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有用微生物応用研究会
第13回自然農法・EM技術交流会京都大会

2月16~17日に、上記の大会が京都国際会議場で催されました。分科会に700人、フォーラムには1100人の参加があり、13年を締めくくる充実した大会となりました。本大会にご尽力いただいた関係者に対し心よりお礼申し上げます。この大会の基本的姿勢は「自然から学ぶ生き方を求めて」であり、今回は「きれいな地球を子どもと孫に」がサブタイトルとなりました。

EMを空気や水と同じように日常的に使う、すなわちあらゆる場面でEMライフを実行すれば必然的に「きれいな地球を子どもと孫に」残せることは、改めて強調するまでもありません。

本大会がスタートした平成7年には現場におけるEMの効果の有無から始まり、少ないEMをいかに上手に使うかという技術的なことが中心となっていました。その後、活性液や発酵液の活用が一般化するにつれ、効果が出るまで使い続けるという生態的な発想に変わり、様々な活動が展開されるようになりました。

したがって、当初の数年は農業分野が中心となっていましたが、平成10年から環境分科会がスタートし、平成13年には菜園分科会も加わり、EMの社会化の成果が発表されるようになり、横浜、東京、京都の大きな国際会議場を満杯にする大会が続いてきました。この間に各地区での様々なEM活動は着実な成果を上げ、国の施策として取り上げてもらうための署名運動も関係者の意識をさらに高いものにしてくれました。

その後、この運動はツルネンマルテイさんを中心とした国会における有機農業推進法の成立に大きな力となり、平成18年12月には、この法律によってEMの法的な戸籍が成立しました。有機農業推進法は、国や県や市町村は有機農業を推進せねばならないという義務を負った法律で、そのための予算措置はもとより、有機農業の先進的な情報を集め、生産者を指導しなければならないという内容になっています。

これまで、EMを使った望ましい自然農法や有機農業の実績を普及しようと役所に協力を求めても、門前払いか担当者の裁量に任されており、担当者が変わると「元の木阿弥」となってしまい、歯がみした思いをもった人は数限りありません。

有機農業推進法の成立は、このようなジレンマをすべて解決したばかりでなく、農水省も基本計画を立て、有機農業モデルタウンに関する予算も計上しています。本計画では県レベルでは数年以内に、4~5年以内には全国の市町村レベルで有機農業を推進するための具体的な施策を着々と実施し始めています。今回のパネルディスカッションに農水省の環境保全型農業対策室長の福田英明氏が参加し、有機農業の具体的な推進方法や、その意義について述べられたことは画期的なことであり、日本の農業の革新的な展開につながるものと言えます。

日本の自然農法の未来像

これまで述べてきたように、本大会は大きな歴史的な目標を達成しました。したがって、今後は、さらに発展的に自然農法やEM技術を地域に定着させ、EMの社会化をより徹底させる必要があります。そのため次年度からは農業部会と環境・菜園部会を分けて別々の地域で行うことになりました。農業部会はこの夏、長野の自然農法センター農業試験場で、環境菜園部会は中部地区で行う予定となっています。(※詳細は未定です)

近年の日本の農業を取り巻く状況は大きく変わってきました。まず、サトウキビやトウモロコシなどのバイオ燃料の増産は世界の食糧危機に直結し始めています。したがって、日本も必然的に自給率を高めなければならない状況に追い込まれつつあるということです。私は、その件に関しては数年前から強調してきましたが、現実は予想をはるかに超えるものです。ある意味では日本の農業にとって外圧のない神風になりつつあります。

次に中国産食品の安全性の問題が広く認識されるようになり、国産の農産物に対する評価が高まり、自然農法や有機農産物に対し追い風となり始めていることです。また、香港を中心に海外では日本の農産物の評価が高まっており、諸外国の所得の増加とともに日本の自然農法や有機農業農産物が輸出産業として大きく展開できる可能性が出てきたことです。

このような状況と有機農業推進法が成立し、その基本計画の推進が具体的に進行している現実を考えると、日本の自然農法の未来像が見えてきます。そのためには、食の安全は生産者のモラルとして常識にすべきことで、要は食の機能性を高めながら、積極的に人々の健康や環境を守り、自然を保全し、水産などを含めた自然資源を豊かにする農業の確立といえます。

今回の農業分科会の発表内容は、すでにこのような望ましい状況に達しつつあり、EM技術の基本である安全で快適、低コスト、高品質で持続可能な条件をさらに極めれば、農が本当の意味で「国の基」になれることは改めて強調するまでもありません。

このような農の復活は、これまで夢物語に過ぎませんでしたが、有機農業推進法は生産者が本気になれば国は積極的に支援せねばならないという構造的な力を持っています。すでに技術的に、かなりのレベルにあるEMを活用した循環型の自然農法と、この法律の発展的な推進は、日本の農業を一大輸出産業にするばかりでなく、健康立国、観光立国、環境立国を支える大きな力にもなり、世界に対し、未来型社会のあり方を示す日本発の真の文明や文化になるものと確信しています。

(2008年3月1日・毎月1日更新)
PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。


 

 

 


会場となった国立京都国際会館


農業分科会


環境・菜園分科会


参議院議員のツルネンマルテイ氏


熱心に聞く参加者


農林水産省の福田英明氏


「EM技術を駆使すれば有機農業で問題になる衛生問題や病虫害対策に対応できる」と比嘉教授

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