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(続)第13回自然農法・EM技術交流会京都大会
環境・菜園分科会

EM普及協会の活動の課題は「EMの社会化」となっています。今回の環境・菜園分科会でも、そのテーマにふさわしい力作ぞろいの発表となりました。詳しくは「EM活用技術事例集2008」を活用いただければと思いますが、その中に、これまでの環境菜園分科会の歩みと各々の分野における背景と目標を提案し、これからの活動の方向性をより明確にしています。

1.私たちの海にアサリを!

愛媛県上島町の弓削(ゆげ)の島でアサリが戻って、地域が活性化した感動的な報告です。会長の村瀬さんは大阪での仕事をリタイアして余生は島のために役立ちたいと考え、帰郷したそうです。区長就任時に汚染された故郷の海を何とかせねばと考えていた矢先にEMのうわさを聞いて、大三島町の上浦小学校を訪ねたのが事の始まりです。村瀬さんの話です。「その小学校でちょうどEMボカシをつくっていた小学生に『EMは効くのかい?』と何気なく聞いたところ、『おっちゃん、EMを使ったことがあるんか?EMを使ったことがないのにそんなことを聞くな、使ってから聞いてほしいね』と強烈なハッパをかけられました。何という生意気な小学生かと思いましたが、この自信は何なんだと、小学生が浄化した河口を見に行きました」。

この実績に、見学に行ったメンバーを中心に、平成16年2月から海の浄化をめざしEM活動を開始、平成17年にNPOゆげ・夢ランドの会(250名)を設立し、その後は小、中、高校をも巻き込んで島ぐるみの運動を展開、平成17年7月に「引野の浜に大量のハクセンシオマネキが帰ってきた」という実績と同時に、平成18年8月、ついに「アサリが戻ってきた!」となり、わずか1年半くらいの間で海を甦らせる成果を上げています。

それら一連の活動はNHKでも紹介され、その後、多くマスコミに取り上げられ、必然的に島の活性化に結びついています。中でも「高円宮杯全日本中学校英語弁論大会」で弓削中の谷崎さんの「EMのつち団子の力」と題した発表が準優勝に輝いています。その内容は、EM活動による楽しく生き生きとした島の人々の真のつながりと未来への希望を、力強く語っています。

EM活動によりアサリが戻ってきたという話は全国に多々ありますが、弓削の場合はその活動が島全体に広がり、人々が「EMで甦らせた島」として確たる誇りと自信を持っていることであり、EMの生活化と社会化の代表例ともいえるものです。

2.千葉県白井市におけるEMの社会化の活動

昨年の東京大会でも、小学校と福祉施設と市環境課とEMボランティアの協力で「ヘドロの川がメダカのすむ川へ!」を実現した若倉さんの報告も、EMの社会化にとって必要不可欠なものと言えます。すなわち、EM活動を熱心に行い、EMの知識の深い人が市の環境委員や市の環境活動に積極的に参加協力し、多くの関係者にEMを理解してもらう活動続けています。そのような成果もふまえ、市選定の「補助金評価委員」はEMの幅広い効果を認め、「EM白井野菜の会」に補助金が交付されたことに結びついています。

「情報を集め、公的モデルをつくる」「さらに公的な様々なEM情報を集約し、市が安心してEMを普及できる裏付けを準備する」「実際にあたっては市の広報も積極的に活用し、EMのボランティアが総力をあげて支援・協力し、絶対に失敗させない」「安全、快適、低コスト、高品質で持続可能なまちづくりをみんなで楽しみながら継続する」。白井市の若倉さんをリーダーとするEM活動は、このようなEMの社会化のプロセスを歩んでおり、極めて先進的でスマートな事例と言えます。

3.福祉施設からEMの社会化

EMの社会化の究極は、障害を持ち自立が困難な人たちの自立ということになります。当初は、福祉施設でボカシや活性液やEM石けんをつくり、販売することから始まりました。その次にEMを介したボランティアの協力で地域の環境浄化に取り組んだり、内外のEM処理の生ごみを活用し、無農薬野菜をつくったり、EM養鶏やEM食品加工などなど、EMの普及センター的な役割を果たし、地域にとって必要不可欠な存在となりつつある福祉施設が各地に広がっていることは嬉しい限りです。

今回の島根県大田市「知的障害者通所授産施設ひまわり」の事例はその代表といえます。このレベルに達するためには発表した雲石さんのように、EMに詳しく、しかも確たる使命感を持っている指導員の存在と、それを支えるボランティアの協力や行政の配慮は不可欠なものです。

私はEMのボランティア活動を長く安定的に続けるためには、その拠点を福祉施設において続けることに尽きると考えています。「ひまわり」のようなレベルに達するといろいろな角度からボランティアに協力をお願いすることができ、また行政においても積極的にその活動成果を社会に広めることが容易となります。

障害を持った人たちのひたむきな努力は健常者を勇気づけたり、優しさやいたわりの心を育む力があります。このような社会全体にとって大切な力を発揮させるためには一般の人々との接点をできるだけ広げる必要があり、「ひまわり」のような福祉施設が1つでも多くなることを切望しています。

4.EMによる環境改善が人間の行動に与える影響について

EMの普及が軌道に乗り始めたころに、「比嘉先生はEMのことをすべて公開と言っているが隠していることが1つある」と言われました。「なぜ先生は、EMは人の心を変えると言わないのですか」ということでした。この件については間接的にお話ししていたつもりでしたが、EMを本当に理解してくれる人々にはEMによって人間の性格が変わることも話してきました。

今回発表した兵庫県川西市の教育委員会の大田さんも、そのことを十分に理解した上で4~5年かけて学校にEMを導入することで子どもたちの変わり方を確認し、「EMによる環境改善が人の心を変える」ことを実証したのです。環境が悪いのも、心が荒れるのも根は同じでフリーラジカルによるエントロピーの増大ですが、そのことは十分に理解されていないのが現状です。

したがって、EMによる蘇生作用が高まれば心もその方向へ変わることは当然ですし、EMを楽しく使っている人々は皆さんいい人になります。大田さんの発表は実に感動的なものであり、EMの社会化の根源的な答となっています。紙面の都合で詳細は割愛しますが、この情報は『EM活用技術事例集』やWEBエコ・ピュアレポートでも得られますので、ぜひお読みください。(以下次号)

(2008年4月1日・毎月1日更新)
PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。


 

 

 


NPO法人ゆげ・夢ランドの会の村瀬忍会長


EM白井野菜の会は事例集での報告となった


「ひまわり」の雲石和仁主任指導員


「ひまわり」の作業の様子を紹介


川西市教育委員会の大田雅弘副主幹


川西市では学校へ行くのが楽しいという生徒が増えている


熱心に聞く参加者。国立京都国際会館にて

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