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土に命と愛ありて─ティア
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末永産婦人科医院:熊本市二本木2-10-32TEL096-352-7280 左奥から末永さん、栄養士さん(下)出産したばかりの若いお母さんたち
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お問い合わせ
ティア熊本本店
熊本市本山町143−4
TEL:096−363−8081
営業時間
ランチ 11:30〜14:30
    ティアコース¥1400など
ディナー 18:30〜21:30
    ティアコース¥1500など
11:30〜15:00・17:30〜21:00は、全席禁煙
【第2回】 熊本本店 Vol.2
●ティアには「やすらぎの風」が吹いている
ティアを訪れると、誰もが「やさしいおもてなし」に出逢います。
スタッフは新しい料理が出来上がると、「今、『白菜と油麩のくたくた煮』、『あじのたたき身カツ』が出来上がりました。どうぞ温かいうちにお召し上がりくださいませ」などと、丁寧な言葉遣いでにこやかに声をかけてまわります。まるで自分の皿が空いた頃合いを見計らったようにかけられたその言葉が嬉しくて、立ち上がるお客さんの多いこと。

どこかで子どもがコップの飲み物を床にこぼすと、スタッフは慌てず騒がす、サッと近づいてサッと汚れを拭いて去って行きます。待ち時間が少し長くなったお客さんには、夏には冷たい、冬には温かい健康茶を運びながら、「申し訳ありません。もうすぐご用意いたしますからね」とやさしい声をかけてくれます。そのすべての所作、立ち居振る舞いがさりげなく、違和感なく、心地よい風が流れるように行われます。「マニュアルとは違った心がありますよね」とあるお客さんは語っていましたが、それもティアの「やすらぎの風」なのでしょう。

細部に至るまで、ティアにはおもてなしの心が宿っています。たとえば、お客さんが感想や要望を書く「ティアへのたより」。それを書くための鉛筆はスタッフが心を込めて1本1本ナイフで研ぎます。入口には専用の可愛いポストもあり、お客さんから寄せられた要望は直ちに店に反映されます。店内の各所に陳列してある無添加の調味料、健康茶、豆や海苔などの乾物類はその場で買えますし、トイレには乾燥器でも完全に乾ききれない水滴を拭うため、「ちょっと拭き用」の小さなタオルまで用意してあります。トイレットペーパーはリサイクルの再生紙。無農薬や有機の食材にそれほど感心はなくとも、一度ティアを訪れたら大ファンになってしまうお客さんが多いのもうなずけます。

●こんな店ができて本当に良かった!
もちろん、ティアのようなレストランの登場を待ち望んでいた人も数多くいます。「こんな店ができて本当に良かった!と思っています。私は小さい頃からひどいアトピーに悩まされていて、洗剤や衣類、食べ物にもずっと気をつかって生きてきたんです。結婚して母親になってからは子どもたちの食事にも気をつけていますが、たまに外食したくても普通のファミリーレストランは怖くて行けないんですよね。でもここなら安心です。1つひとつの料理に誰がつくった野菜か書いてあって、アレルギー表示もしてあるし、調理法も勉強になります。『ティア』に来るようになってウチも16穀米に替えました」

ご主人と4人のお子さん、いとこたちと、賑やかな8人グループで来店していたお母さんはこう語っていました。他にも「外食するならここ」と決めている健康管理に熱心なシルバーご夫妻や、「普段はムチャクチャな食生活しているけど、たまに無性に野菜が食べたくなって、そんな時にここに来ると落ち着くんだよね。カラダがホッとするって感じ」という若いカップルなど、人々の暮らしの中にティアはすっかり定着しているようです。

●オッパイがぜんぜん違う!
大赤字の初年度から出発したティアも、経営は徐々に軌道に乗り、4年目からは黒字に転換しました。「無農薬・有機野菜を使った家庭料理なんて儲かるわけがない」と言われた飲食業界のタブーを打ち破り、現在では自然食レストランの先駆として大きな注目を集めています。開店から9年を経て、時代は大きく変わりました。ティアに寄せる市民の期待もまた、新たな展開を促しています。

ティアから車で5分ほどのところにある末永産婦人科医院では、去年7月のリニューアルオープン時から、妊産婦にティアの食事を提供しています。「オッパイがもう、ぜんぜん違うんですよね。食事って本当にスゴイ! ティアさんのご飯を食べると、オッパイがサラサラで、色も澄んだ乳白色で、赤ちゃんがコクンコクンと喜んで飲むおいしそうなオッパイなんです!」

副院長の奥さんであり助産師でもある末永明子さんは、一緒に訪れた元岡社長に握手をしながら、感極まる様子で話してくれました。ティアの食事を食べたお母さんの乳汁(オッパイ)は明らかに乳質が良好で、手触りはサラサラ、遠心分離器にかけても脂肪層が少なく、色や臭いも最高だということです。と同時にお母さんのオッパイの出もよくなり、偏った食事から起こりがちな乳腺炎などの辛い症状も減ったと言います。

食事は玄米、豆類、野菜など、主に植物性の素材を中心として、バランスよく品数多く取り揃えられます。朝・昼・夕の食事の他、授乳でお腹が空くお母さんたちのためにオヤツや夜食も提供されます。入院中、食事が何よりの楽しみであるお母さんたちにとっては、実に嬉しい心遣いです。

●ティアはいのちを育む供給基地
「ティアは妊娠前からよく行っていた大好きなレストランでしたが、ここに入院してティアのご飯が出ると知って大喜び! 毎日カメラで食事を撮って出産の記念にしています。主人も羨ましいと言ってますよ(笑)」
「赤ちゃんにも私にもいい食事ですから、退院してからもメニューの参考になると思って、熱心に味付けとか研究しながら食べてます」

出産して4日目という2人のお母さんたちは、生まれたてホヤホヤの可愛らしい赤ちゃんの傍でそう語ってくれました。生まれて一番最初に味わうお母さんのオッパイが、ティアの愛情あふれる料理から育まれたとは、実に幸せな赤ちゃんたち。やわらかいピンクのホッペも、健やかな大地の光に照り映えているかのようです。「いのちの原点をみる思いがしますよね…」と、元岡さんも満面の笑みをたたえています。

「お母さんたちにいくら食事の重要性や食育について指導したところで、なかなか身につかない人が多いんですよ。それなら実際に食べて体感してもらおうと、ティアさんの食事を取り入れたわけです」
入院受け入れ再開前からティアの食事を出すことは悲願だった、という末永さんは、自ら元岡社長に会って直談判し、その願いを聞き入れてもらったそうです。しかし、末永さんの要望には通常店で出す料理以外の妊産婦用特別メニューもいくつかあり、元岡さんはスタッフの負担を考えて逡巡したそうですが、最終的には「末永さんの熱意と気迫にほだされて(笑)」(元岡さん)、給食が始まりました。今では1日2回、末永産婦人科の車がティアに食事を取りにやって来ます。

「ティア風の食事を医院でつくろうとは思わなかったんですか?」と末永さんに訊ねてみると、「だって、ティアさんのようにこだわりの素材を使って、あそこまでおいしくつくることは、私たちでは絶対にできないから、わざわざここでつくる必要はありませんよ(笑)」と、きっぱりした答えが返ってきました。「でも、食事って本当にスゴイと思います。食べ物1つでこんなにも違うんだって、今でも毎日鳥肌が立つ思いをさせられるんですよ」
いのちの最前線を見守る末永さんにとって、ティアは重要な使命を担った、いのちを育む供給基地です。[2007/4/20]

(平野陽子)

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