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EMを活用した中国の自然農法の普及活動

中国にEMが導入されたのは1991年で、そこは、中国の土壌研究の中心的役割を果たしている南京土壌研究所でした。同時に江蘇省農業科学院と南京農業大学の協力も得られ、期待通りの成果が上がったため、南京にEM製造工場を設立することになりました。1993年のことです。南京にあるEM研究機構の事務所は、その工場を管理するために設置され、今では中国全土にEMの種菌を供給しています。

その後、北京農業大学(現中国農業大学)や中国政府の農業部も協力するようになり、様々な紆余曲折(うよきょくせつ)を得て、今では中国全土にEMは知られるようになりました。

中国でのEM研究は、水産を含め多様な分野で行われており、EMに関する研究論文は2500余、EMでの学位取得者も多数おり、近い将来中国が世界最大のEM大国になるのも時間の問題と言えそうです。

(財)自然農法国際研究開発センターは1991年から、中国でのEMを活用した自然農法の普及に携わってきましたが、その活動をさらに推進するために1995年以来、中国から短期(1~3か月)と長期(1年)の研究者を受け入れ、中国における自然農法の普及に様々なフォローアップを行ってきました。

研修終了者が60余人となった2006年に、中国自然農法普及協会を設立し、これまで個別に対応してきた成果を発表する交流の場として、自然農法と有機農業の国際フォーラムを行いました。以後、このフォーラムは毎年4~5月に行われ、主催地の行政も積極的に協力しており、EMを活用した自然農法は着実な広がりをみせています。

昨年の第4回フォーラムの後、さらに自然農法を発展させるためには、現地における成果検討会を強化した方が効果的だという総意になり、2009年のフォーラムは現地での技術指導が中心となりました。

北京市大興区留民営の有機農業村

北京市大興区留民営の有機農業村は、中国の生態系農業のNO1と評価されており、年間の来訪者も10万人を超えています。メタンガス発電を含めあらゆる有機物は、くまなくリサイクルされ、研修施設やレストラン等々も充実し、観光産業とリンクし、生産物の大半が北京の大型店に出荷されています。

生産面積は130ha、有機農業に確たる信念を持ったリーダーによって1982年からスタートし、土地は協同所有方式を変えず、今では村民は福利厚生の行き届いた会社の社員であるばかりでなく、年間を通し様々な楽しいイベントで村民が1つの家庭のように親密になっており、まさに社会主義に望ましい姿を実現しています。

北京市の農業部は、この留民営の有機農業村を中心に、EMの活用を積極的に普及する考えを持っており、大興区梨花村におけるEMオガ(クズ)発酵床養豚や北京市の農林科学院センターでの実証事例も見せてもらいました。

中国では様々な残留農薬問題が発生し、国際的な信用失墜になっていることも十分に認識されており、有機農業や自然農法に対する取り組みも以前にましてかなり真剣になっています。

また、最近ではEMを活用したオガ発酵床養豚は、中国の養豚革命として高く評価され爆発的な広がりをみせています。当初は日本からのオガ養豚として普及しましたが、数年で限界となったため、EMに切り換えたらすべての問題が解決したとのことです。

オガクズを1mの厚さに敷いて、米ヌカやフスマ等を混和しEM(活性液)を十分に浸み込むように散布し床をつくります。その後飲み水に500倍くらいのEM(活性液)を入れ、月に1~2回、発酵床にEM(活性液)を注入するという簡単な方法です。

この方法ですと、EMの発酵熱で床の水分はすべて蒸発し、糞もEMが完全に分解し無害化するため、ハエやカの問題はもとより養豚にかかわる衛生問題や環境問題はまったく発生せず、4~5年経過した発酵床の有機物は最良の有機肥料となります。豚肉のコレステロールも低く、栄養的な評価も極めて高く、ほぼ無投薬のため(大半は完全無投薬)品質も極めて秀れたものとなっています。

山西省では、1万頭規模のEMオガ養豚が成功し、近々4万頭に広げる計画で大規模な養豚団地の建設が進められています。4月に現地を見た副首相は「これは中国の養豚革命である」と絶賛し、中央のテレビやマスコミのほとんどがこの成果を取材しています。EMもやっと政府主導型になり始めており、今後の進展を楽しみにしています。

山東省済南市のEM活用の自然農法とEMオガ養豚

今回は北京市の他に済南市でのEM活用の自然農法村とオガ養豚のモデルの現場を見せてもらいました。済南市の場合は今年からのスタートですが、これまでのEMの活用のノウハウが十分に活かされており、ボカシや活性液の質もかなりのレベルに達しています。

山麓に囲まれた30haの地域で地形も変化に富んでおり、「花木や果樹、薬草等も組み合わせ、自然生態系が豊かになり、すべての場所(谷や丘)が生産緑地になるようにEMで管理すれば、中国はもとより世界的なモデルになり得る」というアドバイスをしました。先に述べた留民営のモデル農場は真っ平らですが、済南市の場合は山あり谷ありのため、この両方のモデルが今後の中国の自然農法をリードし得るものと考えています。

済南市の大型EMオガ養豚団地を計画している試験モデルは、従来の方式よりもより簡便となっていました。すなわち旧来のように床にコンクリートを打たず、土の上にオガクズを敷く方式で、外壁をブロックにし、パイプで農業用ハウスをつくるような簡単な方法がとられていました。

この場合、床の土にEMを十分に吸収させ、EMの菌層をつくってしまえば、万が一の地下水汚染も防げますし、土の力も十分に活かすことができます。今回の現地指導で強く感じたことは「食の安全性と環境に対応する」という中国の決意です。この決意の通りに発展すれば、中国はもとより世界の農業に大きく貢献し得るものと期待しています。

(2009年6月1日)
PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。


有機農業村のある留民営の役所

有機農業村のキュウリハウス

有機農業村の視察の様子

留民営のメタン発電所

梨花村のEMオガ養豚

北京農林科学院の試験場

北京農林科学院の副院長(前列左から2人目)と

済南のEM発酵床養豚。オガクズの厚さは1m以上

済南のEM自然農法村

済南市EM発酵床養豚場をバックに記念写真

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