どこかで子どもがコップの飲み物を床にこぼすと、スタッフは慌てず騒がす、サッと近づいてサッと汚れを拭いて去って行きます。待ち時間が少し長くなったお客さんには、夏には冷たい、冬には温かい健康茶を運びながら、「申し訳ありません。もうすぐご用意いたしますからね」とやさしい声をかけてくれます。そのすべての所作、立ち居振る舞いがさりげなく、違和感なく、心地よい風が流れるように行われます。「マニュアルとは違った心がありますよね」とあるお客さんは語っていましたが、それもティアの「やすらぎの風」なのでしょう。
細部に至るまで、ティアにはおもてなしの心が宿っています。たとえば、お客さんが感想や要望を書く「ティアへのたより」。それを書くための鉛筆はスタッフが心を込めて1本1本ナイフで研ぎます。入口には専用の可愛いポストもあり、お客さんから寄せられた要望は直ちに店に反映されます。店内の各所に陳列してある無添加の調味料、健康茶、豆や海苔などの乾物類はその場で買えますし、トイレには乾燥器でも完全に乾ききれない水滴を拭うため、「ちょっと拭き用」の小さなタオルまで用意してあります。トイレットペーパーはリサイクルの再生紙。無農薬や有機の食材にそれほど感心はなくとも、一度ティアを訪れたら大ファンになってしまうお客さんが多いのもうなずけます。
ご主人と4人のお子さん、いとこたちと、賑やかな8人グループで来店していたお母さんはこう語っていました。他にも「外食するならここ」と決めている健康管理に熱心なシルバーご夫妻や、「普段はムチャクチャな食生活しているけど、たまに無性に野菜が食べたくなって、そんな時にここに来ると落ち着くんだよね。カラダがホッとするって感じ」という若いカップルなど、人々の暮らしの中にティアはすっかり定着しているようです。
ティアから車で5分ほどのところにある末永産婦人科医院では、去年7月のリニューアルオープン時から、妊産婦にティアの食事を提供しています。「オッパイがもう、ぜんぜん違うんですよね。食事って本当にスゴイ! ティアさんのご飯を食べると、オッパイがサラサラで、色も澄んだ乳白色で、赤ちゃんがコクンコクンと喜んで飲むおいしそうなオッパイなんです!」
副院長の奥さんであり助産師でもある末永明子さんは、一緒に訪れた元岡社長に握手をしながら、感極まる様子で話してくれました。ティアの食事を食べたお母さんの乳汁(オッパイ)は明らかに乳質が良好で、手触りはサラサラ、遠心分離器にかけても脂肪層が少なく、色や臭いも最高だということです。と同時にお母さんのオッパイの出もよくなり、偏った食事から起こりがちな乳腺炎などの辛い症状も減ったと言います。
食事は玄米、豆類、野菜など、主に植物性の素材を中心として、バランスよく品数多く取り揃えられます。朝・昼・夕の食事の他、授乳でお腹が空くお母さんたちのためにオヤツや夜食も提供されます。入院中、食事が何よりの楽しみであるお母さんたちにとっては、実に嬉しい心遣いです。
出産して4日目という2人のお母さんたちは、生まれたてホヤホヤの可愛らしい赤ちゃんの傍でそう語ってくれました。生まれて一番最初に味わうお母さんのオッパイが、ティアの愛情あふれる料理から育まれたとは、実に幸せな赤ちゃんたち。やわらかいピンクのホッペも、健やかな大地の光に照り映えているかのようです。「いのちの原点をみる思いがしますよね…」と、元岡さんも満面の笑みをたたえています。
「お母さんたちにいくら食事の重要性や食育について指導したところで、なかなか身につかない人が多いんですよ。それなら実際に食べて体感してもらおうと、ティアさんの食事を取り入れたわけです」入院受け入れ再開前からティアの食事を出すことは悲願だった、という末永さんは、自ら元岡社長に会って直談判し、その願いを聞き入れてもらったそうです。しかし、末永さんの要望には通常店で出す料理以外の妊産婦用特別メニューもいくつかあり、元岡さんはスタッフの負担を考えて逡巡したそうですが、最終的には「末永さんの熱意と気迫にほだされて(笑)」(元岡さん)、給食が始まりました。今では1日2回、末永産婦人科の車がティアに食事を取りにやって来ます。
「ティア風の食事を医院でつくろうとは思わなかったんですか?」と末永さんに訊ねてみると、「だって、ティアさんのようにこだわりの素材を使って、あそこまでおいしくつくることは、私たちでは絶対にできないから、わざわざここでつくる必要はありませんよ(笑)」と、きっぱりした答えが返ってきました。「でも、食事って本当にスゴイと思います。食べ物1つでこんなにも違うんだって、今でも毎日鳥肌が立つ思いをさせられるんですよ」 いのちの最前線を見守る末永さんにとって、ティアは重要な使命を担った、いのちを育む供給基地です。[2007/4/20]