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土に命と愛ありて─ティア
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山中オーナーの父親が社長を務めるスーパーやまのぶ
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佳織の店の周りには緑や花が植えられている
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「佳織の店」オーナーの山中さんと、夫人の佳織さん
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やまのぶは「ごんべいの里」というオリジナルブランドで自然農法産の野菜を取り扱い佳織の店へも卸している(写真下オーナーの父親山中勲さん)
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山中夫妻の次男英二朗くんの成長ぶりを描いた食器や箸置きは、店内でも使われている
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佳織の店を支えるスタッフたち(写真上・店長の前田さん、中・マクロビオティック担当前田さん、下・同原田さん)

お問い合わせ
ティア 佳織の店
愛知県豊田市若草町2−6−8
TEL:0565−36−5733
営業時間
ランチ 11:30〜15:00
ランチ佳織コース¥1575など
ディナー 18:00〜21:30
ディナー佳織コース¥1890など
終日店内禁煙。喫煙所は店外店舗出入り口
【第8回】 愛知・佳織の店
●元気になるレストラン
オーナー夫人佳織(かおり)さんの名前を冠したティア豊田店「佳織の店」。2004年9月、オープンに当たって山中康裕さん・佳織さん夫妻は、「赤ちゃんからお年寄りまで、アトピーの方もそうでない方も、障害がある方もない方も、笑顔で食事が楽しめるレストランでありたい」と、願いを込めました。

「佳織の店」は、トヨタ自動車㈱の在所で知られる豊田市内にあります。名鉄豊田線梅坪駅で下車して、右手に「スーパーやまのぶ」梅坪店を見ながら左手に進み、坂道を上り着いた丁の路に、迎えてくれるように建っています。歩くにはちょっと遠い距離ですが、沈んでいく夕日の行方を眺望できる見晴らしのよいレストランです。入り口は車椅子の人も楽に入れるようにスロープになっていて、そのまま木製のバルコニーへ回って夕日を眺めることができます。98席ある店内もゆったりしたスペースです。

この一帯は山中家代々の土地で栗林でしたが、一部は康裕さんの父親で「スーパーやまのぶ」社長の勲さんが無農薬栽培の野菜畑に使用していたこともあって、店の土台となる土には、EMボカシが肥料としてたっぷりすき込まれているそうです。蘇生型土壌の上に建っている「佳織の店」は訪れるだけでも元気になりそうです。

●マクロビオティックと食育
平日のランチ時の店内は、小さな子ども連れや女性グループで賑わっています。配膳台の一角に“マクロビオティック料理“の表示を見つけました。マクロビオティックとは、穀物菜食を中心とした食養生で、アレルギーや生活習慣病などの代替医療の1つとしても取り上げられています。そのマクロビオティック料理をうれしそうに取り皿に取り分けている女性に話を聞いてみました。

車で10分のところから通って来ると言う女性(32歳)は、子どもを含む4人と食事中で、「ティアは調味料から吟味されていて、安心して食べられるので、アトピーの子どもを持つ友人を誘ってきたのです」と友人と子どもを紹介します。さらに、「私もアトピーなので、やまのぶが主催する『食育教室』に参加してマクロビオティックで体質改善に取り組んでいるところです。レストランに、マクロビオティック料理を置いてほしいと要望したら、早速コーナーをつくってくれました」と感激の面持ちです。

実は、マクロビオティックはもともと康裕さん夫妻が家族の食事に導入していたもので、ひどいアトピーの康裕さんと、その体質を受け継いだ長男の体質改善としてたどり着いた食養生でした。それまでステロイド剤の対処療法と副作用の繰り返しだった康裕さんは、結婚6年目で授かった子どもの将来を想いステロイド剤に頼る治療法を絶って食事療法や自然治療の道を選択したのです。幸い、康裕さんが勤務する「スーパーやまのぶ」梅坪店が無農薬野菜を扱っていたことや、マクロビオティック関係者との出会いがあって、「体をつくる“食”の大切さに目を向けることができたのです」と佳織さんは話します。

子どもの症状は2歳を迎えるころには落ち着いてきましたが、大人のアトピーは簡単に改善されません。かゆみはますますひどくなり、かくことで皮膚は赤くただれ見てくれもよくありません。毎日かゆくて眠れないので仕事ぶりも芳しくなく、周囲から批判を受けることもありました。今だったら、ステロイド剤を絶ったことによる“好転反応”と理解を求めることができても、当時の康裕さんにとっては、本当につらい経験でした。

