたが、今では全国で80以上の公立病院でEM化が進んでいるとのことです。
厚生省もこの成果に注目し、積極的に後押ししており、ワット・シン病院のワットチャイ院長は、これまでも何回となく厚生省の主催でEMの活用について講演を行ったとのことです。
EMによる「足るを知る経済」
この3件の報告を受け、私は10年後のタイ国におけるEMの役割についてお話しました。まず、EMの効果の本質は抗酸化作用と非イオン化作用と、蘇生的なエネルギーを賦与する触媒的な三次元波動によるもので、生命体、非生命体にかかわらず、この世に存在するものすべてにプラスの作用を及ぼすことを説明しました。
次に、その効果を最大限に発揮させるには、「EMを水や空気のごとく生活化し、あらゆる場面に活用すると環境は積極的に浄化され、農業が人々の健康を守り、自然資源を豊かにし、貨幣経済に左右されない『足るを知る経済』を実現できるようになる。建築物や道路などの公共財は現在よりも3〜5倍も長く使うことも可能になり、省エネ効果も高まり、機材の寿命も数倍となる。もしもEMの力を社会のあらゆる分野に組み込むようになると、人々は健康で幸福になると同時に今の国家予算は半分から3分の1ですむようになる。そのことは未来型の望ましい国づくりが可能であることを示すものであり、10年後にはEMがそのような役割を果たせるよう、社会開発省で積極的にEMを普及してほしい」旨をお話ししました。
総括を行ったソムチャイ大臣は、「自分が年齢より10歳以上も若く見られるのは、10年以上も前からEMを飲んでいるためである。また、様々な現場でEMの効果を確認しており、比嘉教授の提案の通り、今後はさらに社会開発省として積極的にEMを普及したい。そのためにはまず、生活の中でEMを使い、病気にならないために食事と同様にEMを飲むべきである」と強調し、壇上で実際にEMを飲んでみせていました。
次の日は、陸軍と自然農法環境財団の共催による官民のEM関係者を対象に、「EMによる足るを知る経済」について講演を行いました。タイ国では1997年以降度々、経済危機に見舞われていましたが、国王は貨幣経済に左右されない自給自足の自立した足るを知る生き方を指導しています。この成功のモデルになったのが、タイ、カンボジア、ラオスに隣接する黄金のトライアングルと称されたウボン県の麻薬栽培地帯のEMによる自立の成果です。このウボン県は社会開発省のソムチャイ大臣や、南部のテロ対策にEMで成功したピチェット中将の出身地でもあり、両氏とも、このプロジェクトを指導したリーダーです。
講演では、「『足るを知る』とは仏教の悟りのようなものですが、貧乏で我慢しながら悟るのは容易ではありません。お金をかけず、すべての廃棄物を生産資源に変え、過不足のない食料を楽しく生産でき、物を大切に機能よく長く使い、病気にならない条件を整えることが「足るを知る」原点であり、同時に自分の存在が社会に役立っていることが肝要です。すでに明らかなようにEMを上手に使えば、このことは誰でも達成できます。このポイントについては、皆様はよく知っていることと思います」とお話しました。その後の質問の内容もかなりレベルの高いものであり、タイのEMの新たなる進化を感じさせてくれるものでした。
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