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土に命と愛ありて─ティア
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無肥料自然農法で豆栽培をしている秋場さんご夫妻(写真提供:(有)サン・スマイル)
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(上)元岡社長(下)嶋本さん
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お問い合わせ
もったいない食堂熊本良町店
熊本市良町1−8−5
TEL:096−379−6120
営業時間
ランチ 11:00〜15:00
ディナー 17:00〜21:00
(オーダーストップ20:30)
【第4回】 もったいない食堂Vol.1
●一粒の豆が光り輝く「もったいない食堂」
ティア熊本本店から車で約10分、市内を走る主要道路、国道57号線と県道104号線がクロスする交差点近くに、2005年12月にオープンした小さなカフェレストラン、「もったいない食堂」があります。
カウンターと4つのテーブル席が並ぶ12坪の店内は、大正ロマン風の趣味の良いインテリアでまとめられ、ステンドグラスから差し込む午後の光が、店いっぱいに柔らかな雰囲気を醸し出しています。

副店長の嶋本大輔さんの「いらっしゃいませ」の笑顔に促され、一番奥のテーブルへ。ティアとは違って、ここではお客さんが個々にメニューをオーダーして食事をします。あれこれ迷った揚げ句、最も人気の高い「ロハスセット」(=自然の恵みセット)の季節の果物つき[コスモ]を注文することに。最初に運ばれてきたのは、パレットのような花皿に盛られた色とりどりの豆と漬け物でした。

初めて目にする珍しい豆に喜びつつ箸をつけると、なんともいえないコクと旨味が口中に広がります。塩で茹でられただけなのにこんなに深い味わいなのかと驚いて、思わず皿に並んだ豆たちをしげしげと眺めました。貝豆、とら豆、青大豆、黒豆、金時、銀手亡と、1粒1粒が光り輝いて、まるで誇らしげに胸を張った子どもたちのよう。

「その豆はね、北海道で育った在来種の豆なんです。中には一度姿を消したものが復活した幻の品種もありますよ。そのうちとら豆、黒豆、白いんげん、銀手亡は秋場農場でつくられたものですが、秋場さんは親子二代、55年に渡って自然農法に取り組んで来られました。蔓性の豆はすべて手狩りで、1個1個丁寧に収穫されるんですよ」(元岡さん)

ティアで使われるすべての食材の生産地同様、元岡さんは実際に北海道まで足を運び、秋場さんと会って農場もじっくり見学させてもらったそうです。
「秋場さんがお母さんのお腹の中にいる時に、母子ともに危ない状態に陥って、ある人から農薬を使わない作物を食べるように薦められたそうなんです。それでまず自家用の畑から無農薬を試みて、その作物を食べるようにしたところ、お母さんも元気になって、秋場さんも無事に生を受けた。以降、秋場さんの畑はすべて有機肥料も一切使わない、無肥料の自然農法です。厳しい自然の中で筆舌に尽くしがたい苦労を重ねられ、今日までやってこられました。奥さんがご主人と結婚するときの唯一の要求は、『農薬を使うような農業をしたら離婚します』ということだったそうですよ(笑)」

1粒の豆にそれほど奥深い物語があったとは……。元岡さんの説明に再度、可愛らしい姿形の豆を眺め、手を合わせて合掌し、北海道の秋場さんに心の中で「いただきます」とお断りしてからいただきました。

●急がず、焦らず、感謝して「いただきます」
何種類も取りそろえられた無添加の漬け物も絶品で、これまた1つひとつに舌鼓を打っていると、いよいよロハスセットの到着です。嶋本さんが丁寧に説明してくれたこの日のメニューは、もったいないレシピでも紹介している「たこめし・おむすび」と「ひっぱりだこと[豆豆豆]サラダ」、「生揚げと旬野菜のうまい煮」、それに「ヘルシー豆アジたたき身カツ」、「生姜の黒糖味漬け物」、お味噌汁です。

どれもこれも素材のそれぞれに出逢いと物語のある料理ばかり。デザートに供された岡山県の土井さんという方が1月半かけてつくられる干し柿も、とろけるような自然の甘味に満ちています。しばし取材も忘れ、ゆったりと幸福感に浸って食事をしていると、後ろからお客さんの「おいしい!」という弾んだ声が聞こえました。

