6月19日、熊本本店で行われた9周年生誕祭には、ティアに食材を提供する農漁業者や加工・流通業者をはじめとする関係者約130人が全国から参集しました。振る舞われた料理は、生産者の好意による特別仕様の素材が用意され、ティア各店から駆けつけたシェフや店主らによって腕によりをかけた作品に仕上げられました。シェフや店主たちにとっては“晴れの舞台”であり、元岡さんは、成長する後輩たちに目を細めていました。
メニューは、マメ類やゴマなど種子類、ワカメなど海藻類、ヤサイ類、サカナ、シイタケなどキノコ類、イモ類など7品目「マゴワヤサシイ」を基本にして、「もったいないレシピ」でも紹介しているアジたたき身カツやイワシの玄米酢マリネの他、ナスの柳川風、小魚の契り揚げ、黒豚しゃぶしゃぶ、黒豚バラ肉のコンフイなどなど盛りだくさん。料理が完成すると元岡さん自らが産地と生産者を告げ、薦めて歩いていました。
●生産者の心を大切にする視点 出席した人々から心温まる数々の祝辞が寄せられました。雲仙市内で「種の自然農園」を営む岩崎政利さんは、「初めての出会いで、畑の隅に捨ててあった小さな野菜を見つけた元岡さんから私は怒られ、こういう野菜を食材として活かしたいと言われたのです。生産者の心を大切にする視点で、レストランをやっている人にはそれまで会ったことがなかったので、すごいと思いました。厳しい方ですが、その厳しさを自分の農業に活かすことができて喜んでいます」と、出会いからのエピソードを聞かせてもらいました。
著書「食品の裏側」で注目され、消費者に食品添加物の危険な実態を告発している食品ジャーナリストの安部司さんは、ティアとは4年前からの付き合いで、スパゲティー用無添加・無着色の明太子を製造・搬入する間柄。「本物を追求するマニアは多いけど、元岡社長のように具現化している人は少ない。がんばる人が報われないのは、おかしい世の中です。消費者は、健康をとるのか、安さをとるのか自分で選択しなさいと言いたい。これからもティアを応援していきたい」と、ティアの応援団長をアピールしてくれました。
昨年7月から妊産婦にティアの食事を提供している地元の末永産婦人科医院副院長の末永義人・明子夫妻は「妊産婦に与える食事の影響は大きい。ティアの食事を食べたお母さんのオッパイはサラサラで、赤ちゃんは幸せです」と感激の面もちで話しました。生誕祭のこの日は同医院へも生誕祭同様の特別メニューが届けられたそうです。なお、同医院のパンフレットにはティアのメニューが、「命を育む食事」としてアピールされています。
元岡さんが最も尊敬する1人、イエローハット創業者で日本を美しくする会相談役の鍵山秀三郎さんからは、「私は常々講演会などで、『10年偉大なり、20年畏るべし、30年歴史なる』と話しますが、10、20、30年というのは大きな力になることを言うのです。元岡社長は9年にして歴史をつくっています。ひとえに元岡社長の食に関わる心と想いが真摯で、社員の方々がそれを深く理解されて実現しているということです。私も20年後生きていたら、20年畏るべしということで、ぜひお祝いに伺いたい」との挨拶がありました。
それを受け、元岡さんは「ティア本店の立ち上げに鍵山相談役にご尽力いただいた。鍵山相談役に出会っていなければ、ティアは誕生しなかった」と感極まった様子で、傍らの元岡政子夫人もまた、涙を浮かべて2人を見つめていました。
●それぞれにドラマがある 祝辞が始まると、それまで忙しくしていたシェフや各店店長をはじめとするスタッフ一同もフロアーに勢揃いして、来賓が語る“ティアとのドラマ”に耳を傾けましたが、ドラマはスタッフ1人ひとりにもありました。
大手の飲食業に関わりながら、食の安全を求めてティアに行き着いた長崎銅座店店長、自身と子どもとのアトピーを通して安心して食べられる外食のあり方をティアから得た愛知・豊田 佳織の店 店主、元岡さんとともに“もったいない魚”を世に送り出した佐世保「魚市場もったいない食堂」などなど。ドラマは出会いで生まれ、ティアという絆で結ばれています。
元岡さんは「ティアがお客様にとって本当に居心地のいいレストランになり、全国に広がっていくことが、日本の農業と食を守ること、次世代につながる道だと固く信じています」と言います。「安全で安心な本物の食を提供するティアの一員として胸を張れる」(久保山健司 長崎銅座店 店長)。この気概こそが、ティアの歩みの原動力と言えるのではないでしょうか。
●「食べることは生きること」 生誕祭に先がけて、佐藤初女さんによる記念講演とドキュメンタリー映画「地球交響曲第2番」が上映されました。青森県の岩木山麓で、癒しを求めてくる人々を受け入れる「森のイスキア」を主宰する佐藤初女さんは、1994年に制作された「地球交響曲第2番」に出演しています。劇中の初女さんは、訪れてくる人に心を込めて“おむすび“を握り、季節の野菜や作物を使っておいしいものをつくり、傍らに黙って座っているだけですが、「おむすびの祈り」として大きな感動を呼びました。86歳の佐藤初女さんは、現在も各地での講演をこなすなど健在です。マイクに向かうとハッキリとした声でしかも穏やかで、ごく日常の情景や食のあり方を話されるのですが、訥々(とつとつ)と心にしみてきます。
初女さんは、「食べることは生きることにつながる」と説き、「おいしいものを食べるのではなく、おいしく食べることを大切にすると、自然に元気になります」と話します。 おいしく食べるには、面倒がらずに手間と時間をかけて調理することで、「今まで大地に活かされていた緑の野菜が、湯がくことで今まで以上に緑が輝やく瞬間がある」「透き通ってきたタイミングを大事にして調理すると、素材は活かされおいしくなる。おいしく食べることが栄養です」など、さりげない言葉で生命の大切さを訴えていました。
元岡さんも初女さんも、「食」をテーマに“生命の大切さ”を自らの行動を通して説いています。誕生日は「生を受けた喜びを分かち合う日」──鍵山さんは「ティア20周年を祝いたい」と名言を投げかけましたが、出席者も同じ思いを持ったのではないでしょうか。20年後、再び喜びを分かち合うことを願って、また新たな出会いに向けた一歩を踏み出したのです。[200/7/13]