●ティアとの出会い
家族や友人たちとの楽しいはずの外食も、体に合わない素材や調味料が使われていると体中がかゆくなって夜も眠れなくなり、「外食恐怖症」に陥ってしまった時期もあります。そんな時、康裕さんの両親の勧めがあって、康裕さん夫妻はティア熊本本店を訪ねました。2002年のことです。

前年に旅行で熊本に立ち寄った両親は、ティア本店で食事をしていて偶然に元岡社長に出会います。元岡社長のティアへの熱い思いを聴いた勲さんは、「孫や子どもたちに安全で安心な食を提供するレストランをつくろう」と即断即決、康裕さん夫妻にティア本店行きを勧めたのです。

フリースタイルで豊富に盛られた無農薬野菜のメニューを前にして康裕さん夫妻は、「肉を食べなくとも外食ができる」ことを知らされ、さらに「食べられる楽しさ」「体に合うかどうかではなく、好きなものを選べる外食の楽しさ」を味わいました。

●オープン前の危機
「こんな店が地元にあるとアトピーの人も安心して外食ができる!」と開業を思い立った康裕さん夫妻でしたが、準備期間中に佳織さんは身ごもり、出産。生まれてきた次男は、医師からダウン症と告知されました。この時の胸のうちを佳織さんは、「目の前に白いシャッターが下りてきた・・・」と表現します。

“なぜ?どうして?”と思い悩む中で、“障害児はかわいそう”と決めている自分がいることに気がついた佳織さんは、“これから先、この子がたくさんの人の助けをかりて生きていけるように願いを込めて、私たちも社会貢献していきたい。あの時下りてきた白いシャッターを上げなくては・・・”と気持ちを奮い立たせました。 「子どもたちは、大切なことはやさしさであると教えてくれているのです。山中家に誕生した使命を持っているのです」と、準備期間中も定期的に訪れては夫妻を支え続けている元岡社長は、「『佳織の店』誕生の最大の危機を乗り越えましたね」と讃えます。

●スタッフと第2店舗構想
店舗建設当初から、周囲に「やまのぶが何か始めるらしいよ」と注目され、オープン初日は長蛇の列。店内は大混雑でクレームが続出し、やむなく人数制限をしたほどで、この間スタッフはひたすら頭を下げ続けたそうです。

また、フリースタイルという形式上、食べ残しも多く、残さの量を前にして“食べ物を粗末にすることを勧めているのか・・”と思い悩みましたが、“体に優しい食材を使っているのだから、いつかお客さんの体を通して感じてもらえる、分かってもらえる・・”と気持ちを持ち直しました。

クレームに対しては手書きの返信を心がけたので、10時閉店で帰宅は12時を廻ることがほとんど。半年間は子ども(3歳と1歳)も一緒に店に布団を持ち込んで休む状態が続きましたが、家族で困難を乗り切る想いがあって、「至福の時でもあった」と振り返る佳織さん。半年経った頃からお店の様子が変わってきて、クレームが励ましの内容になりました。

今年4月に店長就任した前田佳宏さんは、「お客さんのニーズに応えたメニューづくりで、おもてなししたい」と笑顔を見せます。前田苺日子さんと原田扶巳永さんは、マクロビオティックを専門に学んできた担当シェフで、「マニュアルではない、体にやさしい料理を数多く食べていただきたい」と腕を振います。お客さんから「料理内容が充実してきている」と評価の声が上がるのも当然です。「食育教室」(やまのぶ主催)も月1回、「佳織の店」で開催されて毎回好評です。

遠方からも多くのお客さんが来店するようになって、両親との間で第2店舗の構想が持ち上がりました。「出店はティアの想いを多くの人に伝えることになり、現在いるスタッフに新たな道を拓くことにもなる」と康裕さん夫妻は考え、結論を出しました。報告を受けた元岡社長が大いに喜び、励ましたのは言うまでもありません。

新店舗「佳織のたからもの」は2007年11月、岐阜県可児市にオープン予定です。 「お店は子どものようなもの」と言う佳織さん。誕生が楽しみですね。[2007/7/20]

(鹿島祐子)

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