「ティアの分店があると聞いて、今日初めてこちらに来てみたんですが、ティアより落ち着いてゆっくり食べられますよね。ティアではお客さんも多いから、つい欲張って取り過ぎて、急いでたくさん食べちゃうんです」
「のんびりした雰囲気でいいですね。1皿1皿料理を味わって、噛みしめて、感謝して『いただきます』って感じです。なんだかマナーも良くなって(笑)」
仕事の同僚だというお二人は、そう語ってくれました。

お客さんの話に元岡さんもうなずきます。
「自然派ビュッフェとしてティアの模倣店が増えてくると、お客様によってはティアも単なるそのうちの1店と勘違いされるようで、質よりは量、品数に目を奪われ、たくさん食べようとなさるんですね。焦って食べ過ぎる欲望レストランでは、ティアの本来のあり方とは違ってきます。そういう意味では、もったいない食堂は材料もティアから運ばれる同じ料理ではありますが、食事のスタイルも違うことで、生産者の方が大切に育てた命をいただくという、本来の精神が守れているのだと思います」

ティア本店ではここ数年、どうしても出るようになった残飯を自前で肥料化処理に挑戦しましたが挫折しています。もったいない食堂では残飯のごみは皆無、つまりお客さんがすべて残さず食べてしまう、というのですから驚きです。副店長の嶋本さんも話を添えます。

「以前、偏食がすごくてほとんど何も食べられないというお客様が来店なさったんですが、試しにロハスセットをお薦めすると、すっかり完食なさって、ご自分でも驚いていらっしゃいました。私もすごく嬉しかったですね」

●人も生かす、もう1つの「もったいない」
日本人の美徳であった、生きとし生けるものをありがたく使う「もったいない」の心。その真心が息づく「もったいない食堂」は、ティアを核とする衛星店モデルであり、もっと小さな単位の地域に密着した、気軽に立ち寄れる町の食堂です。仕事帰りのOLや近所のお年寄りが手軽に買えるお弁当やお総菜まで用意してありますが、ここにはさらに、もう1つの「もったいない」精神が宿っています。

「もったいない食堂は、基本的に団塊の世代と若者とのコラボレーションでやって欲しいと思っています。昭和22年生まれの私もその世代に属しますが、企業社会にいた多くの同輩たちがこれから続々定年を迎え、会社からは不要とされる。それは実にもったいない話です。長年培った知恵と見識を、ぜひいろんな形で若者たちに手渡して欲しい。将来自分の店を持ちたいと夢みる若者と、社会経験豊富な団塊の世代がお互いの持ち味を存分に生かし切れば、やがて独立採算の店を運営することも可能になるでしょう」
年金だって当てにならないこのご時世、団塊世代も働けるうちは働いて、他に依存しない自立した生き方を全うして欲しい。そのためにも「もったいない」のステージを生かしてくれれば、と元岡さんは語ります。

「そして私が常に心を砕いているのは、持続可能な仕組みづくりです。生産者としては持続可能な農・漁業であり、それを消費者につなぐ私たちの立場としては、持続可能な経営です。どれほどティアが注目を浴び、社会に必要だと言われても、経営を安定させ、後継者を残していかねば意味がありません。ですから、次世代を担う人づくりがもっとも重要な課題ですが、個としての自立を目指すもったいない食堂は、その理想的な人材育成の場でもあるのです」

その次世代の一員の嶋本さん(25歳)は、実はまだ入社して5か月余り(2007年4月現在)しか経ちません。しかし、もったいない食堂の責任者として、毎日立派に店を切り盛りしています。
「私は、飲食業界は長かったんですが、ティアに入社して、社長からいきなり店を任せると言われた時は本当に驚きました。『生みの親はご両親だが、育ての親は私がなります』と言われて、感激の余り『勉強させてください、命あずけます!』とついお返事したんです(笑)。ティアのことを知れば知るほど、ここに来て本当に良かった、社長と巡り会って本当に良かったと思います。毎日が感動の嵐、勉強の連続です」

今のところは嶋本さん1人で運営するもったいない食堂も、そのうち団塊世代の大先輩が寄り添ってお客さんを迎えてくれるかもしれません。ティア本店の原価率は40%という業界の常識外れの高さですが、もったいない食堂はそれ以上、お弁当に至ってはほとんど赤字に近い状態です。元岡さんの言うとおり、いかにお客様第一主義の良心的な店であろうと、存続のためには持続可能な経営が必要です。嶋本さんを始めとする若者たちが、これからどういう手腕を発揮して店を育てていくのか、もったいない食堂の畑にはそんな楽しみの種も隠れています。[2007/5/11]

(平野陽子)

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