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吉田俊道 NPO法人大地といのちの会理事長

見事な発酵臭にびっくり!



ニオイをかいで点検する吉田さん
コンポストセンターでのアドバイスの後は、ムアラテバスという村に行って講演と実演です。村民約40名が集まっていました。市のプロジェクトに協力して生ごみリサイクルの実践を始めた村です。佐世保まで研修に来た市の職員が、事前に密閉処理容器への生ごみの貯め方を村民に説明していて、すでに生ごみでいっぱいになった密閉容器を持参して集まっていました。

その容器の中をのぞいてびっくり!どれもとてもいい発酵臭がしていたのです!容器の底から出る液肥も黄色い透明色で乳酸菌の匂いがしっかり出ていて、理想的な状態でした。

この暑い地域でこれだけうまく作るなんて!指導する職員の力と、EMボカシの力、そして村人の真剣さがないととてもこうはなりません。あまりにうれしかったので、私はその生ごみ浸出液をキャップにとって飲みました。すると村人が一斉に「ギャー」と大騒ぎでした。

「その液は飲んだら体に良いのですか?」と真剣に聞かれたので、私は「いいえ普通は飲んではいけません。私はニオイで善し悪しが判断できるから飲みましたが、もし腐敗菌がいたらすぐにゲリピーです」と答えました。



黒い密閉バケツと液肥が勢ぞろい
とにかく大変なのは通訳。私の日本語を英語に訳し、それを現地のマレーシア語に訳し、それを聞いてまたマレーシア語で質問があり、それを英語に訳し日本語に訳して私が答えてそれを英語にして・・・の繰り返しです。でもゲリピーのところは、私がお尻から手を広げてジェスチャーをしたら、みんな大笑い。通訳なしにすぐ理解できたようです。幸い下痢はしませんでしたが、生ごみ浸出液を飲んでからは、村人たちは親近感を感じたのか、「この人は真剣だ」と感じ入ったのか、一層真剣に私の話を聞いてくれました。



元気野菜を育てるぞ〜
次に密閉容器で一次発酵した生ごみを畑に入れる作業のポイントを説明しながら畑で実演です。それが、事前にお願いしていた準備物が全く準備できておらず、固い土を耕すことから初めました。最初の混ぜ方が、腐敗と発酵の分かれ道。土と生ごみを渾然一体に混ぜ合わせること。雨季の大雨対策に、しっかり盛り上げること。その山に枯れ草を載せて、かなり広めにシートで覆うことを説明し、また作物を植えるときは、雨水がたまらないよう、流れ出る道を作ることなどを、実演しながら説明しました。「お店に売っていないような大変元気な栄養価の高い野菜を作るぞ!」と最後にみんなで一緒に手を高く上げて気合を入れました。

市場の貧弱な野菜

食べ物の市場に行ってみました。第一印象は野菜が貧弱。この暑い国でブロッコリーやカリフラワー、小松菜類など、本来は冬に元気な野菜がたくさん並んでいたのです。まだ小さいうちから花芽分化してトウが立とうとしていて、暑い中を無理やり生きている姿でした。本来夏に元気な野菜としては、空芯菜の仲間だけ並んでいました。ツルムラサキもモロヘイヤも、水前寺菜もなかったのが残念でした。

これでは野菜からはあまり抗酸化力をもらえないような状況でしたが、果物の種類が大変豊富。しかも種まで食べられるもの、薄皮まで食べられて、それがやや渋みがあってポリフェノール抜群であることが想像できるものもありました。

さらに食事に出るスープはいろんなスパイスたっぷりで、スパイスは様々な草木の種から作られますからミネラルが濃縮していると考えられます。さすが各地域の風土に根差した先人の食の知恵というものは、理にかなっているなあと感心しました。それにこちらのご飯はパサパサした細長いお米ですが、食べたら味があるのです。

夜の食事会に連れて行かれた店はマレー系の店で、酒類は一切なし、ジュースも一種類でしたが、ライブ演奏もあり、たくさんの人でにぎわっていました。ほとんど日本以外に出たことのない私にとって、こんな違った世界で酒も飲まずつつましく暮らす人々に触れて、また豊かに暮らす人々の横で、狭い場所に少し野菜を並べて1日店番をする子供や、川の両岸を手漕ぎの小さい船で瀬渡しする高齢のおじいちゃんを見ながら、世界の広さを実感した旅になりました。

掲載日:2012年3月16日



よしだ・としみち
NPO法人大地といのちの会理事長。1959年、長崎市生まれ。九州大学農学部大学院修士課程修了後、長崎県の農業改良普及員に。96年、県庁を辞め、有機農家として新規参入。99年、佐世保市を拠点に「大地といのちの会」を結成し、九州を拠点に生ごみリサイクル元気野菜作りと元気人間作りの旋風を巻き起こしている。2007年、同会が総務大臣表彰(地域振興部門)を受賞。2009年、食育推進ボランティア表彰(内閣府特命担当大臣表彰)。長崎県環境アドバイザー。主な著書は「いのち輝く元気野菜のひみつ」「生ごみ先生のおいしい食育」「まるごといただきます」など。


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