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マレーシア、ペナン州の世界EMボール記念日の成功のシステム

前号ではペナン州で120万個のEMボールが河川や湾岸の浄化のために投入された世界に類例のない大イベントについて紹介しました。地元紙はもとよりマレー全土にこのニュースが流れたため、EMの情報を確認しないまま、EMを大量に施用する方法は微生物の生態系を乱す上に効果も疑問という大学の専門家のコメントも出て、論議も盛り上がったようです。2か月余りも経過した今日、その効果は抜群で、地元ではEMを疑う人は皆無となり、州政府はこの成果に大満足で、来年も8月8日に100万個投入イベントを行いたいので今から日程を確保して欲しいという連絡が来ています。

ペナン州は前号で述べたようにEMによる州づくりを積極的に進め、1次2次産業や環境全般はもとより、女性・家族・地域社会開発省では「EM生活」を積極的に進めています。この活動の成果に注目した対岸のペラ州でもEMの応用に注目し州政府と大学関係者が協力し、森林の保全管理、水産業、畜産、農業に対し大々的なEMの活用試験を始めています。

8月9日に私はペラ州のリーダーや研究機関の関係者にEMのセミナーを行い、その具体的な実施についてのポイントを説明しました。
「EMは生き物であり、取り扱う人の力量ですべてが決まり、結果がすべてデータである」
「良質の活性液をつくりEMの密度が高まるような施用方法を中心にし、効果が出るまで使い続けると、その後は極めて安定的、かつ持続的な成果が得られる」
「EMは嫌気的な性格が強いため酸素の多い現在の地球のレベルでは常にマイナー(少数派)的存在で、人間の管理なしにメジャー(多数派)になることは困難である。したがって、EMの効果を持続的に高めたいと思えば、常にある一定量のEMとEMが増えるための基質(エサ)を施用し続けることがポイントであり、放置すると条件によっては数か月で元に戻ってしまう」
「EMは生物学的手法の応用なので、過去のデータや結果は参考にはなっても、それを上回る扱いを心得ていれば失敗することなくさらに大きな成果を上げることができる」
「化学肥料や農薬や無生物的資材はデータがすべてであるが、EMにこの考えを適用すると再現性がなく、期待通りの結果が得られない」
「このような心得でEMを使った現場はすべて成功しているが、なぜか学者や専門家が使うと期待した結果が出ず、否定的な意見が大半を占めるようになる。この根本的な過ちは、EMを化学物質または生命のない物質と同じように扱った結果である」
「すなわち1uあたり何cc使ったが効果が判然としないなどなどであるが、単位あたり何リットル使おうがEMが増え定着し抗酸化物質が産生され、その機能性が発揮されなかったら効果は出ず、EMを否定したデータはこのようなEMの特性を無視した実験方法や使い方によって生じたものである」
「したがってEMに効果がないのではなく、効果を出す使い方をしなかっただけである。EMはすべて使う人の力量と責任であり、これを否定する学者や研究機関は、その力量と責任がなかっただけである」

このくどくどしい説明を聞いたペラ州の研究者はすっかり納得し、これまでマレーシアで出されたEMの賛否を無視し、良い活性液をつくり効果が出るまで使い続けることを約束してくれました。2か月後、こんなに簡単ですごい成果に驚いているという連絡を受けました。

「効くまで使い続けなさい」というと、一見、乱暴で無茶苦茶な話のように聞こえますが、微生物に限らず、生物の世界はすべて多勢に無勢の法則に従っています。そのためにEMの効率的な増やし方や良い活性液を安価でつくる方法を公開しています。したがってEMを使い続けた人たちは例外なく成功しており、うまくいくのは当たり前と思っています。

ペナン州を一挙にEM化したスーさんは、そのことを十分に心得た上に安価で大量の活性液(1回1〜10トン)をつくる装置を考案し、関係者が心おきなく、EMを十分に使えるようなシステムをつくり上げたのです。もちろん、この成果は前号で紹介した澤田さんの協力なしにはできなかったことですが、スーさんはEMの本質を見抜き、これを社会化するために15年余りの年月を積み重ねた上に、今回のEM団子100万個投入イベントに挑戦したのです。

もともと難問を抱える多数のデベロッパーのコンサルタントとして著名な成果を上げた人であり、芸術的な素養も深く、精神世界にも精通しており、EMのことは何を話してもごく当然のごとく理解し、即応用する力量を持っています。このようなスーさんが60代に入って、EMを社会化することが自分の人生であるという覚悟を決めたのです。まず、ペナンをEMの第2の故郷で世界の冠たるモデルにすることと同時に、マレーシア全土をEM化するという目標を定め、それ相応のシステムをつくり始めたのです。

そのために、澤田さんの協力のもとに河川浄化、畜産公害対策、農業などのモデルをつくり、公開し、行政の協力を得ながら実施者が絶対に失敗しないように徹底したケアを行ったのです。

すなわち、スーさんは従来の方法にEMを便宜的に使うというやり方をやめて、EMに合わせて方法を変えるというシステムの大転換を実行したのです。私たちは長年にわたって商品経済という習慣が身についており、その商品をマニュアル通り使って結果が出なかったらメーカーに責任を追及することが慣例となっています。すなわち、うまくいかないと自分には責任はなく、常に相手に責任を追及するという社会的DNAが定着しています。EMはそれとは逆に、すべて使う人の力量と責任という原則があり、この原則に従ったシステムづくりが正否を決定することを肝に銘じておく必要があります。

北海道の三笠市で行われているEMモデルタウン推進事業も、EMに合わせた社会システムの構築を考慮したものであり、財政的に困窮している地方自治体を根本から変える力を持っています。

新型インフルエンザはとうとう、パンデミック(世界的大流行)となってしまいました。これまでの報告によると、「EM生活」をしている関係者はインフルエンザとは無縁の生活を送っています。今後の対策も含め、EMを空気や水のごとく活用する「EM生活」をさらに徹底する必要があります。

(2009年11月1日)
PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。


 

 

 

 

 

 

スーさんと1トン自動活性液培養装置

3トンの自動活性液培養装置。パソコンで遠隔操作可能

団子づくりの現場

投入風景

投入後

汚泥減少チェックのポール

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